小説学校時代 22
就学前登校? 入学前登校?
どちらか忘れましたが、中学入学前、春一番が吹くころに中学校に行ってテストを受けました。
国数英の三教科だったと思います。
入学式もまだだというのに、男子は学生服、女子はセーラー服であったように記憶しています。
何の屈託もなく受けたテストですが、あれは、入学後のクラス分けのために行われたものです。
高校ならば入試の成績でクラス編成をしますが、公立の中学に入試はありません。そのために学力を正確につかんで、均等にクラス編成をするために実施するテストです。
大方の子が、初めて中学の校舎に入ります。
その初めての中学校の印象に触れたいと思います。
中学は小学校に比べると、ニオイがしません。
小学校は尋常小学校時代からの木造校舎でしたので油の匂いがします。
廊下も教室も板張りでしたので、年に二三回ほど油引きをします。
小学校と言うと、この匂いです。
大阪は戦災で焼けていますが、小学校は意外に焼け残っていました。その焼け残りの大半が木造校舎なので、どこの小学校に行っても同じ匂いがしました。
校舎の一部、便所に近いところは汲み取り便所特有の香しいニオイが混じります。普通の家もほとんどが汲み取りで、映画館も同様で、まあ、人間が住むところは、おおむね便所のニオイがしました。
中学では、その便所のニオイがしません。
休憩時間中にトイレに行きましたが、水洗トイレなので小学校の便所とは異質のニオイです。
このニオイの違いで、中学生になるんだと自覚しました。
窓枠が違いました。
中学の校舎の窓は鉄製なのです。鉄製の割にはガタついていましたが。
鉄製の窓枠と言うのは、なんとも上等な感じがしたものです。窓辺に寄ると鉄のニオイがしました。
机は小学校と同じ木製でしたが、小学校のようにニコイチの二人掛けではなく、一人掛けであったように記憶しています。
教室にガス管が入っているのにも驚きました。
小学校は石炭ストーブでしたので、ガス管はありません。
そうです、中学はガス暖房だったのです。新鮮でしたね。
ニオイとか、感覚的なところから中学を感じたという思い出でした。