小説学校時代 11
昔のゴミ捨てはゴミ箱ごと集積場に持って行きました。
取っ手が付いていたように思うのですが、プラスチック製だったか金属製だったか、記憶はあいまいです。
とにかく、ゴミ箱を集積場まで持っていき、ゴミを捨てた後、ゴミ箱は教室に持って帰ります。
労力という点では、その後のゴミ袋時代の倍はかかります。
このゴミ捨てを嫌がる者はいましたが、無精をかましてゴミ箱を放置してくる者は居ませんでした。
教師になった昭和の50年代、ゴミ捨ては黒いビニール袋になっていました。
ゴミ箱を教室に持って帰る手間がいらず、労力としては半分になりました。
またビニール袋なので、ゴミ箱そのものに触ることが無いので、かなり清潔でもあります。
「必ず、ゴミ捨て場(集積場)まで持って行けよ」
学年はじめのゴミ捨てには、この注意をします。
気を抜くと、すぐに不法投棄をされます。
空き教室や、階段のゴミ箱、植え込みなどが不法投棄の現場です。
不法投棄を見つけた場合。
事を荒立てずに、自分で捨てに行く先生と、不法投棄したクラスを突き止め、そのクラスの担任に返す先生とが居ました。
クラスを突き止めるには、ゴミ袋の中身を調べます。
ゴミの中には、小テストや返却プリントが入っていることが多く、それが無い場合でもクラスを特定できるものは大抵入っていて、その証拠を二つ以上見つけてゴミ袋に貼りつけておきます。
で、たいていの担任は、あくる日に不法投棄した生徒に捨て直させます。
正直手間ではありますが、こういうことをやっておくことが学校の秩序維持に繋がってきます。
「やー、やっぱりセンセのクラスきれいなあ」
去年担任していたヤンチャクレが、教室を覗き込んで呟きました。
ガサツでアナーキーな学校でしたが、たいていの生徒は秩序と平和を望んでいます。きちんと指導すれば八割がたは指導に乗ってきます。
迫り方はいろいろだし、迫るレベルもまちまちですが、担任が自分の力量いっぱいにやっていれば、いつの間にか納得しています。
「こら、また不法投棄したやろ!」とゴミ袋を突き付ける。
「俺とちゃうわ!」
開き直られるのは、気分で怒ったり、それまでの指導にムラがあったりした場合です。
「あ、バレてしもた?」
「バレバレじゃ!」
「しゃーないなあ((n*´ω`*n)」
こういう風にいけば、入院しない程度のストレスで一年が過ごせました……。
ちなみに、教師一年目は三月目で入院してしまい夏休みいっぱいベッドの上で過ごすハメにはなりました。