大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ライトノベルベスト[お姉ちゃんは未来人・3]

2020-06-25 06:17:39 | ボクの妹

ライトノベルベスト
[おちゃんは未人・3]       



 松子が覆いかぶさってきた……!

 松子は、あたしのおでこに手をかざして、こう言った。
「やっぱ、ダウンロードはされてるけど、インストールされてない……どうも特殊な体質のようね」
「で……あんた、なんなのよ!?」
「シー、世間で、あたしのこと松子だと思ってないのは、あんただけだから、騒いだら、おかしいのは竹子になっちゃうわよ」

 あたしは、それまでの状況からその通りだと思って、ビビりながら頷いた。

「あたしは、150年ほど未来からやってきたの。事情は、あたしの記憶もブロックされているからよく分からない。でも必要があってのことよ。けして悪いことをするためじゃないから、安心して。そして協力するの」
「記憶が無いのに、どうして悪いことじゃないって、言いきれるのよ?」
「さあ……でも、本人が言うんだから、そうじゃない?」

 それが、半年前の始業式。

 それから松子はお姉ちゃんとして、ごく自然に家にも世間でも通用してしまった。

 じっさい悪いことは何もなかった。ただ普通の蟹江家としての半年が過ぎた。
「松子、こんなのが来てたよ」
 夕食が終わった後、お母さんが、お姉ちゃんに封筒を渡した。封筒の下のロゴがAKR48になっていることを目ざとく発見。ちょっと胸がときめく。
「やったあ、AKRのライブのペアチケットが当たった!」
「え、ペアチケット!?」
 家族全員の視線が集まった。うちは家族全員がAKRのファンだ。
「お姉ちゃん、彼とかといっしょに行くんでしょ?」
 妬みと願望を隠し切れない声で、あたしは尋ねた。
「来週の金曜の夜……」
 お姉ちゃんは、壁のカレンダーを見に行った。我が家は、でかいカレンダーにそれぞれの予定を書いておく習わしがある。お母さんが食事の段取りなどに狂いが出ないようにと、子どものころからの習慣。
「あ……これは竹子で決まりだ。来週の金曜、お母さんたち結婚記念日でお出かけだよ」
「あ、そうだった。ホテルのフレンチ予約してあるんだった」

 というわけで、お姉ちゃんと武道館に行くことになった。

 二人とも学校が終わると真っ直ぐ家に帰って、私服に着替え、駅前のマックで燃料補給して、開場時間ピッタリに間に合った。マコとヨッコが偶然いっしょだったのにはびっくり。会場に入ってから、さらにビックリ。あたしたちの席は、真ん中の前から三列目。マコとヨッコは、ずっと後ろ。ちょっと優越感。
 オシメンの萌絵や、ヤエちゃんなんかが至近距離で見られて大興奮! 楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。卒業した大石クララが特別ゲストで出てきたときなんか、もう失神しそう。クララの横には週刊誌のネタ通りの男性ボーカリストが付いていて評判だった交際を発表。会場は興奮のルツボ。
「おめでとう!」
 汗みずくで駆け寄る萌絵ちゃんの汗が飛んできて、お姉ちゃんのハンカチに付いた。
「ラッキー!」
 とお姉ちゃんは喜んだ。

 そのあとは、お決まりの握手会。オシメンの萌絵ちゃんかヤエちゃんかで悩んだけど、結局ヤエちゃんにした。なんでかっていうと、ヤエちゃんには卒業の噂がたっていて、ひょっとしたら……と思った。今日クララさんが来たのなんて、その伏線みたいに思えたから。

 でも、これが悲劇の選択だった……。

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あたしのあした・33『毎朝テレビの者なんですけど』

2020-06-25 06:09:58 | ノベル2

・33
『毎朝テレビの者なんですけど』
      

 

 学校を出て最初の角を曲がったところで声を掛けられた。

「ちょっといいかしら、毎朝テレビの者なんですけど」

「はい? なんでしょうか?」
 クエスチョンマークを二つも付けてトボケてはみたけど、水野先生のことだと直ぐに分かった。
「田中恵子さんですね?」
 人定質問をするとマイクを突き付けられた。
「水泳の補講でのセクハラについて聞きたいんですけど」
 本題に入ったところで囲まれてしまった。前にレポーター、左にカメラ、右に音声、後ろは駐車場のフェンスだ。
「水野先生に触られた時は、どんな感じでしたか?」
 セクハラ確定の物言いだ。
「もう何人にも聞いたんですね」
「ええ、いろいろ話してもらえました」
 どんな内容だとかは言わないけれど、眉のひそめ方でセクハラ被害に遭ったことを暗示して答えを誘導する聞き方だ。
「誘導にはひっかかりません。みんなには、あたし一人に一本化するように言ってあります。この件についてはなにも聞き出せていないと思いますが」
 あたしは自分の立位置をはっきりさせておいた。リスクはあるけど、みんなと先生を守るためだ。
「ええ、たしかに他の人たちは答えてもらえません。だから、田中さんに……」
「ここで何を言っても、そちらが結論を持っていたんじゃ意味がないと考えます」
 マスコミの扱いは毎朝新聞と毎朝テレビがいちばん厳しい扱いだった。
「予断とか結論とかは持ってないですよ、みなさんから教えていただいたことをもとにやってますから」
 その教えていただいたことは毎朝テレビが誘導して編集したものだけなんですけど。このことを言い出すと水掛け論になってしまって、争っているところだけを放送されて、いいように使われてしまう。

 あたしはカメラに向かって提案した。

「どうでしょう、あたしたちの補講をみなさんの目で見てもらって判断してもらえないでしょうか。話を聞いたりSNSの動画やコメントだけでは分からないと思うんですが」
「そいうのもあるかもしれないけど、まずは……」
 自分たちの間尺に合わないものは簡単にスルーしようとする。
「いいアイデアでしょう……でも問題があるんです。水野先生が身動き取れないということなんです」
「先生は体調不良でお休みになってらっしゃいますもんね」
 白々しいことを言う。
 だけど、学校がそうさせているんだなどと言うとぶち壊しになる。
「補講が再開できるということになれば、先生は、きっと元気になられます。ぜひ、毎朝テレビやみなさんから働きかけてください!」

 この提案はスタジオの方でも面白がられたようで、レポーターも、それ以上は突っ込んではこなかった。

 インタビューが終わってからレポーターさんに名刺をもらった。性格には似合わず姫野姫子というかわいらしい名前だった。
 メアドなんかも交換して機嫌よく別れたけれど、あたしは思った。

 もうひと押ししておかないと流れを変えることはできない。あたしの提案以外に、もう一つダメ押しがいる……。
 

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プレリュード・10《今日は名前について考えた……ぞ!》

2020-06-25 06:03:10 | 小説3

リュード・10
《今日は名前について考えた……ぞ!》   



 大阪の教育長がパワハラ認定された。

 わたしは、新聞はあんまり読まないけど、この人が教育長になったことは新聞で知った。
 U学院の入学式の日に教育長になった人だから、よく覚えてる。
 行動力があって小回りが利きそうな人だけど、第一印象は「嫌なやつ」。思い込みが強そうで、なんでも自分が一番。一番と違っても、そう人を言いくるめてしまいそうな強引さを感じて、あたしはいい印象を持たなかった。なんせ名前が、小学校の時に憧れてた先生と同姓同名だから、それだけで嫌だった。

 女の子の好き嫌いて、こんなものなんだけどね。

 感覚的に一回いやだと思ったら、なにをやっても嫌!
 で、今回は、それがドンピシャだったわけ。

 名前というと、大阪都構想。

 難しいことはよく分からない。だけど、街の境目やら名前をガラッと変えてしまうことは感覚的にイヤ。
 堺の市長さんが反対しておられた。いろいろ理由は言っておられるけど「堺市は堺市です」この一言がしっくりとくる。

 例えば、阪神タイガース。

 日本で、これだけ負けてボロカスに言われても愛される球団はない。「阪神」いう名前があるから、ボロカスに言われても愛される。これがJR西日本タイガースとか、ソフトバンクタイガースでは締まらない。どこかの知事さんやら市長さんの発想で、大阪タイガースにしてもだめ。ドーンと広く関西タイガースでも似合わない。

 むかし、近鉄バッファローズいう球団があった。オーナーは名前の通り近鉄。

 近鉄の駅中の立ち食いうどんの店のメニューに『バッファローうどん』いうのがあったらしい。肉うどんをしゃれて『バッファローうどん』言ってるのは直ぐに分かる。
 それが不当表示いうことで、ただの『肉うどん』になってしまったらしい。らしいというのは、お父さんからの又聞きだから。
 だけど気分としてはメッチャ分かる。

 前フリが長い。

 本題はここから。

 今日は亮介の彼女が来る。興味津々(この四文字打つまでは興味深々だと思ってた)
 彼女が彼の家に来るというのは特別な意味があることぐらい、わたしでも分かる。あんまり興味津々なんで、親友の直美まで呼んだ。
 初訪問に相応しく、アニキが迎えに行ってお昼して、やってきたのは二時前。親友の直美は昼前から来て、あたしといっしょに昼ご飯の焼きそばを作った。

 今日は、仕事のシフトの関係でお父さんが家にいる。もちろんお母さんも。

 この意味分かる?

 つまり、彼女を特別な存在として、うちの家族に認知させるために決まってる。
 お茶を運びに行って、しっかりチラ見してきた。三階の部屋から来るとこをスマホで撮ったけど、間近で見ると印象がオーラになって感じられる。ブルゾン脱いだ下は、エンジと薄い水色のセーターに思い切ったブルーのスカート。こんな際どい色使いが似あう人はめったにいない。全体から受けるイメージはアナ雪のアナ。ちょっと吊り目だけど瞳が大きいのでメッチャ可愛い!
 髪の毛は三つ編みじゃないけど、きりっとポニーテール。顎と耳の延長線上に結び目を持ってくるとこなんか、心憎いほどさりげないオシャレ。ポニーテールいうのは顔の造作からうなじまで全部見えてしまう。よっぽどの自信……それもミテクレと違って、内面に自信がないとできない。

 名前が「ゆうこ」さんやいうことは分かった。まだ苗字も名前の字も分からない。意外とお父さんと話が合ってる。

「大阪都構想、基本的には賛成です」
「二重行政の解消?」
「むつかしいことはわかりませんけど、一緒になって名前変わってもやっていこいう心意気が好きです」
「なるほど」

「奈菜、あんたとは合わんなあ」と、直美。
「直美は考えが浅い。あれは、さりげない間接話法だよ」と、わたし。

 ここまで読んだ、あなたには分かります?

                 奈菜……♡

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