大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・162『日光・1』

2020-06-26 13:47:37 | 小説

魔法少女マヂカ・162

『日光・1』語り手:マヂカ    

 

 

 

『これより日光市』の標識が見えてきた。

 

 標識を見上げながら三人とも立ち止まってしまう(ツンが人の姿になったので三人と数える)。

 標識が妙なのだ。

 畳二枚分はあろうかという白地の標識は地表から七メートルほどの高さに照らし出されている。高速道路で見かける奴で、普通は道路をまたぐポールに吊り下げられているものだが、この標識は、上にも横にもポールが見えない。

 それに、どこにも光源になるライトが見えないのに、薄闇の中に浮かび上がっているのだ。

 なんとも怪しい。

 それに、ここは高速道路はおろか、一般道でさえない。

 道なりに進んで行くうちに舗装もされていない道に変わり、道を見失わないように歩いていると、いつのまにか森の中に迷い込んでいるのだ。

「わ!?」

 ツンが驚くまで、一分近くも標識を見ていた。

「こんにちは」

 標識から視線を下ろすと、標識の真下に女の子が立っていた。

 赤いワンピースにショートヘアの頭には赤いリボン、かわいい顔で大きな目は少しつり上がっている。こいつは……。

「言っとくけど猫娘じゃないから」

「あ……そう」

「でも、見た感じ……」

「猫娘じゃないから」

「あたし、犬娘のツン」

「だから猫娘じゃないから」

「分かった、その猫娘ではない君が、なにか用なのかい?」

「ダメと言っても入って来るだろうから、わたしが案内役に出てきたの。これから日光に入ってもらうけど、全てわたしの指示に従ってもらいます」

「ああ……えと、そういうのは好きじゃないんだけど」

「断るのは自由だけど、その時は、この森の案内もしてあげられないから」

「案内してもらわないとどうなるのかな?」

「道に迷うわ、出るのに何年かかるか分からない。魔法少女はバカみたいに長生きだからへっちゃらでしょうけど、犬は十年、人間も八十年ほどが限度でしょ」

 魔法少女でも、そんなに迷っているのはごめんだ。

「困るでしょ、だから、わたしが案内。いいわね」

「こっちの正体は分かっているようだけど、こっちも、きみの正体が分からないんじゃフェアじゃないと思うよ」

「そ、そうよ」

「わん」

「わたしは、眠り猫娘」

「なんだ」

「やっぱり猫娘」

「わん」

「違うわ、猫娘の生みの親は水木しげるだけど、わたしのは左甚五郎だもん。ちょっと待ってね……」

 眠り猫娘はスマホを出すと誰かと会話し始めた。

「はい、はい……分かりました宮司様、ご指示の通りに。もう三歩前に進んでくれる」

「お、おう」

 三人おずおずと三歩進む。

 

 ガッシャーーーーン

 

 背後で音がしたかと思うと、鉄柵が現れて退路を断ってしまった。

「帰る時に開けてあげるから、じゃ、付いて来て……と、その前に、これを渡しておくわ」

 眠り猫娘が茶封筒を差し出した。『日光市内での開封を禁ず』と注意書きがしてある。

「なんだ、これは?」

「お土産よ、西郷さんの本名が書いてある。探していたんでしょ」

「ほんとなのか、わん!?」

「そうニャア……って、動物語は止めてくれる、こっちまで伝染ってしまうニャ」

「ネコなんだから、無理するなよ、わん」

「あんたとは口きかない!」

 

 眠り猫娘の案内……監視付きで日光での時間が動き始めた。

 

 

 

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ライトノベルベスト[お姉ちゃんは未来人・4]

2020-06-26 06:24:36 | ボクの妹

ライトノベルベスト
[お姉ちゃんは未来人・4]    



 

 数人前のところで悲鳴があがった!

 悲鳴の原因は直ぐに分かった。若い男がナイフを取り出し暴れまわっているのだ。

 以前他のアイドルグループで、握手の直前にナイフを出した男がアイドルを切りつける事件があったので、握手会のセキュリティーはかなり厳しくなったが、ただ並んでいる段階でのチェックは甘かった。列は蜘蛛の子を散らすようにバラバラになり、切られた数人の子が傷を庇いながら、彼方の方に避難した。

 あたしは、一瞬男と目があってしまった。

――次の目標はおまえだ!――

 あたしは蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。悲鳴さえ上げられない。男は手にしたナイフを腰だめにして、あたしに突進してきた――やられる!――そう思った次の瞬間、体全体に鈍い衝撃を感じた。

 なんと、お姉ちゃんが、あたしを庇って前に飛び出した!

 ナイフは深々と、お姉ちゃんのお腹に突き刺さった。

 スローモーションを見ているようだった。ナイフが刺さったままお姉ちゃんは仰向けに倒れ、ナイフを失った犯人は、あっさりとガードマンの人たちに取り押さえられた。

「お姉ちゃん!」

――あたしの言うことを落ち着いて聞いて――

 お姉ちゃんの言葉は、直接心に聞こえてきた。
――あたしは未来からやってきたの。竹子を守るために――
「あたしを……」
――竹子の玄孫が、アンドロイド愛護法を作るの。それまで、ただの道具でしかなかったアンドロイドに人間に準ずる人権を認める法律よ。22世紀の『奴隷解放令』と言われるものよ。ところが、それを阻止しようという組織があって、それぞれの時代に刺客を放った――
「それが、今の男?」
――刺客と言っても、ランダムに未来から想念が送られてコントロールされているだけ。未来からやってきた者なら、あたしには分かる。想念だけだから、あいつがナイフを出すまで分からなかった……他の時代でも犯人は捕まったみたい――
「他の時代も……?」
――アンドロイド愛護法を作る人物は、四代前までのDNAで決定される。遡ると42人になるわ。でも、その人物の性格を決定的に影響を与えるDNAを持っているのは5人だけ。その5人に、あたしのようなガードが付いているの――
「お姉ちゃん、死んじゃやだ!」
――アンドロイドは、死なないわ。でも……役割を終えたから、ここで消える。病院で検査されたら人間じゃない……ことがバレてしまうからね……――
 
 お姉ちゃんの反応が無くなってきた。

「お姉ちゃん!」

――いま、あたしに関する情報を消しまくってるの……ここにいる全員分も……消さなくっちゃね――

 握ったお姉ちゃんの手が、急にはかなくなって……そして、消えてしまった。

「君も、どこか怪我したのかい?」
 ガードマンのオジサンが声を掛けてくれた。
「あ……怖くって、動けないだけです」
「そう。でも気持ち悪くなったら声かけてね。救急車もすぐに来るから」
「はい、ありがとう……」

 けっきょく、あたしはショック状態ということで病院に運ばれた。ショックの原因は事件じゃない。みんなの記憶からお姉ちゃんは消えてしまったけど、あたしはインストールもできないかわりに、記憶も消えない。半年間だったけど、アンドロイドだったけど、松子お姉ちゃんは、しっかり、あたしの中でお姉ちゃんになっていた。

 このお姉ちゃんへの思いが、玄孫のDNAに影響を与えたのかもしれない。

 

※ 数年前に長編を書くためのプロットとして書いた短編の載録でした。

  明日から長編として再開いたします。ご愛読いただければ幸いです。応援ありがとうございます。

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あたしのあした・34『黒のローファー』

2020-06-26 06:06:52 | ノベル2

・34

『黒のローファー』      

 

 

 根拠が有ったわけじゃない。

 なんとかなるだろうと思っていただけ。

 
 ただ、マスコミへの対応を、みんながバラバラにやったら誘導されてしまってヤバイことになると思っていた。
 そして「あたしに任せろ!」と胸を叩いておけば、みんな安心するとも思った。
 毎朝テレビの女性レポーター姫野姫子に声を掛けられた時も、どう対応するかは考えていなかった。
 話しているうちに相手の意図をくみ取り、その意図を土台の所でひっくり返してやればいいと思いついたんだ。

 で、映像ではなくて、実際に補講の現場を見て判断させるのが一番だと思いついた。

 水野先生は実質的な謹慎処分にされている。
 あたしたちが、いくら騒いでも先生の謹慎が解けることは無い。どっちかって言うと逆効果だ。
 だから姫野のオネーサンを焚きつけて、補講が再開させれば開けてくる道もあるというものだ。

 あたしってば、いつの間に権謀術数の子になったんだろう……ほんのこの間までは、引きこもりの果てに死ぬことを考えていたのに。

「恵子、会ってもらいたい人がいるんだけど」
 昼休み、ネッチに声を掛けられた。
「うん、いいよ」
 相手がだれかも聞かずに返事する、ネッチの緊張が弛む。あたしに信頼されたことで気が楽になったんだ。
 意識はしていなかったけど、これは相手の心を掴むための手練手管なんだなあと思う。

 放課後連れていかれたのは、商店街にあるネッチのお店だ。

 商店街を西から入ると直ぐに爽やかなお茶の香りがする。
 ネッチの家である『創業安政六年 静岡茶 せきね屋』の看板が見えてきた。
「あら、いらっしゃいませ」
 ネッチのお母さんが、業務用半分親しみ半分の挨拶をしてくださる。
「こんにちは、茶々さんのクラスメートで田中恵子と申します……」
 頭の中では「この度は、学校のことでいろいろと……」などと長ったらしい挨拶が浮かんでいたが、らしく見えないと、高校生らしいところで区切った。
「お母さん、もうみえてる?」
「ええ、お座敷の方でお待ちしていただいているわ」
「じゃ、いこっか」
 暖簾をくぐって案内されると、坪庭を隔てた別棟の関根家の住居部分。

 玄関に入ると、それだけで真面目な人柄が偲ばれる黒のローファーが目に入った。

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プレリュード・11《ちょっと嬉しい春一番……》

2020-06-26 05:56:25 | 小説3

リュード・11
《ちょっと嬉しい春一番……》    



 

 うちの親は点と線。分かるかなあ……?

 一か月ちょっとしたら大学生。だから、それまでの人生にめったにない自由な時間を有意義に楽しむ。その記録が『奈菜のプレリュード』。大それた目的があるわけではない。何年かたって、この時期を振り返って、生きていく力……ちょっと大げさ。ヨイショぐらいになったらいいと、一日おきにパソコン叩いてます。

 今日は、うちの親が点と線という話。

 学部の選択、推薦入試、学費に通学経路などは真剣に考えてくれた。学部は将来の就職とあたしの特性を考えて心理学部。これからの四年間を思うと身が引き締まります。
 推薦入試は、高校三年の一年間を受験一色にしないように……これに応えられたかは自信が無い。演劇部のゴタゴタが、今思うともったいない半年だった。
 通学経路は、梅田を通るルートを勧められた。梅田は、大阪一番の繁華街。自然と寄り道もする。その寄り道の中から娘が何事か学ぶだろうという配慮。まあ、バイトも見つけやすいし、少しは自分で稼ぐだろうという気持ちも透けて感じられる。まあ、行き届いた親だけど、一つ抜けてた。

「奈菜、これ着て大学行き」

 お母さんが、恩着せがましく差し出した箱の中身はリクルートスーツ。
「これ、入学式用?」
「普段の通学にも使うたらええやろ」
「あのね、入学式用としては嬉しいよ。だけど、こんなん毎日着て学校なんか行かれへんわ」
「なんでえ。お母さんずっと制服やったよ」
「お母さんは、短大でスーツの制服やったからでしょ。うちのO大学は私服やのん」
 そう言って、スカスカのクローゼットを開けた。
 高校は、制服だから、私服は、それぞれの季節に二着ぐらいしかない。あんまり少ないので、季節ごとの入れ替えの必要もないくらい。

「なるほどね……」

 クローゼットの中身をみて納得の様子。大学生活の大事な点と線は押えてるみたいだけど、日常という面を考えていない。
 それで、お母さんから二万円もらって駅二つ向こうのショッピングセンターへ。
 お母さんは、昨日の新聞広告持ってきて「春一番大バーゲン」を指し示した。で、二万円で、とりあえず必要なもんを揃えなさいというご託宣。

 あたしは、改めてショッピングセンターのバーゲンをググった。共に1980円のスプリングジャケットと、重ね着風のレイヤードチュニックワンピを発見。これと手持ちのGパンを組み合わせたら、とりあえず手持ちのチュニックと合わせて夏まではもたせられる。
 バーゲン二日目なので、ちょっと心配だったけど、朝一番から並んで、目出度くゲット。SとかXOとかの特殊なサイズはなくなってたけど、標準のMサイズは、結構残ってた。
 BCDマートで、1980円のパンプスも発見。一万を超えない金額で上から下までゲット。

「やあ、奈菜やんか!」

 レジ済ましてエスカレーター乗ってたら、クラスの美津子に出会う。いや、買い物袋のハンガーと化した買い物モンスター!
「いや、あれこれ見てたら、ついね」
 コーヒーショップに入って、美津子は、あたしの五倍はあろうかと言うほどの服と靴を見せてくれる。
「うん、こういう買い方もありだと思うけど……」
「なにか?」
「美津子、あんた在学中に制服買いなおしたでしょ?」
「え……知ってたん?」
「あんた、現在進行形のデブ。ちょっと気をつけないと、来年は着られなくなるよ」
「そうか……分かった。これが来年も着られるように、ダイエットに励んだらええねん。ものは考えよう、シブチン転じて福となす!」
 で、美津子はダイエット本を探しに本屋さんへ。どのくらい効果があるか分からないけど、美津子の明るさと前向きな姿は好き。

 わたしは、中古ゲーム屋で『アナ雪・2』の中古を1980円でゲット。なんかイチキュッパ女になったみたい。

 今時周回遅れの『アナ雪』を買うのにはワケ有。それは、またいずれ……。

               奈菜……♡ 

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