小説学校時代・13
A君は激怒した!
キミの学校、いい噂聞かないねえ。通行の邪魔だし、あっちこっちでタバコ吸うし……こないだは小学生どついたいうて問題になってたなあ。
K大学の面接に行って、書類を見た面接官が、のっけに学校の悪口を言ったからである。
「そんな悪い学校とちがいます!」
「そやけど、ねえ……(鼻で笑った)」
「1200人も居るんです。ちょっとはトラブルもあるけど、いい生徒が多いんです!」
このあとのA君の記憶は途切れている。
「こんな大学は、こっちから願い下げじゃ!」
A君は椅子を蹴飛ばして面接会場を飛び出してしまった。
廊下で面接の順番を待っていた仲間は真っ青になった。
「お前は、なんちゅうことを……」
A君本人から報告を受けた担任と進路の先生は頭を抱えた。
「ごめん先生、ついカッとしてしもて……」
いつもの元気はどこへやら、A君は、悄然とうなだれてしまった。
「謝りに行かならあきませんね……」
進路部長は、ロッカーからネクタイと上着を取り出した。
A君は、業界用語では「明るく元気な生徒」だった。
校内の言葉では「やんちゃな生徒」
有り体に言えば「問題ばかり起こしている生徒」だった。
生活指導でお世話になることも一度や二度ではなく「このクソ学校!」と言うのが彼の口癖であった。
本人も、周囲の生徒や教師も「Aは、うちの学校を嫌っている」と思っていたし、本人もそうだった。
進路指導部長がネクタイを締め終わったころに、大学から電話があった。
――いやあ、感服しました! A君は、近頃珍しい愛校心に溢れた生徒です! どうかお叱りにならないように――
さすがに合否までは言わなかったが、その後A君は無事に大学に合格した。
「ええか、真似すんなよ。Aは、企まずにやったから評価されたんや。わざとやったら、絶対逆効果やからな!」
あくる年からは「受験の心得」でA君の話をしたが、絶対真似するなと付け加えた。