大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・154『ギョウザパーティー・1』

2020-06-24 15:32:46 | ノベル

せやさかい・154

『ギョウザパーティー・1』頼子        

 

 

 

  新入部員が入るまでという約束にした。

 

 だって、もう高校生なんだから、いつまでも中学の文芸部に通うわけにはいかないでしょ。

 ソフィアは放課後は領事館で過ごしている。

 彼女の仕事は、学校に居る間は警護を兼ねた留学生としての勉強。放課後は領事館で諜報員としての訓練を受けている……らしい。

 らしいというのは、王女であるわたしが知ってはいけないことであるかららしい。

 知っていれば、いざという時に場合によっては、わたしも責任をとらなければならないことになるからという説明。

 

「どんな子が入って来るかなあ」

 

 ボールの中身をかき混ぜながら留美ちゃんに振る。

「さあ……」

「男の子だといいわね」

「はい!」 

 さくらは元気に返事してくれるけど、留美ちゃんは頬を染めて俯きながらボールをかき混ぜている。

 留美ちゃんは今のままがいいんだ。放課後お寺の部室に集まって好きな本を読んだり、三人でウダウダお喋りしたり、時には檀家のお婆ちゃんたちと昔話したりマッサージしてあげたり。そういう、しみじみとかホノボノした部活がいいんだ。

 でも、籠り気味の部活と言うのは感心しない。感心しないなんてはっきり言ったら、きっと留美ちゃんは傷つく。だからね、そっと間接的にね、時々言ってやる。

 

 今日はね、さくらの『葷酒山門に入るを許さず』のスカタンから出た瓢箪から駒で、お婆ちゃんたちとギョウザを作っている。

『葷酒山門に入るを許さず』のお寺でギョウザを作るのは罰当たりなことだと思うんだけど、浄土真宗と言うのは寛容な仏教で、「あ、檀家のお婆ちゃんらも好きやで!」とテイ兄ちゃんも賛成して、本堂の外陣でギョウザの具をかき混ぜている。

「葷酒山門にどーたら言うのんは、禅宗とかの古い仏教やねえ。檀家と坊主が楽しくやってたら、阿弥陀さんも喜んでくれはる」

「終戦後闇市でギョウザ屋やったら、よう売れてねえ(^^♪」

 手際よくギョウザの皮を包んでいくのは、今年95歳になる勲子(いさこ)おばあちゃん。

 フルネームは浜田勲子さんと言うんだけど、檀家の皆さんからは『イサネエ』とか『イサちゃん』と呼ばれている。「あんたらも『イサちゃん』でええよ(^▽^)/」って言うけど、田中さんのお婆ちゃんでさえ『イサネエ』なんだから、そう着やすくは呼べない。だから『勲子さん』。

「なんや、皇族のお嬢様みたいやなあ」

 と、照れているけどまんざらでもないようなので、これで通してます。

「イサネエの餃子は奉天仕込みやさかいなあ」

 檀家の婦人部ではボス格の田中さんが少し甘えるように勲子さんに接しているのも麗しい。

「奉天て、今の瀋陽のですか?」

 留美ちゃんも顔を上げる。

「信用はあったよ、奉天言うたら満州の都やったさかいねえ」

「え?」

 トンチンカンだけど、話は進む。

「ほんまの餃子は水餃子やねんよ、売れ残りの水餃子は硬なるから、二級品として蒸し焼きにして売ってたんよ。だれが発明したんか、十四師団の兵隊さんは『固くなったフランスパンをラスクにして売るようなもんだ』言うてはったけど、フランスパンなんちゃらハイカラなパンは食べたことないよって『きっと、そうですねえ!』なんてよそ行きの言葉で答えたりしてねえ」

「十四師団の兵隊さんて?」

「そら、猪口兵長に決まってるやんか! シューっとしてはって、そら男前のにいさん。『勲子ちゃんのキビキビしたところは江戸っ子みたいだねえ』言うてくれはってえ」

「ええ、ほんでイサネエは、どない答えましたんや?」

「うちは大阪生まれですけど、親は関東大震災でこっちに越してきたんです。だから、血統的には江戸っ子かもしれません」

「その話、初めて聞くわあ!」

 鈴木さんのお婆ちゃんも身を乗り出してきた。

「ほんの昨日までは、半ボケで寝てはったんやけどねえ、餃子で思い出さはったんやねえ……なんや、昔のイサネエに戻らはったみたい」

 田中さんのお婆ちゃんがかっぽう着の袖で涙を拭う。

「ほんまに、文芸部のみんなには感謝やねえ、こんな年寄りの相手してもろて、イサネエも元気になって」

「いや、あたしらがしたいことに、お婆ちゃんら巻き込んでるだけやしい(n*´ω`*n)」

 さくらが照れる。さくらも一年前に比べると柔らかい笑顔をするようになった。

 ピンポーン……

 ドアホンが鳴って、テイ兄ちゃんがお手拭きで手を拭いながら玄関へ。

「頼子さーん、ご学友が来てくれ張ったよー」

 たぶんソフィアだ、餃子焼くから、領事館に断ってからおいでよと言ってある。

 

 そのソフィアが真理愛の制服で入ってきた時に、ちょっと驚くことが起こった。

 

「いやあ、ソフィアやないのおおおおおおお!」

 

 なんと勲子さんが一大感激を発してしまった!

 え? なぜ? なんで?

 

 

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ライトノベルベスト[お姉ちゃんは未来人・2]

2020-06-24 06:36:05 | ボクの妹

ライトノベルベスト
[おちゃんは来人・2]    



 

 お姉ちゃんがうちにやってきたのは半年前の始業式。

 一学期最初の日で、たまたま持ち上がりでクラスが一緒になったヨッコと「前のクラスで一緒なの、あんただけね!」と互いに喜んだのは束の間。
 始業式で、演劇部の顧問の吉田先生が転勤になったことを知ると、同じ演劇部のマコと泣きの涙。二人はクラブでは仲が良くなかったけど、演劇部は吉田先生でもっていた。おまけに新三年生の部員はゼロ。演劇部は二人の双肩にかかってきたので、その心細さは良く分かる。で、以前のいきさつかなぐり捨てて互いにクラス一番の友だちになった。

 で、ホームルーム終わると、することも無いので、さっさと帰ってきた。

「I,m home!」

 元気良さげには玄関を開けた。新学年の学校は、あまり面白くなさそうだったけど、顔に出して文句言うほど浅はかでもない。たった半日の印象だし、学校は学校、家は家。あたし、そういう空気は切り替える方。
「ああ、腹減った!」
 と、パンのバスケットを物色。
「お姉ちゃん帰ってきたら、お昼にしてあげるから下卑たこと言わないの」
 お母さんの言葉に「あれ?」っと思った。

 あたしは一人っ子で、姉妹なんかいない……親類のイトコの顔を思い浮かべる。でもイトコの中で女の子はあたしが一番の年長だ。お姉ちゃんと呼ぶような存在はいない。近所にも気安く昼ご飯を食べにくるようなオネエチャンもいない。すると……。

「ただいま!」

 元気でしっかりした声が聞こえた。親しみの有りすぎる声だ。
「お帰り、ちょうどいいタイミングね、三人でお昼にしよう。松子、着替えたらパスタ作んの手伝って。さ、竹子も着替えといで」
「う、うん……」
 そう言って二階に上がって、びっくりした。部屋のドアを開けると6畳の部屋が12畳ほどに広くなり、あたしが全然知らない「お姉ちゃん」が着替え終わって下に降りるところだった。
「竹子、早くしな。パスタはスピードが命なんだから」
「う、うん……」
 有無を言わせぬ上から松子。ごく自然な姉としての親しみとしっかり者のお姉ちゃんの威厳があった。

「いったい、どーなってんの?」

 不思議に思ったけど、階下の明るく自然な母子の会話に流されて、あたしは「妹」を演じていた。これはテレビのドッキリかなんかで、みんなで、よってたかって、あたしのことを担いでいるんだろう……最初はそう確信した。
 夕方になってお父さんが帰ってきて、ふつ-に松子を娘として相手をしているのを見て、あたしの確信は揺らいできた。
 お父さんは、お芝居なんかできない。良くも悪くも嘘の言えないオッサンだ。それが、自然に学校の話とか、昔ばなしなんかして盛り上がってる。

 これは悪夢だ。なんかの間違いだ!

 破綻は日付が変わるころになってやってきた。

 いつもだったら、新学年の始業式の夜なんて、宿題も何にもないから、テレビ観たり、コミック読んだり、チャットをしたり。でも、この長いドッキリに、あたしはくたびれて、お風呂入るとさっさとベッドに潜った。
「そうだ!」
 あたしは、思いついてヨッコにメールを打った。
――遅くにごめん。変なこと聞くけど、あたしって一人っ子だったよね?――
――なに言ってんの、松子姉さんいるじゃんか。それよりクラブがさ――
――ごめん、それ明日聞くね――
 他にも五人の友達とイトコにメールを打った。みんな松子のことを知っている。おかしいのは、あたしだけだ……。

 もう頭がスクランブルエッグ! こういうときは直接当たるに限る。

 鼻歌まじりに風呂からあがってきた「お姉ちゃん」に聞いてみた。
「ねえ、あなた誰なのよ……!?」

 鼻歌が止まり、松子姉は、無機質な顔で振り返った。

「インストールエラー……かな」

 松子が、あたしの上に覆いかぶさってきた……!

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あたしのあした・32『セクハラになってしまった』

2020-06-24 06:27:55 | ノベル2

・32
『セクハラになってしまった』
      

 

 困ったことになった。

 早乙女女学院がプールの使用を断ってきたのだ。
 表の理由は「本校のクラブの使用と重なり、ご使用いただけなくなった」ということで、一応はお詫びの形をしている。
 だけど実際は違う。

 昨日のプール補講は熱が入っていて、水野先生が手取り足取り教えてくれて、プールの真ん中で挫折していたベッキーたちも二十五メートル泳げるようになった。
 あたしたちはプータレてはいたけど、うちの学校らしい和気あいあいの雰囲気の中で行われた。
 その雰囲気がとってもいいので、早乙女の水泳部の子たちは動画に撮ってネットで流した。
 むろん、事前に水野先生に学校を通して了解も得ている。

 でも、これが裏目に出た。

 撮った方も撮られたほうも和気あいあいなんだけど、観た方はそうは取らなかった。

 水泳指導に名を借りたセクハラ! になってしまった。

 スク水の女子を腹這いにさせ、その足を掴んでキックのフォームを教えているのは、そういう目で見ればセクハラに見えるのかもしれない。失敗すると太ももやらお尻をペシペシと叩かれもした。
 でも、うちはそういう学校ってか、落ちこぼれ十三人の補講女子と水野先生ってのは、それで普通なんだ。
 プールの更衣室に覗きやら下着泥棒が入った時、先生はしっかり対応してくれて、師弟で協力して犯人を捕まえたりした。
 プールのポンプが故障して「任せとけ!」と胸を叩いて借りたプールが男子校だったのには「ちょっと先生!」で、なんとかしてよ、このオッサン! ということもあったけど、先生のことを憎んだりセクハラオヤジとは思っていなかった。

「ねえ、水野先生しばらく休みだって」

 遅れて食堂にやってきたノエチンがマサミのフライドポテトを掠めながら報告する。
「学校の予防線だな……」
 あたしは爪を噛んだ。
「あたしのフライドポテト食べてもいいよ」
 勘違いしたマサミがフライドポテトの袋を差し出す。
「あ、ありがと」
 メンバーに芽生えた友情の芽を大事にしたいので一つまみ口に頬張る。
「このまま沈静化しなかったら、休職とかにして年度末には転勤とかで幕を引く気でしょうね。学校は関係なしってスタンスだ」
 智満子が冷静な声で呟く。さすがは横田不動産社長の娘、分析が鋭い。
「先生とばされんの?」
「こないだお母さんが亡くなったとこじゃん、身軽になった分、容赦ないだろうね」
「先生かわいそうだ……」
 ベッキーが目を潤ませる。
「ベッキーって、水野先生嫌ってなかったっけ?」
「う、うん。でもさ、プールでお尻叩かれてもセクハラとかは感じなかったもん」
「あたしも、鈍感でうるさいオヤジだとは思ってたけど、ハリはあったよね」
 ネッチが呟く。
「あのさ、ひょっとしたらマスコミとか来るかもしれないけど、そういう時は『田中恵子に聞いてください』って言ってくれない? みんながバラバラに対応したら揚げ足盗られたり、都合のいいとこだけ取り上げられたりするから」

 みんなに忠告した。

 根拠なんてないんだけど、あたしに一本化しておくのがベストだという気がしたんだ。

 それは正しい判断だった……。

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プレリュード・9《あべのハルカス ハルガスミ》

2020-06-24 06:19:42 | 小説3

リュード・9
《あべのハルカス ハルガスミ》   



 

 大阪は日本で二番目に狭いという嘘がよく分かる。

 貫ちゃんのお父さんの株主優待券で、あべのハルカスの展望台に来ている。
 南のすぐそこに関空が見える。大阪は、この関空が出来たので、香川を抜いて、日本で一番の狭さを克服した。

「なんや、奈菜ちゃんも知ってたんか」
 貫ちゃんがつまらなさそうに言う。
「うん、中学で習た。勉強苦手だけど、こういうことは覚えてる」
 なんかセコイ手段でブービーになったと思って、このエピソードは、よう覚えてる。
 なにも狭さ日本一を克服しようと関空作ったわけじゃないけど、作って測ってみたら、結果的に香川県を抜いてしまったらしい。

 一見肩の力の抜けた面白い話に聞こえるけど、大阪人の屈折した劣等感と優越感が両方出てるようで、わたしは好きじゃない。

 お互い知ってたいうことで、貫ちゃんの話の頭はすべった。すべったことを、二人でアハハと笑う。すべったことやら失敗したことを、笑いに変えるセンスは、やっぱり大阪人。
「こんな狭いとこに十八年間おったんやな……ガキのころは、けっこう広い街や思てたんやけどなあ」
「うんうん、関空と伊丹の二つも大きな空港があって、えらい街だってね」
「八尾空港まで入れたら三つになる。戦後しばらくはうつぼ公園も飛行場やったらしいでぇ、ジェット機の100機ぐらいに紐つけて飛ばしたら、飛んで行ってしまいそうに狭うて、ちっこい」
「天王寺公園て、あんなに狭かったのね」
「そら、内国勧業博覧会のときの名残やもんな。大阪的チープさ」
 
 アホな話で盛り上がった。わたしらは、その気になったらアホな話だけで半日ぐらいは潰せる。

 だけど、時間を潰しにハルカスに来たわけじゃない。

 口にはしなかったけど、もっと大事な話があることは予感してた。

「東京に行くんや……」
 予感していた言葉を貫ちゃんが言ったのは、けっきょく安倍地下のコーヒーショップ。
「そんなことだろうと思ってた」
「ハハ、ばれてたか」
「貫ちゃんの演劇は、大阪には収まらないから……そんな予感は、ずっとしてた。貫ちゃん、芝居の話はするけど、進路の話なんかはしたことないでしょ。余計に決心は強いと思ってた」
「これでもズルズル悩んでたんやで。気が付いたら、もう芝居の道しか残ってなかった」
「話してくれたら、背中押したげたのに、そうしたら、もっと気楽に決心できたと思うよ」

 貫ちゃんは、表情のつくりように困ったような顔になった。

「東京行ったら、しばらく帰ってこられへんけど、友達と思ててええか?」
 すごい遠まわしで気弱な台詞をやっと言ったのは、さっきチープだと言った天王寺公園。
「そういう言い方は、わたしららしくない。そんな確認しなくても、いい友達……」

 
 あたしは気持ちのままに言った……でも、大事な何かを切り落としたような気になった。
「そうか、ごめんな。つまらんこと言うた」

 つまらないことを言ったのは、わたしだという気がしてきた。

 さっきまで居てたハルカスが気の早い春霞の中に滲んでた。

 霞の向こうには、今はまだ見えないものがあるかもしれないよ、貫ちゃん。

                       奈菜……♡

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