大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・236『孫悟嬢の忠告』

2021-10-01 13:22:53 | 小説

魔法少女マヂカ・236

『孫悟嬢の忠告語り手:マヂカ  

 

 

 お、おまえは……!?

 

 人垣の中から現れたそいつは、見かけこそ女学校の生徒だけど、発しているオーラは中国、いや大陸一番の怪物だ。

 孫悟嬢。

「いまはヨーロッパにいるはず……」

「なに、言ってるの、マヂカこそ、ヨーロッパとモスクワの間を行ったり来たりでしょ」

「それは……」

 そうなのだ。関東大震災のころは、第一次大戦の事後処理のために東奔西走していて、昭和になるまで日本の土は踏んでいない。

 そして、目の前の孫悟嬢も同様で中国には戻ってきていないはずだ。

「革命を阻止するためにはヨーロッパでの活動も重要だけど、足もとも固めなくちゃね。流れに棹差すのは魔法少女かもしれない。でも、魔法少女が竿をさせるのは流れがあるからこそ、流れは水があってこそ生まれるものでしょ、水を涸れさせないためにこの夏は大連に来ているのよ」

「今度の武闘会には出るのか?」

「出ないわ、だって、わたしは主催者……陰のだけど」

「ねえさん、こいつらは?」

 剣旋嬢が怖れと興味の入り混じった目で孫悟嬢に顔を向けた。

「武闘会参加者の後援者でしょ?」

「ああ、下見を兼ねて登録の手続きにね」

「そっちの金髪のは?」

「メルケルと似たような立場……たしか、ブリンダ?」

「そうだ、オレはお前に会うのは初めてだけどな」

「おお、オレ少女!?」

「これが普通だ、生まれはカンザスだが、育ちはテキサスだからな」

「こいつらじゃないいんですか、ねえさん?」

「ちがう、あいつは化け物だけど、今度は実名で出てくるはずだ」

「なにか、ヤバイのが邪魔しにくるのか?」

「邪魔だけど、試合には堂々と正面からつぶしに来ると思う」

「だれ、そいつは?」

「お、闘志が湧いてきたかい、マヂカ?」

「邪魔する奴なら、排除する」

「そうか、なら、それなら仲間だ。わかったか二人とも」

「ねえさんが、そう言うなら」

「わたしが言うからじゃない、それくらいは分かるようになれ」

「う、うん」

「メルケルは」

「ヤー」

「ヤなのか!?」

 ブリンダが尖がる。

「すまない、こいつはドイツ語で返事したんだ。な?」

「ヤー」

「その化け物というのは、どういう奴なんだ?」

「ラスプーチン」

「「ラスプーチン!?」」

「ま、おまえらも気を付けてくれ。それから、試合には間がある、よかったら爾霊山(にれいさん)に寄ってみてくれ、見晴らしのいい山だからね」

「爾霊山か……」

「じゃ、わたしは行く。奴は試合は真名で出てくるはずだけど、それまでは何に化けて悪さをするかもしれない。注意してくれ」

「わかった」

 ワアーー!

 歓声が起こった。目を向けると火噴き男の火炎がゴリラの毛に燃え移って煙が立っている。

 ゴリラも火噴き男も、微笑ましいほどに狼狽えて、公園のみんなが笑っている。

 振り返ると、孫悟嬢と弟子の姿も消えていた。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • 孫悟嬢       中国一の魔法少女

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ライトノベルベスト・『夏のおわり・6』

2021-10-01 06:09:37 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

のおわり・6』  

 

 

 日本人なら90%は知っているテーマ曲が流れて、それは始まってしまった

「えー、今日は、いまコジャレたオネエで売り出し中のコイトさんと、今週から急速売り出し中の女子高生の吉田夏子さんです」
「あ、タダの夏です(^_^;)」
「あら、心配しなくても、事務所がついてるから、ちゃんとギャラ出るわよ」
「アハハハ」

 さっそくかみ合わない二人の話にコイトが大笑い、スタッフまで笑って、マイクで拾われて増幅する。

「ああ、そうなんだ。ごめんなさい。そそっかしくて。じゃ、ナッチャンだ」
「それ、OKです。なんか、もうあちこちで夏の終わりって言うじゃないですか。あたし成績悪くって、もう自分が終わるって言われてるみたいで」
「ハハ、でも、お名前が夏だから、毎年思わない?」
「あ、冷やかされたことはありますけど、こんなに感じたの初めてです」
「で、新学期早々、電車の中でついてなくて、コイトちゃんと出会っちゃったって?」
「ああ、もう、それ何遍話してもおっかしくって!」
 コイトが拾って
出会いの話をする。もう四回目ぐらいなんで、持ちネタみたくなってて、所々デフォルメしてきた。
「……で、『ナニすんのよ!』って言ったら『ナニすんの!』って。もう、こんな女子高生みたことない」
「ハハ、まるでテレビの演出みたいね」
「あ、ちょっと誤解です。コイトさんが、トイレまで付いてきて、で、個室入るの確認しちゃって」
「ハハ、確認しちゃうんだ。でも、どうして、その、ナニの方だって分かるわけ?」
「そりゃあ、徹子さん……」
「コイト……さん!」
「で、ナッチャン。お婆ちゃんが、こだわりのある人なんですって?」
「ってか、面白い人なんです。だいたい、あたしに『夏』って名前つけたの、お婆ちゃんですし」
「なんか、こだわりがあって?」
「単に、夏が好きだから。むかし、学校の先生って、夏休みはお休みだったでしょ?」
「え、それで、”夏”!?」
 と、驚いたのがコイトで、お腹よじって笑ってたのが徹子さん。

 で、お婆ちゃんの話で、もりあがっちゃった。

「へえ、お婆ちゃん、先生やってたくせに、勉強こだわらないんだ!」
「うちの担任の先生なんか直の後輩なんで誉めるんですけど、お婆ちゃん、高校四年行ってるんです」
「え、お身体悪くなさったとか?」
「じゃなくって、勉強しなかったから。で、同様に大学五年、ニート三年」
「わあ、すごいんだ!」
「先生になったとき、東京大学出て先生やってた人がいるんです」
「ああ、二学期になって隣の先生が同級生だって気づいた!?」
「あは、そんな人いるんだ。それで!?」
「その先生は、都立乃木坂から東大。『あたしは、南麻布から御手鞠って三流大学。で、結果、就職したのは同じ都立高校だよ』って、本人の前で平気で言っちゃうんです!」
「この孫にして、お婆ちゃん有りね!」

 コイトが、エールだかチャチャだか分かんないのを入れる。

「へえ、お婆ちゃんて、言葉にこだわるのね?」
「はい、いまだに『看護婦、婦人警官』って言います」
「今は、看護師に、女性警官よね」
「婦って、女偏に箒だっていわれてますけど、実際は神さまの祭具だった帚なんです。竹冠ないでしょ。で、婦って字には、明治このかた、言葉に秘められた女の尊厳があるんだそうです。婦人解放運動とか、婦人参政権とか。第一、婦のチャンピオンである主婦は、変わってないでしょ。これは、あたしも思うんです。病院いっても看護婦さんて呼ぶ人いっぱいいます。お母さんは字を書く仕事なんですけど、看護師じゃ性別分かんない。女性看護師って書くと、言葉として不細工だって」
「ナッチャン、あなたって劣等生じゃないわよ。そういう感性大事だし、それを自然に持ってるって、とってもいいことだと思う」
「うん、あたしもさ。出会いの時、電車の窓枠に手ついたじゃない。あれを『守ってくれようとしてる』って感じてくれたこと、時間がたつにしたがって、とっても自然な誉め言葉だと思っちゃったもん」

 この『徹子の小部屋』のあと、単独の仕事も増えてきた……そう、秋の終わり頃には、ラジオやテレビに出ることを、ごく自然に「仕事」だと思えるようになってきた。

 でも秋のその頃までは、ちょっと変わった女子高生タレントで、タレントとしては喋ることしかできない。
 仁和明宏さんとの対談で、こう言われた。
「ノンベンダラリと居る世界じゃないわよ。もし『仕事』だと思ったら、この世界一通り回ってみることね。そうだ、AKRなんか良いんじゃない。わたし、ここから秋本君に電話してあげる!」

 で、AKRのドラフトで入って、年の変わる頃には歌とダンスに絞られながら、ラジオやテレビで喋りまくっていた。

 すみません、渋谷先生。

 夏は終わりましたけど、新しい夏が始まってしまいました……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする