大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・295『花まつりを忘れてた!』

2022-04-11 14:28:42 | ノベル

・295

『花まつりを忘れてた!』さくら   

 

 

 学校いくついでにゴミほり。

 いつもより多いゴミ袋に気が付いて、留美ちゃんといっしょに「「あっ!」」と息を飲む。

「花まつりだったんだよ!」

「忘れてた(;'∀')」

 四月八日は花まつり。お寺的には『灌仏会(かんぶつえ)』というのは、前に言うたよね。

 お釈迦さんの誕生日で、甘茶こさえたり、お花で飾ったり、檀家の婦人部のお婆ちゃんがらが大活躍して、お寺の行事としては珍しく華やかな行事。

 月始めは憶えてたし、手伝いもしたんやけどね。

「誕生日は祝ってもらったのにね……」

 ゴミ袋ぶら下げながら、自分の失敗のように落ち込む瑠璃ちゃん。

「いやいや、うちも完全に抜けてたし……」

「おじさんたちにお詫びしなくっちゃ……」

 留美ちゃんが立ち止まる。

「帰ってからでええよ、学校遅れるし」

「う、うん、そうだね……」

 お寺というのは段取りのええもんで、ごっついお葬式とかやっても、三十分ほどで全部片付いてしまう。

 せやから、片付いてから戻ってくると、お寺はふつうの日常に戻ってるわけで、ボーっとしてると気ぃ付けへんこともある。

 はい、今回はボーっとしておりました。

 で、なんでボーっとしてたかというと、高校の登校初日。持ち物やら服装、予定のチェックに気ぃとられてて、全然忘れてた。晩御飯のあとに「16歳の誕生日おめでとう!」も言うてもろたんやけど、檀家さんに御不幸があって、あんまりお祝いという風にはいけへんし、おっちゃんとテイ兄ちゃんはお通夜に行ってるし。それで抜けてしもた。

 ちゃんと誕生日プレゼントももろたのにねえ、ちょっと自己嫌悪やねんけども、うちが気にしたら留美ちゃんはもっと気にするし。

 ドンマイドンマイ!

 帰ったら、ふたりで「ごめんなさい」言うことで、自転車に跨る。

 あ、そうそう、誕生日のプレゼントいうのが、この自転車。

「留美ちゃんの誕生日には早いねんけど、通学の必須アイテムやし、今年はいっしょに言うことで(^_^;)」

 詩(ことは)ちゃんがテイ兄ちゃんの代わりに、お祖父ちゃん、おばちゃんといっしょに祝ってくれました。

 出資はおっちゃんとお祖父ちゃん、買いに行ってくれたのが詩ちゃんとテイ兄ちゃんということでした。

 むろん、二人で「ありがとう!」を十回ぐらい言うたんやけど、花まつり忘れてたら話になりません。

 

 で、自転車で学校まで行くわけやないです。

 堺東に、みなさんもご存知『スナックハンゼイ』の敷地に停めさせてもらいます。

 これも、テイ兄ちゃんの人脈のお蔭。

 堺市の駐輪場もあるねんけど、こっちの方が近いし、駐輪代いらんしね(^_^;)。

「今日からお世話になります!」

 お店のマスターに挨拶して、予備の鍵を渡しておく。

 お店の都合で動かさならあかんときあるし、うちらがポカして鍵失くした時の用心にね。

 駅に着くと電車もすぐに来るし、なんと始業三十分前に学校に着いてしまいました(^_^;)。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら   この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌     さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観    さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念    さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一    さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩     さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保    さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美    さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子    さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー     頼子のガード

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

やくもあやかし物語・133『エマージェンシー!』

2022-04-11 09:42:10 | ライトノベルセレクト

やく物語・133

『エマージェンシー!』 

 

 

 あ、カップ麺忘れた!?

 

 思い出したのは火星の脇を抜けて木星軌道に向かっている時。

 コルトガバメントには仁義礼智信のカップ麺のエッセンスを装填しなきゃならないんだ。

 夢見てる間に来てしまったから、そういう準備をする余裕もなかった。

 どうしようとアセアセになっていると、チカコと御息所がポケットの中でゴソゴソ。

「ちょ、なによ、くすぐったいよ(#^O^#)」

「「ほれ!」」

 ふたり同時に飛び出て示したものは……ドングリ?

「なに言ってんのよ!」

「コルトガバメントの弾に込めておいたわ!」

「「義のエッセンス!」」

「あ、ありがとう!」

 カチャ カチャ

 弾倉に弾を込めていると、アキバ子が想念で語り掛けてくる。

―― じつはね、夜中におなかの空いた二人が、こそっとカップ麺を開けてしまったんですよ ――

「え!?」

―― 心で話して、二人に聞こえるから ――

―― それで、弾が入っていたの? ――

―― ま、そういうわけです ――

―― でもさ、なんでアキバ子が知ってるわけ? ――

―― わたしはアキバ子です。空き箱さえあれば、どこからでも覗けます(^_^;) ――

―― あなたって、ひょっとしてアキバの妖精じゃなくて空き箱の妖精なんじゃない? ――

―― アハハ、アキバはなんでも詰め込める巨大な空き箱です ――

 なんか、ちょっと哲学的かも。

 アキバ子と心の会話をしていると、胸元でゴニョゴニョと声。

『やくもの胸が大きかったら、弾なんか持ち込めないとこよ』

『そもそも、わらわや、チカコが潜り込むこともできなかったぞえ』

『そうよね』

『やくもも第二次性徴期、対策を考えなくてはならないかも』

『それは大丈夫、やくものは、これ以上大きくはならないし』

『そんなことは無いぞよ』

『え、どうして?』

『どんなペチャパイでも、子を授かれば、天然自然に大きくなるものよ』

『え、そうなの!?』

『そうじゃ、あたりまえじゃろうが。あ……すまぬ(;'∀')、チカコは結婚はしたが、子はなしておらなかったなあ』

『ちょ、御息所(;`O´)o!』

 なんかすごい話になってきたので怒るのも忘れてしまった。

 

『エマージェンシー! エマージェンシー!』

 

 ロケットのAIが警報を告げる。土星にはまだ間があるのに、なんだろう? キャビンのみんながコンソールを注目する。

『ロケットのバランスが崩れてきています、乗員のみなさんは、二段目のキャビンに移ってください』

 みんな一段目のキャビンに入ったものだから、ロケットの頭が重くなって軌道を離れ始めているんだ。

「すぐに移りましょう」

 トラッドメイド(滝夜叉姫)が立ち上がる。赤メイドは二段目へのハッチを開け、青メイドはアキバ子を抱えてくれる。やっぱり明神さまのメイドなので、テキパキと連携がとれている。

 わたしは、カバンを抱え、チカコと御息所が落ちないように気を付けながら、遅れてハッチに向かう。

 ガシャン!

 ええ!?

 ハッチの向こうとこっちで声が上がる。

 わたしが、ハッチに入ろうとしたら、いきなり閉じてしまったんだ!

『二段目を切り離します 二段目を切り離します 危険ですのでシートについてください』

 AIが、ことさら機械じみた警告をする。

「ちょ、ちょっと!」

 ハッチの向こうとこっちで抗議の声を上げるけど、それには応えないで、無情にも二段目が切り離される。

 

 ああああ!

 

 切り離された二段目がみるみる小さくなっていき、わたしは、胸ポケットのチカコと御息所といっしょに、速度を増して土星へと飛んでいく!

 みるみる赤茶けた火星が小さくなっていった……。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 アカアオメイド アキバ子 青龍 メイド王

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

乙女先生とゆかいな人たち女神たち・13『栞の補導委員会』

2022-04-11 06:52:43 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

13『栞の補導委員会』    

 

     


 昼から補導委員会になった。

「最初に問題点を明確にしときます。手島栞の指導忌避についてです」

 梅田生指部長が口火を切って、参加者は、いっせいにA4のプリントに目を通した。

 参加者は、梅田の他、各学年の生指主担三名と、学年主任の牧原、栞の新旧の担任、管理職からは教頭と、特別に校長が加わり九人であった。
 
「指導忌避は何日ですか……?」

 教頭の田中が、ろくにプリントも見ずに聞いた。

「三日です」
「ほんなら、三日の停学で、よろしおまっしゃろ」

 教頭は早くもメガネを外した。

「ちょっと待って下さい。指導忌避に至ったいきさつについて、説明してください」

 乙女先生が、フライングしたランナーを停めるように言った。

「書いたある通りです。本日8時20分ごろ出勤途中の湯浅先生、先生は新年度の手島の担任ですが……」
「とんだ、ババひいてしもたわ」
「湯浅先生が、栞がゲンチャに乗ってるところを目撃、制止しはりましたが、同人はこれを無視、この時、湯浅先生は、同人に指導忌避であることを明確に伝えてはります。ですね?」
「はい、タバコ屋のオッチャンが、その声で店から出てきたぐらいです。本人にも聞こえてます」
「で、また同人が、そこを通ることを予期され、電話でわたしを呼び出され、事情を聞き、指導の要有りと認め、タバコ屋の自販機横で待機。十五分後、再びゲンチャで通りかかった同人を制止。制止のおり転倒しましたが、これは、制止を振り切り逃走をはかろうとしたためでありますが、わたしと湯浅先生で受け止めてやったため、同人は軽い擦過傷を負っただけですみました。直後、現場で指導しようとしましたが、『現状保存! 警察を呼べ!』と激しく指導を忌避。よって、学校まで、連れて帰って現状に至っております」

 梅田は、模範解答を読み上げるように抑揚のない声で説明した。

「……で、罪状は指導忌避。懲戒規定では三日。決まりでんな」

 乙女先生は怒りのあまり、声が出なかった。旧担任の中谷が手をあげた。

「はい、中谷さん……」
「無許可バイトと、禁止されてるゲンチャについては問題にせえへんのですか」

 梅田が大儀そうな顔をした。

「バイトは、野放しが現状です。あえて問題にする必要おまへんやろ。ゲンチャ絡めると、十日を超える停学、それに、中谷さんに出したバイト願いには、ゲンチャ使用申請もあったとか。それ、一カ月もほっときはったんでっしゃろ、触れんほうがええと思いますけど」
「ゲンチャ使用申請は、本人が言うとるだけでしょ。わたしは確認しとりません」

「一言いいかな」

 ブリトラの校長が手をあげた。

「バイトのことは、本人から聞いて、わたしが許可を出しましたが」
「そら、校長あきまへん」

 三年の主担、山本が口を開いた。

「バイトの許可願いは、担任、学年生指主担、学年主任、生指部長、で、教頭通して学校長の許可になってます。手続き無視してもろたら困りまんなあ」
「最終決定は、学校長なんだから、問題ないでしょう。こういう言い方をするのはなんだが、本人から許可願いが出ていながら一カ月も放置しているのも問題だと思います」
「校長はん、職権乱用や、バイト願いの処理期間なんか、生徒手帳にも内規にも、どこにも書いたあらへん」

「オッサン、そんなん、言い訳やろ! 今時役所に行っても、一時間もも待たされへんわ。アマゾンなんか半日で持ってきよるで。それとも、なにか、ここはアマゾン以下のジャングルけ!?」

「何を、いきまいて……」

 中谷が鼻でせせら笑い、山本が同調した。

「まあまあ、バイトは、もうドガチャガになってるし、中谷はんも、一カ月放置はなあ……」
「ボクは、なんにも悪ない!」
「そやから、学校の現状を鑑みて、指導忌避でいきまんねんやろ。学年始めで仕事溜まっとるんや。早よ手え打ちましょや」
「小さなことからコツコツと、教頭はん名言でしたで」

 山本が囃し立て、教頭は仏頂面になった。

「栞も栞やけど、中谷センセがちゃちゃっと……」

 牧原の呟きが中谷に聞こえ、今度は中谷が切れた。

「ボクは間違うてへん! ただでも一年の担任は大変やったんや、バイト願いなんて……せや、出した言うてんのは栞だけだっしゃろ。あいつに何回も言われて受け取ったような気になってたけど……ボ、ボクは見てへん。そうや、そんな気になってただけで、受け取ってません!」
「ほんなら、栞の狂言や言うんけ、ええかげんにさらせよな!?」

 乙女先生が振り上げた拳を、校長が必死で止めた。

「ああ、こわ~!」
「ほんなら、指導忌避。停学三日。賛成の方起立(乙女先生の剣幕が逆効果になって、全員が立っていた)。賛成者多数。本案可決!」

 こうして、明くる日の朝、保護者同伴で停学の申し渡しになったが、栞の保護者から、その日の内に来校する旨が伝えられ、校長は関係の教師に禁足令を出した。むろん「先生方のためです」と枕詞を付けて……。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする