大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・240『その前日 表忠塔の丘』

2021-10-22 14:25:42 | 小説

魔法少女マヂカ・240

『その前日 表忠塔の丘語り手:マヂカ  

 

 

 試合までの二日は、ラスプーチンと、その眷属の捜索にあてた。

 

 しかし、正直に捜索と言ってしまっては霧子に影響が出る。

 霧子は生身の人間だ。でも、その闘志と敵愾心は我々魔法少女と変わりがない。

 正直に捜索と言ってラスプーチンの眷属と出くわしてしまえば、どう暴発するか分からない。

 だいいち、この武闘会に出場するのは、優勝して戦艦長門に乗り込むためだ。長門に最大戦速で震災直後の東京湾に向かわせ、救助支援活動に参加させるためなのだ。

 放置しておけば、長門は、英国巡洋艦の追跡を受けて、全速を出せずに到着が遅れてしまうのだからな。

 

 旅順・大連は黄海に突き出た遼東半島の先っぽにある。指に例えれば爪の先のように細くなった半島の先端で、どこに行っても美しい海が見える。緑も豊かで、その海と緑に囲まれて、ロシア統治領の頃からの街並みや建物が並んでいる。

「なんだか、横浜と函館を足して、長崎と神戸で割ったぐらいに素敵な街ね!」

 ラスプーチンには慄いた霧子だが、そこは17歳の女子学習院、海と大陸の風光を満喫する少女になる。

 ピーーーーーー

「あ、あそこで焼き芋売ってるでぇ」

「さっき、天津甘栗食べたとこよ」

「焼き芋は別腹~」

「そっかそっか、ちょっと買って来る」

 すっかり観光旅行の女学生になったノンコと霧子が屋台の焼き芋屋を目指す。

 いよいよ明日は武闘会。その前日の午後、我々は表忠塔の前に来ている。

 爾霊山の忠魂碑とは別に、二万余の戦死者の為に乃木さんと東郷さんが共同で建てた慰霊碑だ。66メートルのロウソクのような形をしており、内部に遺骨が祀られている。

 旅順港を真下に見下ろす景勝の地でもあり、敗戦後は白玉山塔として観光地化するはずだ。

「見当たらなかったな……」

 旅順港を見下ろし、それがお仕舞のサインのように組んだ腕を解して、ブリンダが呟く。

「どこかに見落としが……」

「あると言うのか?」

「分からないけど、あれがラスプーチンのハッタリだったとも思えないからね」

「そうだな、武闘会の結果が出るまでは気を抜けないか……」

 そう言うと、解した腕をまた組んだ。

 ポーーーーーー

 新手の焼き芋屋の釜の音……かと思ったら大連駅の方から聞こえる汽笛だ。

「列車の本数が増えたな」

「いよいよ、明日だからね臨時列車だろ」

「ねえ、アジア号やで!」

 焼き芋の紙袋を抱えて戻ってきたノンコが嬉しそうに叫ぶ。

 さすがに、霧子ははしゃぐようなことはしないが、それでも振り返りながら、アジア号の姿を探している。

 実は、霧子とノンコが寝静まった夜中に大連駅も見に行っている。

 妖どもが乗客に紛れていれば、たとえ降りた後でも気配が残る。バルチック魔法少女が船に擬態していたこともあるので、列車そのものも調べたが、妖気は感じられない。

 ホテル、飲食店から露天に至るまでの食材の移送が増えてきているが、武闘会が間近なのだ、大連は消費都市なのだ、イレギュラーな催しもので食材が増えるのは当然だ。

 ただ、日本国内と違って、牛・豚・鳥などの食肉などが生きたまま移送されてくるのは、やはり大陸たる所以だろう。

 そういう食材を始めとする貨物も調べ上げ、引き上げる時も、妖気を検知する式神や使い魔も置いてきたが、反応は無い。

「やっぱり、アジア号の焼き芋はちゃうなあ」

「どうして、アジア号って分かるの?」

「このサイズ! アジア号的やと思わへん?」

「ああ、そういうことか」

「ノンコ、その芋は鹿児島から移送してきた日本産だと思うよ」

「おお、本場の焼き芋ですやんか!」

「日本人は舌が肥えてるからなあ、売る方も考えてるよ」

「あ、そう? お小遣いいっぱいやから、そんなん気にせんと買うてるわ(^▽^)/」

「そうよね、お祭り前の買い食いは手あたり次第って虎沢も言ってたわ」

「え、虎沢って誰?」

「クマさんのことだろうが」

「あ、そうや。箕作巡査と相思相愛やったねえ(n*´ω`*n)」

 そうだ、これが終わったら、あのカップルもなんとかしてやらなきゃなあ。

 つい、原宿のお屋敷に思いをはせていると、満州馬賊あがりかと思われるようなガタイのいい焼き芋屋が「おーい」と呼ばわりながら上がってきた。

「あ、焼き芋屋さん、どないしたん?」

「お釣り忘れてるよ! わたし、正直者の焼き芋屋、ちゃんとお釣り渡すね!」

「あ、ごめん」

「ありがとう」

「はい、1円でもらったから、45銭のお釣りね」

「正直に、ありがとう」

「ありがとうおっちゃん」

 正直に礼を言ってるが、一袋55銭の焼き芋、高くないか?

 思いが伝わったのか、焼き芋屋が寄って来る。

『おまえらの目、節穴か?』

 口も開けずに文句を言う……こいつ、孫悟嬢の手下か?

『ロシアの化け物どもは、食材に分割して入ってきている。バラバラだから、並みの妖気は出さないんだ』

「「そうなのか!?」」

 ブリンダと大きな声を出したので、ノンコと霧子も驚いている。

『食材は手足とかのパーツだ、今夜の便で妖のソウルがやってきて完成形になる。なってからじゃ遅いぞ』

「そうなのか」

『あまりに迂闊なので知らせてやった、どうするかは、お前たち次第。じゃ、な』

 そこまで伝えると満州訛で「毎度ありがとうございます!」と言って戻っていった。

 これは、武闘会が終わるまでは寝られないかもしれない……。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • 孫悟空嬢       中国一の魔法少女

 

 

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はるか・8『離婚から三か月 覚悟』

2021-10-22 05:57:32 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト はるか・8

『離婚から三ヵ月 覚悟』 





 目が覚めると結論、いや、覚悟が決まった。

「お母さん、明日から一泊で神戸に行ってくる。由香といっしょ。異人館とかじっくり回ってみたいの、賞金も入ったことだし。」

 わたしってば、順序が逆さま。アリバイと資金の問題は、まだ解決していない。

「そういや、前から神戸のガイドブックなんか見てたわね」

 伏線は、とっくの昔に張ってある。もっとも、ZOOMERに乗って一泊ツーリングするためのアリバイだった。

 遠くへは行けない、近場の大阪の温泉。大阪は安くて良い温泉がけっこうある。お母さんから一晩だけ離れてみたいという子供じみたタクラミ。ZOOMERは買ってしばらくは、由香に預かってもらうつもりだった。お母さんは、ゲンチャリが嫌いなんだ。ゲンチャリ=族と思っている。お兄さん=伯父さんがバイクで事故ってから、いっそう嫌いになった。

 その伯父さんがZOOMERの情報源。「花言葉」のファイルはゲンチャリとツーリングのことで一杯。わたしは、ゲンチャリとツーリングを企むことで、精一杯の反抗をしていただけなんだ。 

 卒業アルバムを見るような感覚でUSBをパソコンに接続「花言葉」のファイルを開いてみる。ランダムな書き込みや、貼り付けた資料、参照サイトのアドレスなどが自分でも驚くぐらい入っている。

「ラフレシア」というファイルが目に止まる。越してきたその日、やみくもに作ったファイル……開いてみる。おもちゃ箱というかゴミ箱というか……それは突然目に入ってきた。

「親に知られずに家出する方法」

 頭の中で記憶が解凍されていく。自転車のハルカを買ってきた日は、詩に書いたような状況じゃなかった……。

「わたしも神戸には関心があるの、はるかのガイドブックで触発されちゃった。ねえ、一週ずらして、わたしと三人で行かない?」
「え……」

 想定外だよ。

「明日からだと帰りが月曜になっちゃう。横浜と神戸を比較して一本書いてみたいの。ね、来週の土曜からにしようよ」
「だめだよ、来週は部活が始まってる」
「そうか残念。まあ、わたしがいっしょじゃ窮屈だろうしね」
「そんなこと……」
「あります。って顔に書いてある。そのかわり写真撮ってきてよ。旧居留地とか異人館とか、リスト作っとくからよろしく」

 取材費ということで五千円のカンパ。やばいよ……。

 と、いうわけで、由香を訪ねて黒門市場。

 

 アーケードの下にずっと魚屋さんが並んでる。お魚を焼くいい匂いが立ちこめていて、ご飯のすすみそうな街だ。

 由香の勧めで、フグ専門店の横の甘いもの屋さんに入った。

「そうか、そういう訳やったんか……まかしとき、親友の一大事。一肌脱ぐわ」

 夕立のような勢いで全てを話すと、雲間から出てきた日様のような笑顔で引き受けてくれた。

「まあ、泊まりは無理やけど、日帰りで行ってくるわ。どれどれ、これがリストか……」

 アリバイはこれでなんとか、取材費は四千円に値切った。わたしも大阪人らしくなってきた。


 資金は、「当たって砕けろ」でタキさんに泣きついた。

 映画館横のカフェテリアで一通りの説明……というより想いを吐き出した。由香に話すより十倍はエネルギーが要った。

「大人のことに首つっこむもんやない……」

 おっかない……これは失敗かとうつむいてしまった。

「うい……」

 タキさんが、アゴをしゃくった。
 気づくと、二つ折りにした映画のチラシ……そっと開いてみる。

「こんなには要りません……」
「どこで何あるか分からへん、持っていき……そのかわり」
「はい、お皿洗いでもなんでもやります!」
「そんなことやない……」

 タキさんはニヤニヤとわたしの体をねめまわした。

「な、なにを……(^_^;)」
「無事に帰ってくること。無茶はせんこと……それから、ケータイ出し」
「は、はい」
「なにかあったらこの人のとこに電話しい。オレからも電話しとくさかいに」

 と、アドレスを送ってくれた。

「この人は?」
「トモちゃんをオレのとこに紹介してきたやっちゃ」
「お母さんを?」
「共通の知人いうとこや、ちょっと伝法やけど頼りになるオバハンや。写真も送っとくわな」

 送られた写真は、モデルさんのようにきれいなオネエサンだった。

「この人が電報?」
「アホ、そのデンポウとちゃう」
「分かってますって、イナセで男気があるってことでしょ。わたしだって江戸っ子のはしくれなんですから」
「大人をなぶんのやない!」

 ポコン!

 パンフを丸めたので、頭をポコンとやられた。大橋先生のときと同じ音がした。

 それから乗る新幹線と泊まりのホテルを決めさせられた。手配はその場でタキさん自身がやった。ホテルの予約は、まるで身内の人に言ってるみたいでやや横柄。新幹線とホテルの情報を送ってもらって、やっと解放。

 天六の商店街に寄ってあのポロシャツを買って。よくぞ売れずに残っていてくれた(父へのプレゼントだというと、さらに二割引になった♪)それを高安駅のコインロッカーに放り込み、目玉オヤジ大権現を片手拝みにして家に帰った……。


『はるか 真田山学院高校演劇部物語・第15章』より

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