大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・291『今日から高校生!』

2022-04-01 16:30:47 | ノベル

・291

『今日から高校生!』さくら     

 

 

 今日から高校生!

 

 企んだわけやないけど、早起きしてお風呂に入る。

 朝の色々で、面白いこともあったんやけど、ここからは入学式。

 

 入学式にはテイ兄ちゃんとおばちゃんが来てくれる。

 お祖父ちゃんとかも来たがってたんやけど、新入生一人につき一人の保護者しか認められへんので仕方がない。

 

 まずは、昇降口の入り口に貼ってあるクラス表を見る。

「「あった!」」

 留美ちゃんと声が重なる。

「同じクラスだ٩(๑^o^๑)۶!」

 一年に一回するかどうかの笑顔で喜ぶ留美ちゃん!

 中学の時と同じく、前と後ろ(うちの苗字が『酒井』で、留美ちゃんは『榊原』やから)の席。

「え、うそ……」

「え、どないしたん?」

「担任の先生……」

「え……あ!?」

 

 一年B組  担任 月島さやか

 

 物覚えのええ人は憶えてると思うねんけど、月島さやか先生は、二年の時から担任やってもろてる先生。

 新任で、うちらのクラス持ってくれはった笑顔の素敵な先生。

 その特徴的な笑顔から、生徒からはペコちゃん先生と呼ばれてる。

「同姓同名だよね?」

 先生言うてた――うちの近所は月島が多いの。昔から住んでるから辿っていけば親類なんだけどね――

 先生の家は神社やさかい、当然古い家系で、近所が親類だらけやっても不思議やない。

「先生の『さやか』は漢字やったかなあ……」

 教室で待つこと五分、むろん緊張のしまくり!

「「あ!?」」

 思わず声に出てしもて、教室の注目を浴びてしまう。

 せやかて、入ってきたピンクスーツの担任は、まごうかたなきペコちゃん先生!

「担任の月島です。自己紹介とかは後程にして、入学式についての注意をします」

 めっちゃポーカーフェイスというか、アナ雪のエルサが雪の女王になった時みたいな冷たい顔で、事務的に説明する。

 いよいよ時間になって、廊下に並んだ時も、うちのピースサインも無視して、みんなの服装チェック。

 ひょっとして、パラレルワールドからやってきた中学の先生をやってないペコちゃん先生?

 

 やがて威風堂々のBG……と思たら吹部の生演奏流れるうちに式場へ。

 

 やがて、全員が揃ったところで教頭先生のMCで入学式が始まる。

 国歌斉唱から始まるのは、小中学校といっしょやねんけど、校歌斉唱でぶったまげた!

 なんと、伴奏のメインがパイプオルガン!

 おお! なんという荘厳な響き!

 今にも、天使さんに先導されて、聖母マリアさんが天下ってきそうな。

 いっしゅん、阿弥陀来迎図を思い出してみたけど、阿弥陀さんには合いません。

 理事長、校長先生始め主だった先生がウィンプル被った修道女姿いうのんも感激!

 仏教界で、こういう場面に耐えられるのんは、去年、お亡くなりになった瀬戸内寂聴さんくらい。

 

 で、式は進んで担任紹介。

 

「B組担任、月島さやか。本日4月1日付で、堺市立安泰中学からの転職……」

 MCの教頭先生の解説で、ホンマモンのペコちゃん先生やということが判明!

 なんや、胸がサワサワしてきたとこで、生徒会長の挨拶。

「あ、百武真鈴!?」

 紹介は、生徒会長田中真央やったけど、頼子先輩から話を聞いてたうちと留美ちゃんは、田中真央が『恋するマネキン』の人気声優やということを知ってる。

「さくら、くち、くち!」

 留美ちゃんに注意される。ビックリしたうちは、口を半開きにしたままでした(^_^;)。

 さすがは百武真鈴。きれいな声と読み方やったけど、声優らしさは感じさせへんかった。

 生徒の中には気ぃついてる子ぉも居てると思うねんけど、うちみたいに口を半開きにしてるアホは居てませんでした。

 

「さくら! 留美! 入学おめでとう!」

 

 式が終わってピロティーに出ると、我が先輩、頼子さんがお日様みたいな笑顔で待ち構えていてくれました。

 一歩下がったとこには、ガード兼ご学友のソフィーもニコニコの笑顔。

 ソフィーって、ご学友モードでは、こんなフレンドリーな表情するんや!

 いっぱい発見したりビックリしたり。

 ペコちゃん先生のことは、まだ謎やったけど、目くるめく驚きのうちに、酒井さくらの高校生活が始まった!

 

☆ なんとか、さくらの中学時代を終えて、高校時代に突入することができました。根気よく付き合ってくださった読者のみなさんのお蔭です、ありがとうございます。まだまだ未熟な物語ですが、これからも、読んでいただければ嬉しいです。

                  大橋 むつお 

 

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銀河太平記・101『及川軍平の新生活』

2022-04-01 13:25:10 | 小説4

・101

『及川軍平の新生活』及川軍平   

 

 

 及川軍平の失脚で、西ノ島の本土化は頓挫してしまった。

 へき地開発法など、西ノ島に課せられていた法律や条例は、ことごとく停止になり、当分の間は島の自治に任せられることになったのである。

「及川さん、人生は山あり谷あり。生きていれば、またいいこともありますよ」

 及川が淹れ換えてくれたお茶をうまそうに飲みながら、孫大人は優しく言葉を掛けた。

「いいえ、わたしは、残りの人生、この島の食堂でフロアー係を務めていきます」

「そうですか、それも人生ですね。わたしも、これからはちょくちょく島には来ることになると思います。なにか不自由なことがあれば言ってください」

「いよいよ、本格的に島を支配……いえ、関わってこられるのですね」

「及川さん……」

「わたしは、西ノ島を外国資本から守りたい一心でした。ここは、脛に傷持つ外国人たちにいいようにされてきました。ナバホ村もフートンも指導者は外国人。氷室カンパニーだけが日系だとは言われていましたが、構成員は多国籍、中には月や火星からの流れ者も居て、このままでは……」

「ひところの満州のようになると思いこまれたんですなあ」

「このままでは、また満州戦争のようなことが……」

「お父上は、あの戦争で亡くなられたので無理もないとは思いますが。ここは、そうはなりませんよ」

「孫大人、あなたがおっしゃっても……」

「いかにも、西ノ島には投資しています。だが、口は出さない。わたしも、幾たびかの戦争を経験しました。まだまだ手探りではありますが、戦争をしないで、共にみんなが栄えるような道を探っていきますよ」

「五族共和ですか」

「ワハハハハ、三百年も前のスローガンですなあ(´∀`) もっと古い言葉で申しますと『厭離穢土欣求浄土(おんりえどごんぐじょうど』でしょうかな」

「徳川家康ですか!?」

「はい、聖徳太子と並んで尊敬しておる日本人です」

「『和を以て貴しとなし』のあとは『忤う(さからう)こと無きを宗とせよ』……が続きますね」

「それほどに『和』が貴いということですなあ……まあ、それほど時間はかかりません。カンパニーの食堂に務められたのも奇遇でありましょう。しばらくは見ていてください」

 

「孫さん、お迎えが来ましたよ!」

 

 厨房のオタキばあさん、いやお岩さんが目ざとくゲートに入ってきた迎えを見つけて、孫大人を呼ばわる。

「軍平、いつまでも喋ってないで、アイドルタイムは終わりだよ!」

「はい、ただいま!」

 入り口から入ってきたのは、秘書然とした美人だ。

 子どもの頃、父親に連れて行ってもらった北大街の、なんとかいう店で見たような……いや、もう二十年以上も経っている。他人の空似。

 孫大人と秘書は、落盤事故のあと、まだ引き取り手のない祭壇の遺骨に手を合わせると、飄々とゲートを出て行った。

「こらあ、グンペイ!」

「はい、ただいま!」

 

 カンパニーは午後の作業が本格化したのだろう、ウインチやドリルの音がかまびすしくなり、食堂横のファクトリーではメグミが、パチパチたちの再義体化の作業を開始した。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地

 

 

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