大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・153『山門に入るを許さず・2』

2020-06-18 14:59:04 | ノベル

せやさかい・153

『山門に入るを許さず・2』さくら        

 

 

 くんし山門に入るを許さず くんしゅ山門に入るを許さず

 違い、分かります?

 

 パンパカパーン(^^♪ そう! 小さい『ゅ』が有るか無いか!

 小4のわたしは『くんし山門に入るを許さず』と思てて、君子は『君子』で、友だちの中原君子さんは、遠足で訪れたお寺に入られへんと心配した。

 リュックとか水筒には名前とか書いてあって、中原さんが、もし『中原君子』とフルネームで書いてたらどないしょうと心配した。

 けど『中原』としか書いてないので安心したというアホな話。『君子豹変す』も、中原さんが豹に変身するわけでもないし、『君子危うきに近寄らず』は中原さんがビビリの怖がりやというわけでもないし、『君子の交わり淡きこと水のごとし』は中原さんが水くさいというわけでもない。

 まあ、小4の知識というのはハンパや云うことと、想像力とか感受性がすごいということを言いたいわけです。

 で、『君子山門に入るを許さず』ですわ。

 小6になると『君子』が中原さんとの下の名前と違って、学識経験優れた偉い人という意味も分かった。

 せやさかい『君子山門に入るを許さず』で混乱した。

 文字通り読むと『偉い人はお寺に入ってはいけない!』という意味になる。

 

 小6のあたしは考えた。

 

 お母さんの実家である如来寺が浄土真宗のお寺で、宗祖は親鸞聖人。

 親鸞聖人の教えは、むっちゃ簡単。

 仏さんは、衆生(一般ピープル)をあまねくお浄土に連れて行ってくれはる。

 生きてる間にええことをしたとか悪いことをしたとかはノープロブレム!

 どんなことをしても極楽浄土に連れて行ってくれはる。

 せやさかいに、仏さんには感謝の気持ちを表すだけでええ!

 その感謝の言葉が『南無阿弥陀仏』であるのです。

 めっちゃ明快やと思いません?

 お寺と言うのは、そのことに気づいた人々が集まって『南無阿弥陀仏』の感謝をささげる場所なんです。

 親鸞さん的に言うと『感謝の道場』という感じ。

 

 けどね、小6のあたしはファイナルファンタジー10やってしもたんです。

 

 ティーダがユウナのガーディアンになってザナルカンドを目指すRPGの大傑作!

 むかし、お母さんがプレステ2でやって感動したというので、あたしはプレステ3のリマスターでやったんです。

 その中に『エボン』という宗教があるんです。エボンの教えは『死こそ人を救う道』と教えてるんですわ。

 とんでもないカルトで、最後はユウナやティーダによって滅ぼされてカタルシスになるんやけどね。

 

 このエボンの教えいうのは、親鸞聖人の教えといっしょなんちゃう? と、思たわけです。

 

 浄土真宗:死んだら阿弥陀さんがお迎えに来てくれはって、西方浄土に連れて行ってくれはる。

 エボン:死こそが救い、だから、みんな死ねばいい。

 似てると思いません?

 お祖父ちゃんも、おっちゃんも、従兄のテイ兄ちゃんも優しいええ人やけど、浄土真宗の坊主。ということはエボンのシーモア老師みたいに、一皮むいたらティーダやユウナにやっつけられる悪党!?

 そういう感じで浄土真宗とエボン教の共通点を感じたあたしは、心配になったんです(;゚Д゚)

『君子山門に入るを許さず』は、ティーダとかユウナとかいう偉い奴、つまり君子が入ってきたら、ボス戦が起こって、メチャクチャになると!

 お祖父ちゃんもおっちゃんもテイ兄ちゃんも本性を現してやっつけられてしまう!

 お母さんが実家に帰りたがれへんのんも、そのことを知ってりからや。お寺の血を半分しか受けてない娘のさくらをお寺の災厄から避けようとしてたんや!

 あたしは、自分をユウナになぞらえてました。

 いつかティーダが現れて、あたしのガーディアンになってくれて冒険の旅が始まる!

 詩(コトハ)ちゃんは従姉やさかい、リュック。ティーダとともにガーディアンになってくれて、あたしを護ってくれるはず!

「あのなあ『君子山門に入るを許さず』とちゃう。『葷酒山門に入るを許さず』や」

 小6の秋にテイ兄ちゃんが教えてくれた。

 

 久々に集まった本堂裏の部室で、頼子さんと留美ちゃんが腹を抱えて笑っております。

 

 やっと、文芸部が復活しました。

 

 

 

 

 

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小説学校時代 17『昇降口・3』

2020-06-18 07:01:40 | エッセー

 17

『昇降口・3』   

 

 

 昇降口は学校で一番人の出入りが多いところです。

 

 登下校時のみならず、体育の授業でグラウンドシューズに履き替えたり、学校によっては生徒の個人ロッカーを兼ねていて、授業の度毎に教科書や資料を取りにきたり。一日で、のべ数千人が出入りします。

 当然、砂ぼこりやゴミが溜まりやすく、学校で一番汚れるのが早い場所になります。

 私学では、生徒に掃除させるだけでなく、専門の清掃係を雇っていて重点的にきれいにしているところもありますが、たいていの公立高校では行き届きません。

 そこで、下足ロッカー、特に個人用ロッカーと兼ねている場合、いろんなものが溜まります。

 三年生が卒業するときには、期限を切ってロッカーの中を空けておくように指導しますが、行き届きません。

 期限を三日ほど過ぎたころに、三年生担当の教師でロッカーの大清掃をやります。

 

 鉄条網を切るような大きなカッターで南京錠を破壊して、ロッカーの中の残留物を全て放り出します。

 

 残留物のトップは教科書のたぐいです。

 毎年「教科書は自分で処分するように」と事前指導するのですが、ほとんど効果はありません。

 ほとんどまっさらで、開いた形跡のないものもあります。実にもったいない。

 もったいないので、教師はハイエナになります。

 英語の辞書や国語便覧、社会の地図帳などは数十冊から百冊ほど持っていきます。辞書も便覧も地図帳も書店で買えば安くてもニ三千円はします。役に立つから持って帰れと指導するのですが、今はネットで必要な情報が必要な時必要なだけ取り出せるのですから説得力がありません。

 重量数百キロの教科書・資料を廃棄します。昭和生まれのオッサンは、どうももったいなくて仕方がありませんでした。

 ご禁制の品が出てくるのも毎年の事です。

 たいていはタバコやライターの喫煙具。

 三月末日までは籍があるので、厳密には指導の対象なのですが、卒業式が終わっているので、よっぽど法に触れるブツでない限り、そのまま処分します。

 男子のロッカーからはアダルトなものが出て来たりしますが、ま、微笑ましいものです。

 汗臭いまんまの体操服。数か月以上入れっぱなしというものもあって、強烈な臭気を発していたりします。

 男子のロッカーから女子の水着が出てきたことや、避妊具が出てくることもありますが、かまわずにゴミ袋にぶち込みます。

 ロッカーの鍵、たいていは南京錠ですが、チャチナものなので比較的簡単に開きます。中には鍵をぶら下げておくだけで施錠していないものもあります。だから、入っていたからと言って名義人のものだとは限りません。

 時に、手紙やメモが残っていることもあります。

 生徒は、授業中でも平気で手紙のやり取りをやりますが(携帯やスマホが普及しても廃れません)人に読まれたくない場合ロッカーに入れることがあります。また、もらった手紙やメモは不用意にゴミ箱には入れられない(前述しましたが、ゴミの不法投棄の場合中身を改めることがあります)ので、生徒なりに粗略には扱えずロッカーに入れっぱなし。

 こういうものも読まずに処分します。

 年度末の多忙な時期でもあり、関わり合ってはいられないというのが現実ではあります。

 片づけたロッカーはどうするかと言うと、翌々日くらいに業者に来てもらって、全て廃棄になります。スチール製の立派なロッカーなので、もったいないのですがスクラップです。わたしたちのころは、何世代にもわたって使いまわしました。それも木製の粗末なもので靴以外はモノを入れるスペースなどはありませんでした。

 空いたスペースには、新入生のロッカーが設置されて四月からの新学年に備えます。 

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あたしのあした・26『とんでもないもの』

2020-06-18 06:47:23 | ノベル2

・26
『とんでもないもの』
      


 

 運転してくれる人が見つからなかった。

 マイクロバスは普通免許で運転できるんだけど、普段乗らない人にとっては大型バスと変わりがなく、十三人も載せてはるか滋賀県まで運転するのは腰が引けてしまうのだそうだ。
 それに、早乙女女学院の出番は初日の午後五時、観終って帰ったら深夜になってしまう。
「初日は予選で、勝ったら二日目に決勝。決勝になったら、ぜひ観たいしねえ」
 詳しく調べると、そんな欲も出てくる。
 当たり前なら、新幹線で行けばいいんだけど、往復の交通費やら宿泊費なんかはとても出せない。

 さすがのあたしたちも諦めかけた。

 で、もう一つ困ったことが起こった。

 水野先生のお父さんが亡くなって、先生がしばらく休みになってしまったのだ。
 ほんの三日前なら「ラッキー!」と喜んだだろう。水野先生がいなければ補講は無くなるもん。
 でも、あたしたちは早乙女女学院のタヒチアンダンスが観たい。
 コンクールを観るのが絶望的になった今なら、なおさら観ておきたいと思った。

「あたしが引率することになったよ、運転もするからね」

 なんと、わが担任の萌恵ちゃん先生が、朝礼で宣言した。
「え、先生運転できるの?」
「原チャの免許じゃだめなんだよ!」
「アクセルに足届くのー!?」
 嫌味じゃないんだけど、正直な反応になってしまう。萌恵ちゃん先生は小柄な上に童顔で、服装によっては小学生にしか見えないことがある。
「失礼ね、家ではパッソ乗り回してるわよ!」
 パッソって、思いっきり軽自動車なんだけど……。

「あれー、おかしいなあー?」

 運転席に収まった萌恵ちゃん先生は、アクセルを踏みながら首をひねっている。
 座席に収まったあたしたちは、萌恵ちゃん先生の意外にうまい運転ぶりに「これなら、コンクールの運転も頼めるんじゃね?」とほくそ笑んだ。でも「それは無理な相談だなあ」と水野先生と同じ理由と、マイクロバスで一時間以上の運転は無理! ということで断られた。
 そして、マイクロバスは校門を出たところで停まってしまったのだ。

「こりゃあ、エンジンの故障だわね……」

 エンジンパネルを開けた先生は、意外な手際の良さでチェックし、三十秒ほどで結論を出した。
「ほかの先生とかにみてもらった方がよくね?」
「あたしんちは、三代続いた自動車修理工場なのよ、あたしがダメって言ったらダメなの!」
 普段では見られないほどの自信で断言された。ここで断言されてもねえ……。
「ほんとだ、杉村モーターズって、優良工場の折り紙付きだ!」
 スマホで検索したノンコが感心している。
「ま、仕方ないわね、今日は中止ね!」
 先生はドアを開け、ステップに足をかけた。
「待って先生! 最後の手段頼んでみるから!」
 智満子が先生の背中に呼びかけた。
「なにかアテがあるの?」
「う、うん……」
 智満子はスマホで電話をかけ始めた。

 そして十分後、角を曲がってとんでもないものが、あたしたちの前に現れたのだった!

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プレリュード・3《ウダウダと……後篇》

2020-06-18 06:39:43 | 小説3

・3
《ウダウダと……後編》   



 

 

 演劇部とは縁を切った……つもり。

 ところが学校いうのは村社会で、必要以上に「縁切った!」と言いまわっていては友達をなくします。
 だから、演劇部員の番号は残したし、着信拒否というような大人げないことしなかった。廊下で出会ってもも「お早う」とかの挨拶ぐらいはした。

 しかし、この半端な対応がムカツキの種になった。

 うちの演劇部とF高校の有志が合同公演やると、冬休みに入って一斉送信で連絡してきた。
 わたしは、メールは送るけど一斉送信はしない。ダイレクトメール以下の通信だしね。
 コンクールの時も、観客動員を言われたんで、直美のほかにも二人メールを打った。ちゃんと別々に。で、結果的に直美一人が観に来てくれたわけです。

 で、この一斉送信を無視してたら、二日後にまた一斉送信が帰ってきた。

――ご要望通り、お席を確保いたしました。UFO劇団一同ご来場を心よりお待ちしてまおります――

 うそ、観に行くなんて絶対返信してへんさかい! 思わず大阪弁になる!

 念のため、こないだの一斉送信を確認。やっぱり返信はしていない。もう一度確認。すると、本文が終わったずーーーっと下、四スクロールしたあたりに、こうあった。

――ご都合の悪い方はご連絡ください。ご連絡が無い場合は、それを持ってご出席のご返事とさせていただきます――

 え、そんな……。

 無視してもいいんだけど、わたしは気が弱い。なんとか卒業までは穏便に高校生活を送りたい。小屋(会場)も朱雀ホール。定期で行ける会場。仕方なく行くことにしました。

「お、やっぱりきたか!」

 モギリのO先輩がしたり顔。どうやら、あの一斉送信の考案者はO先輩みたい。
 これで分かったことが、もう一つ。
 この公演は、うちのU学院とF高校の合同公演。だから名前はUF劇団になるはずだ。それが人を喰ったみたいにUFOというのは、このO先輩がイッチョカミしってるからのようだ。
 ちなみにO先輩は二年前の卒業生。もっと大学生としてやることがあるだろう……思ったけど、口には出さない。

 O先輩の戦術が効いたのか、観客席はほぼ満席。まあ、キャパ100ちょっとの小屋だから、そんなにビックリするほどのことでもない。

 芝居は……舞台に上がって、素人のドタバタコントを繋いだだけ。パンフには『邂逅と出会いの奇跡!』なんというキャッチコピー。要はろくに稽古もしていない即興芝居。

 即興そのものは否定しない。マリリンモンローとかジェームスディーンが出たアクターズスタジオでも即興は重要な課題。だけど、あっちは10分ほどの映画の一コマを丹念に半年もかけて、先生と学生の役者が解釈、実行、検証のスリーステップを丹念にやってる。
 ジェームスディーンが『エデンの東』で見せた屈折したアマエタの演技も、アクターズスタジオの即興の練習の成果。あたしが好きなんは、キャル(ディーンの役名)がパパに叱られて、うじうじ部屋の片隅で壁をホジホジしてるところ。パパに反発しながらパパの愛情が欲しいてたまらんハイティーンの切なさが胸に迫ってくる。
 これも、真剣な即興から出てきたものだ。
 あとは楽屋受けのバカみたいなギャグの連発。客席は一部を除いて湧いてた。あたしと数人のお客さんが白け顔。その中に一人、あたしでも知ってる演劇評論家の栗田さんがいた。伝説通り上手の一番奥で、腕を組みながらポーカーフェイスで観てらっしゃった。あのポジションは、芝居を観客ごと見るという栗田さんの定位置。

 あくる日のブログには『老衰した若者のモドキ芝居』と、タイトルから厳しかった。
 あたしは匿名で、観客動員のえげつなさを書いた。
「同感です」と短いコメントが出てた。

 まあ、愚痴みたいなことは、これでおしまいです。

 次からはプレリュードに相応しいことを書き散らしたいと思います。

 奈菜……♡ 

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