大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・270『富士山頂決戦・1』

2022-04-29 11:47:51 | 小説

魔法少女マヂカ・270

『富士山頂決戦・1語り手:マヂカ  

 

 

 上るにつれて鈍色に深まる雲中に山頂の輪郭が浮かんでくる。

 グオーー! ズズズーーン!

 裂ぱくの咆哮と地響きは、まるで富士の噴火をいざなうように激しくなり、衝突や斬撃の火花までがチカチカと見えるようになってきた。

 ガシガシ! ガシガシガシ!

 打ち合う音が続いたかと思うと、二つの何かが、もつれ合うようにして転がり落ちてきた!

「こんにゃろー! くたばれえ! 犬化け!」

「させるかあ! 死ねえ! クソガキ!」

 悪態をつきながら転がり落ちていくのは、ファントムの黒犬と詰子だ。

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…………

 声を掛ける暇もなく、二人は目の前を転がり落ちていく。

「……あいつ、寝ていたんじゃないのか?」

「後部座席で涎を垂らして寝ていたよ……」

 ズダダダダ、バシ!

 あっという間に駆け上がってきて、きれいなファイティングポーズを決める詰子。

「敵を欺くには味方から! 御殿場からは黒犬が付けてきていたワン!」

「え?」「そうだったのか?」

「二人が登って行った後を、あいつが付いていくので、先回りして戦っていたワン!」

 ズダダダダ

 下から黒犬が駆けあがって来る。

「二人は、先に上がって! あいつは詰子が相手しておくから!」

「よし、頼んだ! 行くよ、ブリンダ!」

「おお!」

 駆けるのももどかしく、山腹の岩々を蹴り、勢いをつけて山頂のカルデラに降り立つ。

 決めポーズ!……している暇はなかった。

 トオオオオオオオオオオ!

 カルデラの四方から声がしたかと思うと、四つの火の玉が飛び上がり、山頂300メートルほどの高みでもつれ合う二つの玉の片方に四方から激突した!

 ピシャーーーーーーーーン!!

 目もくらむようなスパークが起こったように見えたが、四つの火の玉は勢いを削がれて放物線を描いてカルデラの反対側に着地、火は四人の巫女の姿に戻っている。

「あれは、神田明神の巫女たちか?」

「うん、赤・黒・白・青の四人の巫女レンジャー……ちょっと敵わないみたいね」

 四人の巫女は、端正な姿勢は保ってはいるけど、巫女服はズタズタ、髪もザンバラになって、もう二三合打ち合えば、実体を失ってしまいそう。

 ゴオオオオオオオオオオオ!

 もう一つの大玉が激しく振動し、数秒で人の形をとる。

 ビシャーーーーーン!

 派手なスパークがしたかと思うと、スパークは緋縅の大鎧の荒くれ武者の形になった。

「将門どの……!」

「あれが神田明神の!?」

 ブリンダは、瞬間、神田明神・将門の迫力に目を奪われる。

 日本を代表する荒ぶる神に驚嘆してくれるのは、長年の友としても、ちょっと嬉しい。

 天神や毘沙門天などとは違って、素性が荒武者の平将門、ピカピカの五月人形よりは戦の真っ最中という荒くれ姿の方が頼もしい。

「どうだ、赤地錦の直垂に緋縅の大鎧、大星八間兜の大鍬形の間には憤怒の獅噛、弦走りには不動明王、据文には三つ巴、ナメクジ巴の金物打って、箙(えびら)を緩めに取り回し、黄金づくりの大太刀を流し下段に構えた姿は、ほれぼれとするだろう……!」

「い、いや、その説明、ちょっと難しいぞ(^_^;)」

「そうか、まるで銀幕から飛び出してきた、市川歌右衛門か片岡千恵蔵、いや長谷川一夫の風格じゃないか!」

「そ、それも分からん(;'∀')」

「チ」

「舌打ちすんな!」

「仕方ない、アメリカ人だもんね」

「渡辺謙とかなら分かるぞ。ゴジラとセットだしな……あ、うん、ゴジラに通じるものがあるかもな」

「そう?」

「うん、ゴジラに似て、安定の短足だ!」

 ズコ

 微妙な、しかしハッキリしたエフェクト付きで将門がズッコケる。

 グゥオーーーーーーン!

 その隙を狙って、ファントムの大剣が振り下ろされ、寸でのところで将門は大太刀で受け止める。

 ガキーーーン!

「マヂカさま、感激なさるのは嬉しいのですが……どうか……」

 赤巫女が恨めしそうな目を向け、黒・白・青が続ける。

「「「ご助勢を!」」」

「ごめん、つい見とれてしまった(#-。-#)」

「いくぞ、マヂカ!」

「おお!」

 ブリンダと二人、将門・ファントムの間を割るように跳躍した! 

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

 

 

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乙女先生とゆかいな人たち女神たち・32『合格発表』

2022-04-29 06:05:03 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

32『合格発表』 

          


 今日は、合格発表の日だ。

 なんの? もちMNB24第五期生オーディションの合格発表だ!

 さくやも栞も三時までは津久茂屋で働いた。今日はオーディション二日目で、それが終わると三十分で選考、その場で発表になる。

 当然朝から気が気ではなかったが、バイトの仕事に打ち込むことで忘れることにした。
 もう四月も半ば過ぎだというのに、連休前の日曜日は、朝から肌寒かった。

「こりゃ、お茶引きかなあ」

 恭子さんのお姉さんの育子さんが言ったが、予想に反して、お客さんは多かった。それも大半がシルバー世代で、これから、池田の五月山や、中には六甲の山を目指すという老人クラブの団体さんもいて、どのお年寄りも気負うことなくお茶を済ますと、ちょっと散歩に出かけるような穏やかさで店の長屋門から出発していった。

―― わたしたちも平常心でいかなきゃ! ――

 二人で頷きあったが、栞はオーダーミスを二回、さくやはお茶碗を三個も割ってしまった。

 そして、三時でバイトが終わると、栞とさくやは、オーディションを受けた難波の越本興業のビルに急いだ。

「えー、それではMNB24第五期生オーディションの合格発表をいたします。受験番号を呼ばれた人は前に……受験番号、1番 3番 6番……47番」

―― やったー! ――

 自分の受験番号を呼ばれたとき、心ではそう叫んだが、56人の落ちた子達のために、あえてその喜びは封印した――喜ぶのは、いつでもできる。今は冷静に噛み締めよう。これが礼儀だ――

 そのイマシメは、『事後の説明』のあとに行われた記者会見で、もろくも崩れた。

「あなた、希望ヶ丘の手島栞さんですよね!?」

 週刊日々の記者が皮切りだった。マスコミでは下火になりかけているとはいえ、手島栞の名前と顔は、記者やレポーターたちの記憶には十分新しい。ほんの数十秒だったけど、栞にカメラと質問が集中した。

「こないだの事件から、なんだか180度の転身に見えるんだけど、なにか、きっかけとか、葛藤とかあったんですか?」
「いいえ、ごく普通にこうなりました。やりたいことがやれる場所ってことで考えると、自然にMNBになりました」
「栞ちゃんは、落ち着いて、とても自信たっぷりにみえるんだけど、その自信はどこからくるのかなあ?」

 栞は、ここにいたるまでの、いろいろな事が頭に浮かんだが、四捨五入して、こう言った。

「はい、根拠のない自信です」

 プロディユーサーの杉本寛が大笑い。一拍遅れて、会場のみんなに笑われてまった。

 

 

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