大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・073『ナバホ村・2』

2021-10-15 14:46:45 | 小説4

・073

『ナバホ村・2』 加藤 恵  

 

 

「……それは残念だったなあ」

 社長の説明が終わると、いかにも残念そうに肩を落とすナバホ村村長。

「お互いの鉱区に跨っているようなら、共同で採掘とも思っていたんですけどね……」

 ホログラム表示された島の立体地図には南の氷室カンパニーと東のナバホ村の鉱区が重なっているのが窺えた。

 こういう場合は、双方が権利を主張して、もめ事の種になるのが常だ。

 そういうややこしいというか、微妙なところで発見されたものは南(氷室カンパニー)と東(ナバホ村)と西(フートン)で情報交換を行うことになっているのだ。それも、双方の代表者が顔を合わせて。

「火山の深層部にあったものの一部が吹き飛ばされて出てきたものだと、うちの技術者の見立てなんだ」

「それについては、ワシが」

 シゲさんが前に出る。

「じゃ、うちもザブに引き継ごう、おい、ザブ!」

「ザブは、まだ坑内です」

 ヘルメットの若者が坑道の入り口を差す。

「だれか、ザブを呼んできてくれ、ヒムロ社長も忙しい体なんだからな」

「なんなら、ワシの方が足を運ぶが」

「いや、万事、お互い対等にいかなくちゃ、なあ社長」

「ああ、待たせてもらいましょう、シゲ」

「うい」

「そちらは、新人さんかな?」

 村長がわたしに注目した。

「ああ、一昨日からね。メグミって云うんです。こう見えて、メカニックの腕はななかですよ」

『メグミにバージョンアップしてもらいましたあ(^▽^)/』

「おお、ニッパチ、リアルハンドを付けてもらったのか!?」

『はい! 夕べの宴会じゃ、この手で酒の肴をいっぱいつくりました!』

「それは、すごい。うちのサンパチにも付けてもらえないかなあ」

「サンパチ?」

「ああ、ニッパチの兄弟だ、サンパチは?」

「西のフートンに行ってまーす」

「手が空いていたらいつでもやらせてもらいますから」

「そうか、じゃ、また都合のいいときに……おお、上がってきた」

 ウィンチの音がしたかと思うと、坑口のゲートが開いて、他の村民よりも煤けた二人連れが現れた」

「急いでほしいが、取りあえず顔と手を洗ってこい!」

 一人はペコリと頭を下げて、もう一人はノッソリと手を挙げて洗い場に向かった。

「仕事熱心が取り柄なんだ、もう少し待ってやってくれ」

「ああ、こちらこそ急かせるようで済まない」

「そうだ、あのペコリと頭を下げた方も、うちの新人なんだ。火星で宮仕えをしていたらしいんだが、なかなかの働き者だ」

「ほう、火星から」

 社長が興味を持った。西ノ島は人の素性の詮索をしないところだからな。

「西のフートン、ちかごろは、どうです?」

「ちょっと手を伸ばし過ぎているかな……周も腕の見せ所と言ったところだろう。少しだが、ピリピリしている。うちの新人が進んで素性を明らかにしたのは、そういう空気を西ノ島全体のものと考えていたみたいだしな」

「狭い島だ、仲良くやっていけるといいねえ」

「明日にはフートンの方にも伺おうと思ってます、周さんともお話しできるといいんですが」

「ぜひとも頼むよ。ヒムロ社長は俺と違って人あたりもいい。あと、五年もがんばれば、西ノ島の未来も開けてくるはずだからな」

「いえいえ、とても僕なんか、村長の『いざとなったら、このナバホが!』っていう後ろ盾があっての事です」

「おたがい、良き隣人というところだな」

 

 お待たせしました!

 

 洗い場の方から元気な声、振り向くと、先ほどの火星人がザブを急き立てながらやってくる。

 その汚れが取れて綺麗になった顔……見覚えがある。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥              地球に帰還してからは越萌マイ
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室                西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
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はるか・1『最後の制服・最初の制服』

2021-10-15 06:01:57 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト はるか・1

『最後の制服・最初の制服』   

 




 鶴橋から準急で四つ目の高安で降り、母子の新居である2LDKの賃貸にたどり着く。

 簡単な夕食をとったあと、「今夜は片づけよう!」と誓い合った段ボール箱をシカトして、お風呂に入る順番を母子でジャンケン。
 運良く勝ったわたしは、トロトロと服を脱いで湯船につかり、そのままトロトロと居眠ってしまった。
 

 瞬間、夢を見た。
 

 白い紙ヒコーキが群青の空を滑るように飛んでいる。

 ウワーーー!

 歓声をあげたとたん、紙ヒコーキは荒川の真ん中にポチャン。

 ゲホ、ゲホ、ゲホ!

 しこたまお湯を飲み込んでむせかえっった。

『なにやってんの、制服と教科書きたわよー』

  制服を着て鏡の前に立ってみる。
 
 
 昼間目にした真田山学院高校の女生徒たちと同じ姿がそこには映っていた。
 

  あたりまえっちゃ、あたりまえ。

 でも、なんだか自分でないような気がした。
 
 
 壁に掛けた古い制服が、むりやり脱皮した抜け殻のように思えた……。

「お母さん、写真撮ってよ、写真!」
 お風呂に入りかけていたお母さんをつかまえて、ピ-スして写真を撮ってもらった。
「似合ってるじゃない。はるかって、順応するの早いんだ。ま、女ってそういうもんだけどね」
 そう言い残して、この人でなしは、そそくさと風呂場に戻った。
「溺れるんじゃないわよ!」
「誰かさんとはちがいま~す」
 で、あとは湯気にこもった鼻歌が聞こえてきた。

――ホンワカはるかの再出発!――

 デコメいっぱいのタイトルとともに由香にメールを打った。

 吉川裕也からメールがきていた。

 ほら、食堂、標準語で声をかけてきたテンカス生徒会長。
 気まじめそうなイケメン。話してみると案外おもしろい。
 小学校を卒業すると同時に横浜から、大阪に来たらしい。
 大阪弁と、標準語てか、横浜弁を器用に使い分けるバイリンガル。

 とりあえずメルトモになっておいた。

 あと、山田先輩とタマちゃん先輩にも。

「今日はいい出会いだったね。真田山にはいろんな人がいて、習慣とかも、東京とは、かなりちがう。分からないことがあったら、いつでも! YK」
 OKの打ち間違いかと思ったら、
「ああ、イニシャル……キッカワ ユウヤだもんね」

 そして……ひそかに心待ちしていたメールは来ていなかった。
 幼なじみにさえ伝えていない新しいアドレス教えてきたのに!

 制服をパジャマに着替えると、風呂場で「ゲホゲホ……」とむせかえる声。

「ざまー見ろ」

 小さく毒づいてベッドに潜り込む……。


 『はるか 真田山学院高校演劇部物語』第二章より

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