大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・希望ヶ丘青春高校有頂天演劇部の鉄火場①とにかく始めてみたぜ!

2018-05-31 06:48:03 | 青春高校

希望ヶ丘青春高校有頂天演劇部の鉄火場

①とにかく始めてみたぜ! 

 
※ 創刊のご挨拶

 なんだか演劇部のブログが流行ってる。たいてい毒にも薬にもならないものばかりだけど、見てる奴が多いんで、我が有頂天演劇部もおっぱじめることになった。絶滅寸前の高校演劇の中で余裕こいてブログやろうっていうんだから、ラストネームは鉄火場だ!

 予定、見通しまるで無し。その日その時、気息奄々の演劇部のことを書き散らすだけ。
 面白いと思ったら読んでくれ。つまんなくてアクセス減ったら、即廃刊。
 え、言葉遣いが悪い!?
 生まれて持った気性だから仕方がねえ、辛抱しろい。
 なんだ、その割にはタイトルの謙譲語が、間違ってる? ご挨拶じゃなくて、挨拶? ゴチャゴチャ言うんじゃねえ!
 要は、心だ心意気だぜ。

 と、このくらい書いときゃいいだろ。あとは適当にやってくんねえ。  

 部長 三好清海(みよし はるみ)


※役者組
 
 お芝居は 下手こそよけれ 心臓の 動き出しては たまるものかは  

 心臓外科医の弁。心臓が体の中を動きだしたら外科手術など出来たものじゃない。という医者の誤解。
「人の心を動かすこと」をみなさんモットーになさっているようですが、ナマッチョロイ高校演劇を観にこようなどというのは、半分感動してる自分に自己陶酔、あるいは集団陶酔したい人ばかりなので、高校演劇の県大会以上では、もう涙と笑いの感動の渦。

 舞台の役者もほとんど自己陶酔。こんな中に並の神経した人間が混じったら気持ち悪いだけ。遅かれ早かれ衰退していく運命の高校演劇だけど、たった一度でいい。超新星のように、宇宙の原初のようなビッグバンになれたらいい。

                                役者組組長  猿飛佐子(さるとび さこ)


※道具その他組

 うちの演劇部は兼業部員を入れて十人。演劇部としては平均以上だけど、とても役者と、それ以外の専門に分ける余裕なんかないし、そうすべきとも思わない。でも分けて書いた方がかっこいいので、そうしてます。
 基本は役者の二軍です。出番の少ない役をやりながら、スタッフの仕事をこなしています。
 将来、芝居で食べていこうなんてバカなことは考えてません。地場産業の零細企業に就職したらなんでもこなさなければなりません。
 でも誤解しないでくださいね、将来を悲観してるわけじゃないんです。それどころか夢と誇りを持ってます。町工場でも、人工衛星を作った実績があります。そういう地域ってか、地元に誇りを持ってるんです。
 まあ、人生勉強が演劇部だと思います。
 でも、本音は、いっぺんテッペンをとることです!

                            道具その他組組長 霧陰才子(きりがくれ さえこ)

※顧問より

 生徒が、なにやら始めました。安月給の教師としては、顧問をしているだけでアゴが出そうなのに……止めろと言ってもやる奴らばかりなので勝手にやらせてます。不穏当なことを書くかもしれませんが、けして教育委員会などに通報なさいませんよう。笑い飛ばして、読み飛ばして、シャレだと思って読んでください。本校をご存じない方は、けして検索などなさいませんように。

                               有頂天演劇部顧問 真田幸雄(さなだゆきお)

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高校ライトノベル・『メタモルフォーゼ・18』

2018-05-31 06:40:29 | 小説3

高校ライトノベル
『メタモルフォーゼ・18』
        


 カオルさんのお葬式の帰り、思い出してしまった!

 年末には、お父さんと、お兄ちゃんが帰ってくる。あたしが女子になったこと、まだ知らない。
 あたしは、もう99%美優になってしまっていて、バカみたいだけどメタモルフォーゼしてから、ちっとも思い至らなかった。

「どうしよう、お母さん。年末には、お父さんも、お兄ちゃんも帰ってくるよ」
「そうよ、近頃は盆と正月だけになっちゃったもんね、楽しみね。でも男なんか三日でヤになっちゃうだろうな」
「いや、だから……」
「いまや、美優もKGR46のメンバーなんだからさ。胸張ってりゃいいのよ」
「だって、お母さん……進二は?」
「進二……だれ、それ?」
「あ、あの……」
 あたしは一人称として「ぼく」とは言えなくなってしまっていたので、自分の顔を指した。
「美優……知ってたの。あなたが男の子だったら、その名前になってたこと。うちは女が三人続いたから、最後は男で締めくくろうって思ってたんだけどね。麗美は小さくて分かってなかったけど、留美と美麗は『おちんちんが無いよ!』ってむくれてたわよ」
「あたし、最初っから美優……」
「そうよ、それよりゴマメ炒るの手伝って。お母さんお煮染めしなきゃなんないから」
「ダメよ、紅白の練習とかあるし」
「え、美優、紅白出るの!?」
 仕事納めから帰ってきた留美ネエが、耳ざとく玄関で叫んだ。
「うん、三列目だけど……あ、もう行かなくっちゃ!」

 深夜にレッスンから帰ってきて、自分の持ち物を探してみた。

 そこには進二であったころの痕跡は一つも無かった。CDに収まっているはずの進二時代の写真も無かった。
「どういうこと、これ……」
「そういうこと……」
 レミネエが寝言とオナラを同時にカマした。

 二十九日からは、それどころじゃ無くなってきた。

 レコ大(レコード大賞)と紅白への追い込みが激烈になってきた。
 レコ大は大賞こそAKBに持って行かれたけど、KGRも「最優秀歌唱賞」を獲得。その晩タクシーで家に帰ると……。
「美優、おめでとう! しばらく見ないうちに、ほんとにアイドルらしくなったなあ!」
 お父さんが、赤い顔でハグしてきた。お酒臭さがたまんなかったけど……。
「ごめん、あした紅白。ちょっと寝かせて……」
「おお、そーしろそーしろ」
 進一兄ちゃんが、これまた酒臭い顔で寄ってくる。
「悪いけど、お風呂まで付いてこないでくれる!」
「明日起きたら、サインとかしてくれる?」
 あたしは無言でお風呂に入り、鼻の下までお湯に漬かって考えた。

 いや、考えるのを止めた。

 どうやら、あたしを取り巻く環境ごとメタモルフォーゼしてしまったようだ……。

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