大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

小説学校時代 22『小学校のニオイ 中学校のニオイ』

2020-06-23 08:11:44 | エッセー

 22 

『小学校のニオイ 中学校のニオイ』  

 

 

 就学前登校? 入学前登校?

 

 どちらか忘れましたが、中学入学前、春一番が吹くころに中学校に行ってテストを受けました。

 国数英の三教科だったと思います。

 入学式もまだだというのに、男子は学生服、女子はセーラー服であったように記憶しています。

 何の屈託もなく受けたテストですが、あれは、入学後のクラス分けのために行われたものです。

 高校ならば入試の成績でクラス編成をしますが、公立の中学に入試はありません。そのために学力を正確につかんで、均等にクラス編成をするために実施するテストです。

 

 大方の子が、初めて中学の校舎に入ります。

 その初めての中学校の印象に触れたいと思います。

 

 中学は小学校に比べると、ニオイがしません。

 小学校は尋常小学校時代からの木造校舎でしたので油の匂いがします。

 廊下も教室も板張りでしたので、年に二三回ほど油引きをします。

 小学校と言うと、この匂いです。

 大阪は戦災で焼けていますが、小学校は意外に焼け残っていました。その焼け残りの大半が木造校舎なので、どこの小学校に行っても同じ匂いがしました。

 校舎の一部、便所に近いところは汲み取り便所特有の香しいニオイが混じります。普通の家もほとんどが汲み取りで、映画館も同様で、まあ、人間が住むところは、おおむね便所のニオイがしました。

 中学では、その便所のニオイがしません。

 休憩時間中にトイレに行きましたが、水洗トイレなので小学校の便所とは異質のニオイです。

 このニオイの違いで、中学生になるんだと自覚しました。

 

 窓枠が違いました。

 

 中学の校舎の窓は鉄製なのです。鉄製の割にはガタついていましたが。

 鉄製の窓枠と言うのは、なんとも上等な感じがしたものです。窓辺に寄ると鉄のニオイがしました。

 机は小学校と同じ木製でしたが、小学校のようにニコイチの二人掛けではなく、一人掛けであったように記憶しています。

 教室にガス管が入っているのにも驚きました。

 小学校は石炭ストーブでしたので、ガス管はありません。

 そうです、中学はガス暖房だったのです。新鮮でしたね。

 

 ニオイとか、感覚的なところから中学を感じたという思い出でした。

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ライトノベルベスト・[お姉ちゃんは未来人・1]

2020-06-23 06:14:26 | ボクの妹

ライトノベルベスト
[おちゃんは来人・1]    


 

 

 文化祭も五回目になると飽きる。

 と言って、あたしは落第を重ねた高校五年生というわけではない。
 中学から数えて五回目。面白かったのは中一の時と高一の時。初めてだったから新鮮だった。厳密に言うと高一の時は昼で飽きた。中学校は、学年で合唱とお芝居だけ。そのどっちか。どっちも学芸会のレベルでつまらない。
 高校は、もっといろいろ面白いことがあるんだろう! と期待した。

 クラブとかの出し物や模擬店は新鮮で、それなりのレベルはあるんだけど、軽音にしろダンス部にしろ、身内だけで盛り上がって、あたしら外野はなんだか馴染めない。ネットで面白い文化祭を観すぎたせいかもしれないけどね。
 クラスの取り組みは、占いとうどん屋さんのセット。うどんは100円でミニカップ一個。原価はカップ込みで25円のボッタクリ。占いはタロットと手相の二つで、どっちも100円。担当は、この春に廃部になった演劇部のマコとヨッコ。一週間のアンチョコで、ハウツー本を読んだだけのインチキ。だいたいテストに実験台にされたとき、こんなことを言う。

「う~ん、あなたは珍しい!」
「どんなふうに?」
「生命線がない!」
「え……?」
「本当は、生まれてすぐに亡くなる運命……」
「違うよ、生まれてこない運勢」
「だったっけ……あら、ほんとだ(^_^;)」
「で、どーなのよ?」
「なにか、特別な使命を帯びてこの世に生まれた。その兆候は十六歳で開花する」
「あの……あたし、まだ何にも開花してないんだけど」
「え、そう?」
「芸能プロにスカウトされたとか、宝くじにあたったとか?」
「あたし、もう十七歳なんだけど……」

 ま、こんな調子。

 言っとくけど、あたしには生命線はあった……うっすらだけど。それが去年の冬ぐらいから消えてきた。ちょっと気になったので、ウェブで調べた。すると、二つのことが分かった。

①:生命線が無い、または薄い者はいる。だが他の線により補完されていて、特に問題は無い。
②:手相は、年齢や体調によって変化する。

 で、マコとヨッコが使っているハウツー本は全然違うことが書いてある。ようはいい加減ということだ。僅かに褒められるのは、元演劇部らしく小道具としての本には凝っていて、わざわざ神田の古本屋まで行って買ってきた、古色蒼然とした本だったこと。しかし、奥付の発行年を見ると昭和21年発行の雑誌の付録になっていた。終戦直後の何を出しても売れる時代の粗悪品。先生は「カストリものだな」と言っていた。ちなみにカストリとは三合(三号にかけてる)で潰れる粗悪な酒という意味。

 ま、適当に当番の時間をお勤めして、あとはテキトーに時間を潰して、終礼が終わったらさっさと帰った。まあどこにでもいる少ししらけ気味の高校二年生。あ、名前は蟹江竹子……ちょっと古風。亡くなったひい祖母ちゃんが竹のようにスクスクと育つようにと付けてくれた。愛称はタケとかタケちゃん。ま、普通。

「I,m home!」

 ちょっと気取って玄関を開ける。
「ああ、腹減った!」
 言いながらパンかごから、クロワッサンを出してぱくつく。
「もう、行儀の悪い!」
 お母さんがいつものように小言。
「はーい」と返事して、食べてから手を洗う。クロワッサンの油やパンくずが手について気持ち悪いから。

「ただいまー!」

 お姉ちゃんが元気に帰ってきた。「お帰り」と、あたしの時とは違う優しい声でお母さん。お姉ちゃんは優等の高校三年生だ。もう一時間もすればお父さんが帰ってきて、ごく普通の親子の夕食になる。

 普通でないのは、お姉ちゃんは未来人で、本来はうちの子ではないこと。そして、そのことは、あたししか知らないことなんだよ。

 びっくりした? 

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あたしのあした・31『平泳ぎのフォーム』

2020-06-23 05:56:32 | ノベル2

・31
『平泳ぎのフォーム』
      


 皮肉なことに早乙女女学院は飯館女子に惜敗してしまった。

 だから、あくる日の本選に早乙女女学院は出場できなかった。
 あたしたちは、はるばる滋賀県までやってきて、インターチェンジのテレビで予選の中継を観ただけで終わった。
「これなら学校の視聴覚室で観てるのとかわりないよ!」
 ぼやくことしきりだったが、早乙女の人たちに「ありがとうございました!」と揃ってお礼を言われると、十三人の補講女子たちはウルっときてしまい。やっぱ来た甲斐はあったとしみじみと感じた。

「人の為ならがんばれるのになあ」

 二十五メートルプールの真ん中で足を着いたベッキーがぼやいた。
 続いていたミャー、ノンコ、キララの三人も挫折する。
「こら、真面目に泳がんか!」
 プールサイドで水野先生が怒鳴る。室内プールとはいえ、メガホンも持たずに通る声にには脱帽だけど、もう怒られ慣れているので、ヤッコラセ~という感じでしか再開できない。
「チンタラやってんじゃねー!」
「「「「は~~~~~い」」」」
 かったる~い返事に、泳ぎ終わってプールサイドでヘバっているあたしたちは思わずクスクスと笑ってしまう。
「コラー!! 別役!!」
 再び足を着いたベッキーに雷が落ちる。

 キャ!

 プールの向こう側で悲鳴があがった。
 まっとうに練習をしていた早乙女水泳部の子たちがビックリしてしまった。
 早乙女女学院には、水野先生のような大声の先生はいないのだろう。
「お前らはなー、フォームがなってないんだよ。体力がないこともあるけど、フォームだ! 別役、こっち来い!」
 ベッキーは、小さなため息一つして前に出てプールサイドで腹這いになった。
「いいか、平泳ぎは足のキックが大事なんだ、お前らの足では推進力にならない。いいか、こうやって……」
 水野先生はベッキーの足を掴んで、平泳ぎのキックの形に動かした。たしかに先生が動かすと速く泳げているように見える。
「ほれ、自分で動かしてみろ」
 数回繰り返した後、先生は手を放した。ベッキーはヤッコラセと足を動かす。
「ちがうだろ、蹴るんだよ。こことここに神経集中!」
 ベッキーは太ももとお尻を叩かれる。ペシペシといい音がして心なしかフォームが良くなる。
「さ、今度は水の中でやるぞ。プールの縁に上半身俯せで腹から下だけ水に漬けろ」
 ノロノロと言われた通りにする。
「なんか、陸に上がりかけのムツゴロウみたいだね」
 ネッチが言うとみんなアハハと笑う。
「関根、余計なこと言うな」
 ネッチはペシリとお尻を叩かれる。いい音がしたので、またアハハと笑ってしまう。
 十五分ほどかけてみんなのフォームが直される。それから泳いでみると、半分ほどが上達……したような気がした。

 今日の水野先生は熱心だ。お母さんのお葬式を出したことで悟った……という噂があった。

 あたしは知っている。早乙女のダンス部の子たちが、あたしたちに助けられたことをSNSにアップしたのを、先生はこっそりと観ていた。
 で、あたしたちのことを少し見直したんだと思う。

 うちはパッとしない学校だけど、少しは見どころがあるんだ、少しはね。
 

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プレリュード・8《バレンタインとバンアレンタイ》

2020-06-23 05:46:49 | 小説3

・8
《バレンタインとバンアレンタイ》
        


 

「おはよう」と言っても返事が返ってこなかった。

 いつもなら「あ」とか「おお」ぐらいの兄妹としての最低の挨拶ぐらいは返ってくる。
 今朝の亮介は様子が変だ。

 あ……

 今日は、天下御免のチョコレートの日。セント・バレンタインデー……彼女からチョコをもらいそこねたか?
 そう思いつくのと、外で原チャの発車音がするのといっしょだった。

「あいつも、奈菜に負けんくらいのオッチョコチョイやなあ……」
 お父さんが、窓から去りゆくアニキを見ながらため息をついた。
「亮介、なにかやったん?」
「え、ああ、そこのパソコン見てみ」

 アニキの部屋は、ガレージを改造した一階の部屋。籠るのにはちょうどいいんいいだけど、うちはナンチャッテ三階建て。一階部分はコンクリートで出来ていて、電波の通りが悪い。で、パソコンの無線が通じにくいんで、パソコンだけは二階のリビングに置いてる。そのパソコンが不用心にも点けっぱなし。

――加藤くんの「バンアレンタイの心理学的考察」の着想は面白い。しかし、締め切りは守ろう。S大学 林道則――

「これって……?」
「ゼミのレポートの督促みたいやな」
「バンアレンタイの心理学的考察……?」
「これは、バレンタインの間違いやろな。バンアレン帯では心理学にも文学にはならんやろ」
「バンアレン帯て、なに、お父さん?」
「地球を取り巻く磁場のことや。宇宙ステーションの低高度と静止衛星の高高度の間にある」
「う、むずい」
「下敷きの下に棒磁石置いて上に鉄粉撒くと、N極S極の間にきれいな模様ができるやろ。あれが磁場。地球も大きな磁石で磁場がある。それがバンアレン帯や。これを文学的に考察……むつかしいやろな」
「で、亮介どこいったん?」
「図書館。ウィキペディアでは出てけえへんやろからな」

 オッチョコチョイは、うちの家系……とは思わんとってほしい。

 わたしは、今月に入ってから考えてた。チョコを渡すべきかどうか。
 わたしには、高校生活の終わりと同時に幕切れにしたない人間関係がある。チョコで迷うんやから当然男、せやけど、チョコを渡したら浮ついた、あるいは惚れた腫れたの関係になってしまう。で、うじうじ考えてるうちにバレンタインデー。
 みんなは、簡単にルビコン川を渡ってしまう。あたしは渡られへんかった。

 今からでも……いう気持ちもある。

 しかし、あたしはチョコを買いにいくことも作ることもしかった。亮介ほどのオッチョコチョイだったら……ちょっと後悔。
 スマホを手に取る。ちょっと考えてから、亮介のアホさをニュースとして送ってお茶を濁す。気弱さから、同じ内容のメールを直美にも送る。

 亮介は、いちおう大学生。閃いたのか単なる思い付きか、バンアレン帯とオーロラの関係から、世界のオーロラに関する歴史、心理、文学的な資料をいっぱいコピーして帰ってきた。

 わたしは、まだ気持ちを引きずったままです……。

                   奈菜……♡ 

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