大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・通学道中膝栗毛・52『東京湾大海戦!』

2018-05-07 14:28:08 | 小説3

通学道中膝栗毛・52

『東京湾大海戦!

 

 

 東京湾というのは渋谷の交差点に似ている。

 

 駅から出る人向かう人、はたまた横切ったり斜めに行ったりして通勤通学ショッピングする人や、仕事やバイトに向かう人。

 そんな雑多な人たちが、ほとんど事故もトラブルも起こさずに行き交う日本を代表する交差点。

 

 東京湾は、交差点が海になって、行き交う人々が船に置き換わったそれだ。

 船は漁船のような小さなものから都庁ビルとか東京駅を横倒しにしたくらいのビッグな船までまでが、ほとんどぶつかることも行き交う姿が圧巻だ。

 もちろん海だから潮の香りや潮風で十分海を満喫できるんだけど、わたしがぶったまげたのは、東京湾がビッグ過ぎる交差点みたいだと言うことだ。

 十万トンを超えるであろうタンカーとかコンテナ船が対向でやってくるとスゴイ圧。

 ノタクラ走っているようでもニ十キロほどは出ているらしい。こちらも同じくらいのスピードだから、すれ違う時は四十キロほどになる。四十キロで横倒しの都庁がすれ違ったらすごいよ!

 日ごろ、大きな乗り物ってバスとかダンプくらいしか見たことが無いわたしには、もう動物的って言っていい感動なのよ。

 

 あっち見て!

 

 モナミが指差した方角を見ると、都庁の横倒しが煙をモクモク吐いている。煙突なんかからじゃなくてドテッパラから!

 煙だけかと思ったら、チロチロと赤い炎まで立ち上り始める。

「こ、これって……事故!?」

「うん、第十雄洋丸ってタンカー。さっき衝突したとこ、アケミさん、もうちょっと寄せて」

「これ以上は危険です」

 感じ的には百メートルほどの近さなんだけど、実際は一キロ以上離れているらしい。陸上で一キロ先の事故なんてよそ事に見えるんだけど、船の事故は凄い!

「もう消防艇なんかじゃ消せないから海上自衛隊がやってくる」

「え、自衛隊が消防をやるの?」

「ううん、消すのは不可能って判断されて、これから撃沈されるの」

 

 撃沈……

 

 撃沈なんて『艦これ』とか『ハイフリ』でしか見たことが無い。

 やがて右っかわに四隻の護衛艦が現れて、しきりに大砲を撃つ……撃つんだけども、笑っちゃうくらいにショボイ。

 ぜんぜん効き目はないんだけど、それでも正確な射撃をする四隻が、ひどく健気に見えてくる。

「あそこ見て!」

 モナミが指差した上空には双発の飛行機が現れた。胴体には日の丸と海上自衛隊のロゴ。

 それがゆっくり接近してきたかと思うとロケット弾をぶっ放し爆弾を投下した!

「わ、わ、わ…………外すうううう?」

 半分ちょっとは命中したが、かなりの爆弾がむなしく水柱を上げた。

「あちらに潜水艦が」

「え、どこに?」

 アケミさんが指差した方角には何も見えない。

「潜望鏡が……いま、潜航しました。たぶん、魚雷攻撃をやるはずです」

 数十秒後、第十雄洋丸のドテッパラに水柱が二本上がった。

「四本発射されたはずなんですが……」

「あんな大きな目標を外す~~~~~?」

 それでも二本は命中したというのに、沈むどころか傾きもしない。

 自衛隊って、こんなにショボイの~~~~?

 

 それでも反転してきた護衛艦隊が懸命に射撃を再開し始めた。

 

 わたしは巨人阪神戦を見た時のように手に汗を握るのであった。

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高校ライトノベル・ライトノベルベスト[お姉ちゃんは未来人・4]

2018-05-07 06:41:09 | ライトノベルベスト

ライトノベルベスト
[お姉ちゃんは未来人・4]



 列の数人前のところで悲鳴があがった!

 悲鳴の原因は直ぐに分かった。若い男がナイフを取り出し暴れまわっているのだ。
 以前他のアイドルグループで、握手の直前にナイフを出してアイドルを含めて怪我人が出たので、握手直前のセキュリティーはかなり厳しくなったが、ただ並んでいる段階でのチェックは甘かった。列は蜘蛛の子を散らすようにバラバラになり、切られた数人の子が傷を庇いながら、彼方の方に避難した。

 あたしは、一瞬男と目があってしまった。

――次の目標はおまえだ!――

 あたしは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。悲鳴さえ上げられない。男は手にしたナイフを腰だめにして、あたしに突進してきた――やられる!――そう思った次の瞬間、体全体に鈍い衝撃を感じた。

 ……お姉ちゃん?

 スローモーションを見ているようだった。ナイフが刺さったままお姉ちゃんは仰向けに倒れ、ナイフを失った犯人は、あっさりとガードマンの人たちに取り押さえられた。

「お姉ちゃん!」

――あたしの言うことを落ち着いて聞いて――

 お姉ちゃんの言葉は、直接心に聞こえてきた。
――あたしは未来からやってきたの。竹子を守るために――
「あたしを……」
――竹子の玄孫が、アンドロイド愛護法を作るの。それまで、ただの道具でしかなかったアンドロイドに、人間に準ずる人権を認める法律よ。22世紀の『奴隷解放令』と言われるものよ。ところが、それを阻止しようという組織があって、それぞれの時代に刺客を放った――
「それが、今の男?」
――刺客と言っても、ランダムに未来から想念が送られてコントロールされているだけ。未来からやってきた者なら、あたしには分かる。想念だけだから、あいつがナイフを出すまで分からなかった……他の時代でも犯人は捕まったみたい――
「他の時代も……?」
――アンドロイド愛護法を作る人物は、四代前までのDNAで決定される。遡ると42人になるわ。でも、その人物の性格を決定的に影響を与えるDNAを持っているのは5人だけ。その5人に、あたしのようなセキュリティーが付いているの――
「お姉ちゃん、死んじゃやだ!」
――アンドロイドは、死なないわ。でも……役割を終えたから、ここで消える。病院で検査されたら人間じゃない……ことがバレてしまうからね……――
 
 お姉ちゃんの反応が無くなってきた。

「お姉ちゃん!」

――いま、あたしに関する情報を消しまくってるの……ここにいる全員分も……消さなくっちゃね――

 握ったお姉ちゃんの手が、急にはかなくなって……そして、消えてしまった。

「君も、どこか怪我したのかい?」
 ガードマンのオニイサンが声を掛けてくれた。
「あ……怖くって、動けないだけです」
「そう。でも気持ち悪くなったら声かけてね。救急車もすぐに来るから」
「はい、ありがとう……」

 けっきょく、あたしはショック状態ということで病院に運ばれた。

 ショックの原因は事件じゃない。みんなの記憶からお姉ちゃんは消えてしまったけど、あたしはインストールもできないかわりに、記憶も消えない。半年間だったけど、アンドロイドだったけど、松子お姉ちゃんは、しっかり、あたしの中でお姉ちゃんになっていた。

 このお姉ちゃんへの思いが、玄孫のDNAに影響を与えたのかもしれない。

 あたしは、この寂しさと秘密を一生抱いて生きていくんだ……お姉ちゃん。あたしだけは忘れないからね……。

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