大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 42『茶席中継』

2021-10-31 10:50:27 | ノベル2

ら 信長転生記

42『茶席中継』  

 

 

 放送部と交渉しました!

 

 放課後の学食で『天ぷらきしめん大盛り』をトレーに載せてテーブルに着こうとしたら、腋に何やら挟んで、味噌カツ丼特盛を左手に、右手に箸を構えた格好で織部が隣に腰を下ろした。

 昼飯の味噌カツ丼を食べていたら、俺の姿を見つけたので、そのまま席を移してきたのだ。

 それまで居たテーブルにはトレーが載ったままで、通路には味噌カツの味噌やらご飯粒が落ちている。

 よっぽど、俺に伝えたいことがありそうなので「落ち着いて食え」と注意して、いっしょに昼飯にする。土曜の半日授業なので、しっかり昼飯を食べて、例の茶席の結果を待とうというわけだ。織部も同じで、学食に入ってきた俺を見つけて、慌てて寄ってきた。

 ツルツル

「で、なんで放送部なんだ?」

「茶席の中継です!」

 モグモグ

「ああ、生徒会長との?」

 ツルツル

「はい、例のアクセントの件で、同席は出来ませんから、カメラを仕込んで中継……、あ、きっと、もう始まってます」

 そう言うと、味噌ダレを頬っぺたにくっつけたまま、腋に挟んだタブレットをテーブルに置いた。

 

『……と言う次第なんだ、会長、よろしく頼む』

 信玄は頼みごとをしても、なんだか偉そうなのだが、少しも嫌味とか威圧感にはならない。

 大柄で、ちょっとふくよかな体形もあるんだろうが、持って生まれた押し出しなんだろう。

『ちょっと待ってください……』

 前置きすると今川生徒会長は、美しく茶を喫する。

 茶碗を持つ手も、白魚のような指先も、喫するにつれてコクコクと動く喉も顎も、どこをとっても学院一番の評判も高き美少女のそれだ。

「信長先輩もなかなかのものですよ(^_^;)」

「世辞はいい、今川は源家嫡流に繋がる家だ、やはり年月に磨かれた美しさは格別だなア」

「は、はい、いかにも」

 転生学院はロン毛の者が多いが、ヨシモトは姫カットがメチャクチャ似合って、そのまま大河ドラマの姫役が務まりそうだ。

『良いお服加減でした』

 お約束の茶席のあいさつなのだが、茶器のさばき方から目の伏せ方、観音菩薩のような微笑、どれをとっても、一級品だ。

『いやはや、ことの重さに、いささか急いてしまった。わたしも、まず一服……』

 信玄が茶碗に手を掛ける。美少女にしては、やや大きな手なのだが、包み込むような温かさとたくましさがある。

 並んで控えている謙信は、一服目を喫し終わって、この場の主役を信玄とヨシモトに譲っている。

 茶席の穏やかさから察すると、ここまでは謙信が主導していたんだろう、例のアクセントも問題になることなく、みなで、二服めの茶を喫するところのようだ。

『ご懸念のほどは承知しましたが、ことは学院の枠を超えているように思います』

『いかにも、三国志の侵入は、扶桑全体で受け止めなければならない懸念ではある……』

『しかし、信玄さん、大っぴらにしてはいたずらに不安をあおってしまいますよね』

『やはり、特別予算は……』

『むつかしいでしょう』

『そこをなんとか……同じ源氏の流れ、斟酌してはもらえないだろうか』

『…………』

『ヨシモト殿』

『いまも申した通り……と言っては、身も蓋もありませんね……ところで、仮に、偵察に出るとして、信玄さんや謙信さんは、どなたを派遣しようと?』

『それは、扶桑の一大事、率先垂範、わたしと謙信で……』

『それはいけません。お二人は転生学院の重鎮、お二人が偵察のため姿を消されては、学院に動揺が走ります』

『しかし、吉本どの……』

『アン……(//∇//)』

 ちょっと色っぽい声を出して眉根を寄せる会長。信玄はアクセントを間違えたのだ。

『これは申し訳ない(^_^;)』

『わ、分かりました。学園の会長とも相談して、早急に答えを出しましょう』

『吉本殿!』

『アン……(//∇//)』

『あ、すまん』

『あ、いえ、ですから信玄さん』

『だから、ヨシモト殿』

『アン(//∇//)』

『あ、いやすまんすまん(^_^;)』

『信玄、会長もご理解いただいた様子、これくらいで』

 謙信が膝立ちになって信玄の袖を引く。

『会長、このくらいで』

 とうとう三成が止めに入った。

『そ、そうですね、ちょっと目眩が……』

『それでは、これにて……』

 利休がしめて、ホッとした空気が茶室に流れる。

 一礼し合って、会長が立ちかけ……よろめいてしまった。

『吉本どの!』

『アア~(//∇//)』

 機敏に会長を支える信玄……しかし、止めにアクセントを間違えてしまい、会長は美しく手足を痙攣させて気を失った。

『会長!』

『中継を切れ!』

 プツン……

 

 大丈夫か?

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
  •  熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生
  •  古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  •  宮本 武蔵       孤高の剣聖
  •  今川 義元       生徒会長 
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はるか・17『写メの意外な波紋・3』

2021-10-31 05:36:50 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト はるか・17

『写メの意外な波紋・3』  





 八時過ぎには学校に着いた。

 グー像の前で立っていると、ちょうど出勤してきた竹内先生がやってきた。

「なんや、だれかと待ち合わせか?」

「はい、ちょっと」

「ちょっと、顔が怖いで」

「ですか」

「まあ、アメチャンでも食べえや」

 わたしはもらったアメチャンを握ったまま待った。

 それから、五分ほどして、ヤツは現れた。予想はしていたが由香が横にくっついている。

「先輩とだけ話がしたいんだけど」

 そう言うと、由香は二三歩後ずさった。

「いったい、なんだよ。怖い顔して」

「これ」

 例のA4の封筒を差し出した。

「あ、きたのか! いやあ、まさかとは思ったんだけどな」

「他の人には見せない人だって言ったじゃない!」

「伯父さん、リタイアした人だけど、元は名プロディユーサー。はるかがプロの目から見てどう映るのか、それが知りたっくってサ」

「約束を破った!」

「そうトンガルなよ。オレ、はるかの魅力はプロで通用するって思ったんだ。はるかは、こんな演劇部でたそがれてるやつじゃないって。でも、プロの世界はキビシイからさ。おれ自分の目の確かさも試したかったんだ。あんまし自信はなかったけど、オレにとっても、はるかにとっても、いい結果が出たじゃないか」

――こいつ、なんにも分かってない……怒りでうつむいてしまった。

「でも、よかったよ。はるかが認められて。白羽さんて、日本で五本の指には入るプロデューサーだからさ、それが、こんなに早くリアクション起こしてくれたんだから、やっぱり本物だよ、はるかは!」

 プッツン!

 わたしは切れてしまった。

 不幸が三つ重なった。

 まずタマちゃん先輩が側にいなかったこと。いたらルリちゃんの時のように止めてもらえただろう。

 次に、アメチャンを握っていたこと。アメチャンを握っていなければ平手ですんだだろう。

 もう一つは、わたしが手を挙げたとき、そこに由香の顔があったこと。

 気がついたら、生活指導の部屋にいた。

 

 由香は、わたしの手が出そうになって、間に入った瞬間だったらしい。

 わたしの横で、くちびるを切って、ホッペを腫らして座っていた。

 わたしは、正直に全てを話した。一方的暴力である。

 吉川先輩は「自分が余計なことをしたからだ」と弁護してくれた。

 慌てたのは、乙女先生と竹内先生。

 暴力行為は最低でも一週間の停学だ。

 どうしよう、コンクールに出られなくなってしまう……。

 足許から、後悔が這いのぼってきた。

 後悔は深まる秋の冷気に似ていた……。

『はるか 真田山学院高校演劇部物語・第19章』より



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