大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ピボット高校アーカイ部・3『美少女部長 真中螺子』

2022-04-22 10:16:11 | 小説6

高校部     

3『美少女部長 真中螺子』  

 

 

 あ、すみません(#'∀'#)!

 

 クラっときてよろめいたところに人が立っていてぶつかってしまった。

 二の腕に受けた感触で女性、それも鼻を掠めた匂いで同年配の女の子だと知れておたついてしまう。

 ……えっ!?

 女の子はうちの制服を着ていて……首が無い。

「それはマネキンだ」

「は、はあ……」

 改めて見ると、襟から出た首にはジョイントが付いていて、首のないマネキンだと分かる。

「見ての通り、わたしは女子高時代の旧制服だ。部活では、旧制服に着替えている。それで、普通の制服は、そのマネキンにかけているんだ」

「はあ……」

 かけてあるという感じじゃない。ちゃんと着せてあって、ブラウスの襟にはリボンも掛けてある。

「他の部活でも、ジャージとかユニホームに着替えているだろう、同じことだ。まあ、そこに座ってくれ」

 示されたソファーに掛ける。

「おわ(°д°)」

 思いのほか深く沈んでビックリした。

「応接室のお下がりだ、昭和のものなんでクッションが良すぎるんだ」

 言いながら、先輩は向かいで足を組む。

 (#'0'#)

「すまん……不用意だったな」

 脚を戻すと、浅く座りなおして身を乗り出した。

「部長の真中螺子(まなからこ)だ。きみは田中鋲……でいいんだな?」

 メモにサラリと名前を書いて確認。

「あ……なんで相合い傘なんですか(#'o'#)」

「二人だけのクラブという意味だ。それに、これは相合い傘ではないぞ『これから二人で部活をやっていくぞ!』的な矢印だ」

「でも、真ん中に傘の柄が……」

「これはケジメだ」

「ケジメ?」

「ああ、部室は学校の端っこ、日ごろ人気のない旧校舎の一室。わたしは見ての通りの美少女だし、きみは第二次性徴真っ盛りの十六歳。ケジメが必要だろう?」

「う……」

「まあ、心構え、心意気の両方を表していると思ってくれ」

 際どくって、めちゃくちゃのようで筋が通っているような気もする。

「入学にあたっては、アーカイ部への入部が条件であったはずだ。多少の疑念があっても、鋲に選択権は無い」

「は、はい」

 もう呼び捨て、それも下の名前で(^_^;)

「分かっていると思うが、うちは、並みの部活ではない」

「そ、そうなんですか(^_^;)」

「周りを見てくれたまえ」

「え?」

 薄明かりなので目につかなかったけど、壁際は全て棚や本棚、ロッカーの類で、大小さまざまなファイルめいたものが詰め込まれている。見たことはないけど、新聞社やテレビ局の資料室は、こんな感じだろう。

「これはな、この、要(かなめ)の街の記録なんだ。街の図書館よりも充実しているぞ」

「アーカイブなんですね」

「そうだ、百年前に学校が設立された時、要の街が全面的に協力してくれたんだが、その時の条件が『街の記録の整理と保管』ということだった。学校は研究室を作ろうとしたが、街の代表者たちは『肩の凝らない部活のようなものでいいですよ』と言う。それで、こういう訳さ」

「なるほど……」

 部長は、ちょっと変わった人だけど、やっていることは『郷土史部』みたいなことなんで、ちょっと安心した。

「納得したら、入部届けを書いてくれるか。いちおう手続きなんでな」

「はい、すぐに!」

 返事をしてボールペンを手に取ると、先輩はホッとした笑顔になって、脚を組んで座りなおした。

 (#'0'#)

「ああ、すまん」

 こうやって、僕の高校生活が始まった。 

 

 ☆彡 主な登場人物

  • 田中 鋲(たなかびょう)        要高校一年 アーカイ部
  • 真中 螺子(まなからこ)        要高校三年 アーカイブ部部長
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乙女先生とゆかいな人たち女神たち・25『梅沢先生との対談』

2022-04-22 06:02:34 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

25『梅沢先生との対談』

     


 栞は、生まれて初めてメイクをされた。

 メイクと言っても、ハレーション止めのファンデがほとんどだが、メイク映えのする顔立ちだったので、ついメイクさんも力が入ってしまった。眉を描き足し、シャドウ、アイライン、チークも軽く引かれた。化粧前に映った自分の顔を見て、栞は想いがクッキリしてきたような気がした。実際、収録中の栞はいつにも増して饒舌であった。司会はセリナ、同世代のゲストとしてMNBの榊原聖子が出演している。

「係争中ですので、裁判の中身に触れることはできませんので、ご了承ください」

 最初の一言に、梅沢先生は興味を持った。知性と論理性、幼さと美しさが同居し、うかつにもこの十七に満たない少女のなかに「志」を感じてしまった。

「それじゃ、ズバッと聞きます。手島さんが、いまの教育について欠けていると思うことはなんですか?」
「わたしは、生まれは東京ですが、中高は大阪です。ですので、その狭い大阪の中でしかお答えできないことをお断りしておきます」
「はい」
「分かりやすく表現します。大阪の教育に欠けているものはありません」

「ほう……」

「むしろ過剰なんです。まずカリキュラムが過剰です。そのために授業時間が無意味に多くなっています。学校によって程度の差はありますが、0時間目、7時間目の授業は珍しくありません。その上に、生徒に求めているものは、昔の6時間で授業をやっていたころと変わりません。わたしの学校の校是は希望・自主・独立の三つです。この三つを校是、目標と考えるならば、物理的、時間的な制約が多すぎて、現実的には否定しているのと同じです」

「具体的には、どういうところに現れていますか?」

「部活が成立しません。7限が終了して、部活に入れるのは、早くて四時半になります。決められた下校時間は5時15分です。このハンパな時間は、先生の勤務時間に縛られるからです。先生の勤務時間は午前八時半から、午後五時十五分までです。それを越す部活には延長願いが必要です。この延長願いは元来非常の措置です。しかし、熱心な部活は、この非常の措置が常態化しています。だから顧問のなり手が恒常的に不足しています。また、熱心な先生ほど、過剰な労働時間が課されます。部活指導のあと分掌や、教科準備のために時間が取られます。勢い、そういう部活の顧問のなり手は減るか、名前だけの判つき顧問になり、顧問と生徒との乖離という問題にもなっています。結果、部活の減衰に歯止めがかかりません」

「他には?」

「総合学習、総合選択制の問題です。『生徒の多様なニーズに応えて』というのが表看板ですが、無節操な世論に押されて、意味のない授業を増やしています。『園芸基礎』『映画に見る世界都市』『オーラル英語』などの選択授業。お断りしますが、我が校だけではなく、他校にも似たような教科がありますので、一般論として聞いて下さい。正規の授業としてこれらの授業が必要なんでしょうか。ちょっとした土いじり、映画の部分的な鑑賞、喋れもしない英会話。ただのルーチンワークです。こんなことに先生も生徒も時間を取られてるんです。それよりも基礎学科である国・数・理・社、そして英語に力を入れればいいんです」

「今、手島さんは、英語は無用だとおっしゃいませんでしたか?」

「オーラル英語です」

「発音や会話は不要ということかな?」

「はい」

「少し乱暴な気がしますが……」

「理由は二つです。日本語は明治になって近代社会に耐えられる言葉になりました。学術用語から日用品に到るまで日本語化しました。例えば放送と言う言葉、新聞、二酸化炭素、三人称、三人称としての彼・彼女などの言葉の発明です。授業で習う言葉のほとんどが母国語で間に合います。欧米以外では、あまりありません。だから、あえて英会話の授業はいりません。もう一つは……」

 栞は、ため息をついて、背もたれにもたれてしまった。

「なにか、ためらいがあるんですか?」

「……先生達の英語には魅力がありません」

「なるほど、ひょっとして、他の教科や、指導などでも同じようなことを感じていらっしゃるんじゃないですか」

 梅沢先生は、足を組み替えて、ゆっくりとお茶をすすった。

「……どうして、お分かりになるんですか?」
「ハハ、僕も学生のころ同じことを思ったからですよ」

 それから、二人の話は二時間に及び、世代を超えて意気投合した。おかげで司会を務めたセリナにも、同世代の代表として引っぱり出されたMNBの榊原聖子にも出番はほとんど無かった。

 収録語、そのことに気づいた栞はセリナと聖子に謝った。二人とも勉強になったと喜んでくれた。

「二つも年下なのに、すごいと思っちゃった!」

 ことに聖子は喜んでくれて、この後、思いもかけないところで縁ができることになる……。

 

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