大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・294『対面式とオリエンテーション』

2022-04-08 10:11:06 | ノベル

・294

『対面式とオリエンテーション』さくら   

 

 

 今日は朝から対面式。

 

 だれと対面するのかと思たら、二三年生のお姉さま方全員と!

 ペコちゃん先生に先導されて、向かったのは、入学式もやった体育館。

 すでに、二三年生は体育館に入ってて始業式の真っ最中。

 A組の先生が、入り口で、なにやら中の先生に告げると、ザワザワと大勢が移動する気配。

 続いて、静かで荘厳なミサ曲みたいなんが流れる中、A組から入って行く。

 入った時は、まだ移動の真っ最中。

 うちら一年生が入って行くにしたがって、上級生の移動は進んでいき、フロアの真ん中が空いて、両脇に二年と三年、真ん中に一年が収まる。

 パチパチパチパチパチパチパチパチ(*´꒳`*ノノ゙

 その間、お姉さま方や先生方が笑顔で拍手してくれて、めっちゃ感激。

 中学の時みたいに男子は居らへんし、オチャラケたやつも居らへん。

 なんや、にこやかな中にも粛々とした秩序があって、宝塚みたい(#^_^#)。

 

 この対面式のスタイルは、明治時代に学校ができて以来の伝統らしい。

 

「去年は、コロナのために、開校以来続いた、この対面式ができませんでしたが、今年はマスクをしながらでも行うことができました。二年生は、この形で迎えることができませんでしたが、その分、卒業式にはがんばります。がんばりましょう。それでは……」

 壇上の校長先生が指揮者のように両手を挙げる。

 入学おめでとう!!

 なんちゅうこと、二三年生のお姉さま方が、一斉にお祝いの言葉と、前にも増して、割れんばかりの拍手!

 あ、あかん、涙腺崩壊(˃˂)やあ!

 

 式そのものは、あっという間に終わって、続いてオリエンテーション。

 連れていかれたんは、チャペルやおまへんか!

 

 15年の人生でチャペルなんちゅうもんに入るのは初めて!

 入り口はマホガニーとかの観音開きでホールになってて、ホールにもう一つの観音開き。

 

 おお!

 

 荘厳なパイプオルガンが奏でられ、赤じゅうたんのバージンロードがあったら、そのまんま、ごっつい結婚式ができるんちゃうかいうくらいの雰囲気! ドラゴンクェストやったら、ここで旅の記録=セーブしたくなる(^_^;)とこ。

 通路は真ん中の大きいやつの他に、左右に、もう一本づつの通路。

 手際よく、八つのクラスが、それぞれの通路から指定された席に着く。

 照明が凝ってるなあと思たら、正面と両側の窓がステンドグラス!

 配色がええせいか、お日さんの光が、めちゃ凝った照明みたいになって、めちゃめちゃ雰囲気!

 席に着いて、十秒ほどすると、ちょうどパイプオルガンの演奏が終わって、プレーヤーのシスターが立ち上がった……と思たら、そのシスターは学院長やおまへんか!

「本来なら、ここで入学式を行うところでしたが、コロナのために使えませんでした……」

 校長先生と似たようなお話から入らはる。

 なんや、為になるようなことを言うてくれはったようやねんけど、一つも覚えてません。

 

 帰り道、留美ちゃんと今日の感動をピーチクパーチク。

 

「対面式、感動だったよねえ!」

「うんうん!」

「入ってくと、上級生が潮が引くみたいに一年生の場所を空けてくれて、あれって、出エジプト記だよね!」

「え、出エ……?」

「モーゼがさ、ユダヤの民を引き連れて、紅海まで出てくると海の水がザザザーーって左右に開いて、みんなで逃げられるんだよね。文芸部の時『ベンハー』って映画のダイジェスト観たでしょ!?」

「え……あ、せやったせやった」

 いいえ、ぜんぜん覚えてません。たぶん、ダミアを抱っこしてモフモフ遊んでました。

 言わへんけど……。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら   この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌     さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観    さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦一    さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩     さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保    さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美    さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子    さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー     頼子のガード
        
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乙女先生とゆかいな人たち女神たち・10『戦闘態勢の栞』

2022-04-08 08:03:35 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

10『戦闘態勢の栞』    

 

    


 栞は、グッと口を引き締めたかと思うと、大粒の涙をこぼした……。

「セーラー服は、わたしの戦闘服です」

 涙を拭おうともせずに、キッパリと栞は言った。庭で、長閑にウグイスが鳴いているのと対照的だった。

「どういう意味やのん?」

 栞の真っ直ぐな姿勢に、乙女先生は好感を持った。

「わたしは、学校と戦っていきます。だから、制服であるセーラー服は戦闘服なんです」
「なんで、学校と戦わなあかんのん?」

 乙女先生は、我知らず、いっそう優しくなっていく。校長は、一見無表情に庭に目をやりながら、穏やかに聞き役にまわった。

「総合選択制をなんとかして欲しいんです」
「総合選択制を?」
「はい。生徒のニーズに合わせて多様な教科を用意しているように見えますが、ただのアリバイです」
「手厳しいねえ」

「一年間授業を受けて、また、上級生のカリキュラムを見て、そう思ったんです。『園芸基礎』一年間園芸好きの先生の趣味に付き合っただけです。『映画から見た世界都市』映画の断片を見て、プリントの空白を埋めただけです。三年生に聞いたら当時担当していた先生が映画好きだったんで、一年間映画の解説ばかりだったそうです。プリントを見せたら、当時のまま。今は先生が替わって、それをなぞっているだけです。『オーラル・A』EATの先生と、英語ごっこをやっただけです。三年間『オーラル』を取った三年生でも、簡単な英会話もできません。こんな、オチャラケた教科が並んで、肝心の国・数・英・社は時間不足のスカスカです。おまけに、週四日間の七限授業。終わったら四時です。SHR、掃除当番なんか入ったら、部活の開始は四時半。下校時間は五時十五分。授業、部活共に成り立ちません。希望ヶ丘青春高校なんて、安出来の青春ドラマみたい……最初は、そうは思ってませんでした。これでも夢を持って入学したんです。でも一年居て分かりました。だから、改善の意見書を、担任の先生を通じて校長先生と、運営委員会宛に出したんです。そうしたら、生徒手帳を振りかざして、このバイトについ注意されました。そして、『意見書』という標題を注意されました。生徒が学校に出すものとして相応しくない……で、古色蒼然とした『建白書』にしたんです。下の者が上の者に具申するという意味です。『教師と生徒の間に上下関係は無い』と言ってハバカラナい、組合の分会長をやっている担任が、そのまま受け取りました。そして、一カ月たった今、まだご返答がいただけません。だから、わたしは、校則を守りながら戦っているんです。だから、このセーラー服は、わたしの戦闘服なんです」

「至急、君が出した『建白書』は読ませてもらうよ。バイト許可書もすぐに善処しよう」

 庭から、目をもどした校長は、栞にきちんと答えた。

「あの……」
「では、仕事に戻らせていただきます」

 乙女先生の言い出しかけた言葉をニベもなく断ち切って、栞は去って行った。

「今のあの子に、その場しのぎの言葉は通じませんよ」
「いえ、あたしは、もっといろいろ聞きたかったんです」
「そうか、担当学年じゃないが、関わってもらうことになるかもしれませんね」

 校長は、すました顔でダンゴをヒトカブリにした。

 校長は、店のパソコンを借りて、栞の『バイト許可証』を作り、女主人の恭ちゃんに渡した。

 門を出るとき、別人のようにクッタクのない笑顔で接客している栞の姿がチラっと見えた……。

 

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