大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・155『ギョウザパーティー・2』

2020-06-30 12:52:26 | ノベル

せやさかい・155

『ギョウザパーティー・2』頼子        

 

 

 その時起こったことをきちんと書く文才が、わたしには無い。

 

 その時、如来寺のリビングに居合わせた人たちの一挙手一投足や息遣いまで描写しなければ、このギョウザパーティーの中で起こった奇跡を言い表すことはできないと思う。

 だから、ちょっと散文的。

 海の上に現れた氷山を見て、海の下の姿形を感じて欲しいというくらい無責任なんだけど、その時、そこに感動があったということが伝わればと、キ-ボードを叩きます。

 

 勲子さんは真珠湾攻撃が起こった一週間後に、お父さんの仕事の都合で奉天から大阪に戻ってきた。

 日本に戻るのなら、高等小学校まで過ごした東京が良かったのだけれど、お父さんの仕事の都合とあれば仕方がない。

 女学校の三年で挺身隊に取られて、淀川沿いの軍需工場で働くことになった。

 お父さんが砲兵工廠の技師であったため、勲子さんも電気の知識や工作機械の操作には慣れていたので、一週間後には精密部品の製造工場に回された。当時の軍隊は熟練工が不足していたので、頼子さんの知識と技術は重宝された。

 そこに前後して配置されたのがソフィアというドイツ人の女学生だった。

 ソフィアのお父さんはお医者さんで、娘のソフィアを連れて来日、しばらくしてお父さんは日本人のお母さんと再婚し、大阪の大学病院に勤めていたらしいの。

 お父さんはソフィアに日本国籍をとらせた。おそらく、ナチスドイツに未来は無いと思っての事。わたしのご先祖がイギリスとヤマセンブルグの二重国籍だったことに似ているわ。

 ソフィアさんが精密部品のセクションに回されたのは、軍隊か工場かの判断。やはり白人の女学生が日本人といっしょに作業させるには、いろいろ問題があると思われたんでしょうね。少数だけれど、欧米出身の日本人や二重国籍の人たちは居て、それぞれ苦労していたらしい。

 開戦時に特命駐米大使を務めていた来栖さんの奥さんはアメリカ人で、息子さんは陸軍の航空隊に入り、帝都防空の出撃で事故死して、妹さんたちも日米に分かれて苦労している。

 満州で外国人にも慣れていた勲子さんは、ソフィアさんとも、直ぐに仲良しになった。

 終戦間近い初夏のある日、折からの空襲警報に防空壕を目指して走るソフィアと勲子さん。

 ……結論から言うと、この空襲でソフィアさんはグラマンの機銃掃射に遭って亡くなってしまう。

 それを、勲子さんは自分のせいだと思い込んでいた。

 そのソフィアさんと同名のソフィアは、どうも似ている。

 ギョウザで子供時代の記憶が蘇って、その最中に、その名もソフィアに出くわして、一大感激を発してしまった。

 どうもうまく書けません。

 やっぱり、もう一歩踏み込まなければね。

 ギョウザも焼き上がったので、また、今度ということで。

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お姉ちゃんは未来人・6〔松子ふたたび・2〕

2020-06-30 07:54:35 | ボクの妹

ちゃんは未来人・6 

〔松子ふたたび・2〕   

 

 

 やっぱ竹子には効かないんだ。

 

 お風呂あがって部屋に戻ると、お姉ちゃんが背中で言う。

「……どういうことか説明して」

 お姉ちゃんの横に腰を落として密やかに聞く。

 お姉ちゃんがわたしのプリンを食べてしまった時に詰め寄ったのに似ている……いや、プリンは嘘の思い出だ。

 だって、わたしは一人っ子だ。

 目の前のこいつは、未来からやってきたアンドロイドで、わたしの玄孫がアンドロイド保護法を作るのに寄与する。その玄孫がきちんと生まれるようにわたしを保護しに来たのが半年前。握手会の事件で重傷を負った『松子』はアンドロイドであることがバレるのを恐れて、その場で未来に帰ってしまった。

 当然みんなの記憶や記録を抹消したから、わたしは元の一人っ子に戻ってしまった。

 わたし一人の記憶だけは戻せなかったみたいなんだけど。

 

「どうも、竹子の脳みそはスペックが悪くて、インストールやアンインストールが効かないみたいね」

 人を不出来なパソコンのように言う。

「いまさら、なにしに戻ってきたのよ?」

「あーー傷つくなア、そういう言い回し」

「だって、握手会で死んだし」

「いいのよ、わたしの存在はアンインストールしたし。いまから、竹子の脳みそも初期化する」

「ちょ、待って!!」

 馬乗りになってきた松子を必死で止める。

「初期化しないと、竹子の態度だと、みんな不審に思うから。大丈夫、プリンも竹子が無事に食べられたことにしとくから」

「ちょ、ちょ、そういう問題じゃなくて。なんで、戻ってきたのかってことよ! それも一個年上の女子高生で!?」

「あーーーそっちかあ」

「はなしてよね!」

「あ、それ掛詞ね、放してと話して」

「両方よ!」

「どっちを先にしようか?」

「同時にやって!」

「そーお? もうちょっと竹子の胸揉んでいたかったけど」

「もーーいいかげんにし!……」

 そこで声を落としてしまう。お母さんたちに聞こえたらまずい。

「大丈夫よ、この部屋は完全防音にしといたから」

「もーーどけったら、どーけーー!」

「アハハハ、分かった分かった」

 やっとどかせると、松子は胡座をかいて猫背になって上目遣いになった。

「な、なによ」

「竹子、あんたの性格が悪くなってきてね、このままだと玄孫が生まれても『アンドロイド保護法』を言い出さなくなるのよ」

「え?」

「性格の悪さがDNAに影響を与えてね、玄孫の性格まで変になるのよ」

「そ、そんなの本人の責任でしょ!」

「いや、竹子の責任」

「だ、断定すんな!」

「この時代の言葉で言うと『バグ』なのよ。今度はね、その『バグ』を直しに来たのよ、お姉ちゃんは……」

「ちょ、松子、お、お姉ちゃん……う、うぷっ」

 お姉ちゃんは、再び覆いかぶさってきて、わたしにキスしてきた。

 

 こ、今度は百合ゲーかあああ!?

 

 うぷ……え? なんで気持ちいいの? なんで?

 

 

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あたしのあした・39『大団円の果て』

2020-06-30 06:03:33 | ノベル2

・39
『大団円の果て』
      


 大団円を祝っているような青空だ。

 水泳の補講は終わったし、あたしたち十三人の結束も戻って来たし、水野先生の濡れ衣も果たせた。
 早乙女女学院の水泳部も……水泳部がタヒチアンダンス部を兼ねているのはビックリだったけど、で、そのタヒチアンダンス部が解散になるのにもビックリだったけど、みんなで拍手して感動のうちに有終の美を飾れたように思う。

 そんな青空を頬杖ついて眺めていたら、萌恵ちゃん先生に声を掛けられた。

「直ぐに会議室へ行って、ほかのメンバーにも声を掛けてね」
 怖い顔して言うと、そそくさと昼休みの教室を出て行った。

 会議室に入ると見知らぬ女の人たちが目に入った。

 きちっとスーツを着た人からラフなジーンズまで居て、年齢も二十代から五十代くらいまでバラケては居るけど、近寄りがたいというオーラは共通している。
「君たちは、そこに座りなさい」
 声で気づいた。校長先生と教頭先生、ドアからはロッカーとかで死角になったところに水野先生がポツンと座っていた。
「この子たちが、水泳の補講に出ていた子たちです。五時間目の授業も迫っていますので、よろしくお願いします」
 教頭先生が念を押すが、気弱く笑った感じで言ってるので効き目はないだろう。

「あなたたち、女性として自覚と誇りを持たなきゃだめよ」

 スーツを着たオバサンが高飛車に言う。
「ご意見いただく前に名乗って頂けませんか」
 こういうオバサンには下手に出てはいけない。直感で、そう思って、きつめに反応した。
「わたしたちは『女性が輝く会』の代表メンバーです。わたしが会長の毒島不二美(ぶすじまふじみ) どうぞよろしく」
 思い出した、民自政権時代有力議員の秘書をやっていたオバサンだ……なんで、そんなこと知ってるんだろ?
「動画もテレビも観ました。とても青春で和気あいあいのように拝見しました。でも自覚無さすぎ! いくら先生とはいえ、気安く触らせ過ぎです」
「あなたたちは青春でいいかもしれないけど、あれじゃ胸やお尻を触らせることを奨励しているようなもんです」
 となりの眼鏡が重ねてくる。
「先生は胸なんか触ってません!」
 ベッキーが涙目になって抗議する。
「あ、別役さんね。あなた男の先生に人工呼吸させて平気なの?」
 ショートカットが目くじらを立てる。
「へ、平気も何も、先生は救けてくれたんです!」
「それ! 自覚無さすぎ! 先生たちにも言ったけど、女の子ばかりの水泳の補講に女の先生が付かないのは問題なの!」

 読めた、この人たちは、ああいうことを断じて許さないんだ。信頼関係の上でもスキンシップは許さないんだ。

「水泳の練習だと言って、水着の女の子の後ろから、こう足をつかんでなんて、完全にセクハラなの!」
 この人たちは、あたしたちの青春がステージアップしたことは頭から無視し、記号としての肌の接触を糾弾しているんだ。
 唇を震わせているベッキーの手を机の下で握りながら言う。
「分かりました、あたしたちは平気だったけど、触ることは正しいことだというメッセージになっちゃいけないということですね」
「あなたがたが平気と言うのも困るんです。そういう神経は間違っているんです」
「この場でにわかには受け入れられませんが、一般的なセクハラ行為に警鐘を鳴らすことにはやぶさかではありません。わたしたちなりに考えてから回答いたします」
「なんだか議員さんか議員秘書みたいな物言いするのね」
 毒島が唇をゆがめる。あたしも驚いてんだけどね。
「でも、意味は明確に伝わったと思います。回答は明日の十八時までにはいたします、毒島さんの連絡先、先生にお伝えください。では、五時間目の鐘が鳴りました、失礼します。みんな行こう」

 あたしたちは、世間というものを学習しつつあるのだった……。
 

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プレリュード・15《ナナまつり》

2020-06-30 05:55:34 | 小説3

リュード・15
《ナナまつり》    



 

「ここにいる女子高生が、卒業式で世にも稀なアドリブ答辞をやった加藤奈菜さんです!」

 MCのオニイサンが言うと、ADさんが手をまわして、スタジオ中の人たちに拍手を強要。人数分プラス音響さんが効果音で水増し。
 わたしは、なに着て行っていいのか分からないので制服を着て行った。先日お母さんから二万円せしめて買ってきた服は、改めて着てみると、まだ身にそぐわないと感じたから。
 
「あの答辞は、いつやることが決まったんですか?」
「式が始まった直後です。教頭先生が横にきて……こられて、頼まれました。予定していた子が、急に体調不良になったとかで」
「実は、その時のビデオがあります。まずVをどうぞ」
 放送局というのはすごいもので、誰かが偶然撮ってた動画を手に入れて、アップにして耐えられるように加工してました。

 あたしは、あのときメッチャびっくりしたんだけど、案外平然と引き受けてるのには、自分でも意外。

「こういうときに、気楽に引き受けられて、あれだけの答辞やっちゃうんだから、十分放送局のアナウンサーが務まるわ。A君、ボンヤリしてたら、司会とられるで」
 報道部のオッチャンが言うて、スタジオが爆笑(これは仕込みやない)大阪人の性で、いっしょに笑ってしまう。
「しかし『身を立て名を挙げ』いうのは、アドリブとは言え、よく出てきましたね」
 評論家のエライサンが大阪弁のアクセントで言う。
 この質問は想定内。教頭先生に頼まれたときに、このくだりが最初に頭に浮かんでた。
「あれは『仰げば尊し』のテーマになってる部分で、立身出世主義だってことで、たいていの公立高校じゃやらないんですよね。加藤さんは、なにか思いがあって?」
「はい、答辞でも言いましたけど、あれは、それぞれの分野で一人前の大人になれいうことで、末は博士か大臣かいうことではないと思うんです。あ、もうちょっと言わせてください。大臣、博士と解釈して反対してる人は、無意識に職業差別してるんやと思います。差別意識がなかったら、この部分で反対は出てこないはずです」
「なるほどね。あたしら芸人も芸能界では色物いうて、長いこと格下に見られてきたもんね」
 Y興行のベテラン漫才師のオバチャン。

「それに、あの『仰げば尊し』は戦前・戦中の軍国教育の権化みたいに思われてますけど、あれは原曲がアメリカの『Song for the Close of School』です。意味はほとんど一緒で、身を立て名を挙げのとこだけが、日本の創意なんです」

「よく知ってるね。ボクもいま言おうとして資料用意してたとこなんですけどね」
 評論家のオッチャンが頭を掻いた。
 あたしは、このことは貫ちゃんに教えてもらって、ネットで確認した。貫ちゃんの笑顔が一瞬頭に浮かんだ。
「それと、加藤さん、最後に言いましたよね。途中で中退していった仲間の事にも思いをいたそうって。あのくだりはよかったなあ」
「近い友達の中にも中退した子がいてるんで、そのことが頭にありました。どんな気持ちでこの日を迎えてんのかなあと」
「なるほどね。なかなか思っていても言えないというか、自分たちのことだけで、なかなか辞めていった子のことまでは頭に、浮かばないもんね。いや、大したことです」

 だいたい、このへんで、あたしの話は終わるはずだった。

「加藤さんね『君が代』については、どう思いますか?」

 ゲストの言いたいこと言いのジイチャン俳優さんが聞いてきた。
「習慣としては定着しつつあるので、いいことだと思います『君が代』は、戦時中のドイツやイタリアの国歌と違って、明治の昔からあります。明治時代をどうとらえるかで受け止め方も変わってくるんでしょうが、アジアで唯一の近代国家を創った日本ととらえたら、誇りに思っていい歌だと思います」
「近代国家って、どういう意味だろ?」
「三権分立の憲法を持って、それに基づい運営されてる国家だと思います」
「いや、大したもんだ!」
 評論家のオッチャンと、言いたいこと言いのジイチャン俳優さんが、えらく感心して、わたしは、そのあとの『名店シェフの家庭料理』のコーナーまでいっしょにさせてもらって、ごちそうになった。

 で、お母さんが録画してたのを観ながらの三月三日の雛祭り。
「今年は、ナナ祭りやなあ」
 と、お母さん。

「アハ、なにそれ?」

 笑ってしまうけど、お母さんの気持ちは素直に嬉しい。

 あのとき喋った中身は、みんな貫ちゃんが考えるきっかけをくれたものばかり。ありがたい友達だと思う。このときは、まだ貫ちゃんへの確かな気持ちは分かっていなかった……いや、分かろうとしなかったのかもしれないんだけどもね。

              奈菜……♡ 

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