大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・297『校内探検・玄関から真理愛館へ』

2022-04-15 18:26:46 | ノベル

・297

『校内探検・玄関から真理愛館へ』さくら     

 

 

 優勝旗三本……優勝トロフィー二本……優勝盾三個……最優秀賞賞状の額五つ……他に準優勝、優秀賞、技能賞、個人賞、他色々……

 ちなみに、優秀、優勝、最優秀という一等賞を獲得してるのは、以下のクラブ。

 ソフトボール部 吹奏楽部 剣道部 弓道部 演劇部 軽音楽部 ダンス部 放送部 美術部 家庭科部

 ソフト部と吹奏楽部は複数回の一等賞!

 そういう学校の実力というか凄さを物語るグッズが片側の壁面一杯にしつらえられた展示ケースに満杯!

 

 すっごいねえ…………

 

 留美ちゃんと二人でため息のつきまくり。

 お弁当のお昼を食べた後、学校の玄関に行ってみた。

 生徒の出入り口は下足室。願書持ってきた時は、校舎のちがう入り口から入ったさかい、玄関に出てきたんは初めて。

 玄関も中学の四倍くらいの広さ。

 ミッションスクールらしく、玄関の正面にはマリア像があって、マリア像に向かって右が事務室の窓口と来客用靴箱。

 で、左側が壁面一杯の聖真理愛学院の誉れの展示ケースなわけですわ。

 安泰中学にもあるけども、これに比べたら、おもちゃみたい。

「すごい学校にきたんだねえ……」

「せやねえ……」

「吹奏楽って、詩(ことは)ちゃんのクラブだよね……」

「う、うん、部長でサックスのパートリーダーで……」

「ねえ、詩ちゃんが部長だった年に府大会の金賞だよ!」

「ほんまや!」

「さくら、知らなかったの?」

「アハハハ……」

「詩ちゃん、奥ゆかしいからね……」

「せ、せやねえ(^_^;)」

 よう見たら、金賞とったのは詩ちゃん二年の秋……思い出す、詩ちゃんの部活にお邪魔して、ドラマチックな部長交代劇を見せてもろて、うち一人の為に吹部が演奏してくれた。ほんまに、吹部を舞台にした『輝けナンチャラ!』のアニメの世界やった。

 家ではなんにも言わへんかったけど、金賞とるには、あの時以上のドラマがあったんやろなあ。

「でも、詩ちゃん、吹部はやめたんだよね」

「うん……」

 大学行ってからは、吹部どころか、サックスそのものも吹かんようになった。こないだ、女子三人で片づけした時、サックスのケースはクローゼットの奥にしまい込まれてたしねえ……。

「見とれてたら時間が……」

「せや、図書室に行くんやった!」

 慌てて、二階への階段に向かおうとしたら、呼び止められた。

 

「ちょっと、そこの一年生!」

 

「「は、はひ!?」」

 ビックリして立ち止まると、首にホイッスルぶら下げたジャージ姿のオバハンが睨んどる。

「マリア様の前を通る時はお辞儀しなきゃだめだろが!」

「あ、すみません」

 で、とっさに、いつもの癖が出てしもた。

 二人とも、思わず手を合わせて……ナマンダブナマンダブ…………しもたぁ!

「おちょくってんのかあ!」

「すびばせ~ん(ó﹏ò)」

「おまえら、何組だあ!?」

「「B組で……す」」

「ああ、月島先生の……」

 ちょっと嫌な言い方……せやけど、顔には出しません。これ以上絡まれるんはいややさかい。

「憶えとけ、あんたらの体育担当する体育の長瀬だ。で、名前は?」

「酒井さくらです」

「榊原……留美……です」

「声が小さい!」

「さ、榊原留美です!」

「よし、以後気を付けるように!」

「「はひぃ」」

 やっと解放されて図書室へ。

 

「「あれ?」」

 

 図書室と思ったのは図書分室やった。

 もらった校内案内図に図書室とあったので、てっきりと思たんやけど。

「注意書きあるよ……」

「なになに……」

―― ここは図書倉庫です。図書室は外の真理愛館(まりあかん)にあります ――

「「真理愛館?」」

 プリントを見ると、本館の外に真理愛館と書いてある。

 

「ここって……」

「まるで、館(やかた)やぁ……」

 二人そろって、アホみたいに口を開けて二階建ての真理愛館を見上げるばかりでありました……。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      頼子のガード

 

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乙女先生とゆかいな人たち女神たち・18『動画サイトの乱』

2022-04-15 05:29:11 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

18『動画サイトの乱』  

     


 保健室のパソコンには、とんでもないものが写っていた。

 動画サイトに、一昨日の栞の事件が5分余りの映像で流れていたのだ。

『今度は逃がせへんぞ!』

 湯浅とおぼしきオッサンの声から始まった。カメラは、湯浅と梅田の背中を追いかけて戸外に出る。二人の肩越しに、栞がゲンチャで坂道を下って来るのが分かる。驚いて急ブレーキをかけ、姿勢は前傾している。湯浅が前に立ちはだかり、栞のハンドルがぶれ、前輪がスリップして、ゲンチャは旋回しながら倒れていく。『なに、わざとらしい転けてんねん!』と『おい、大丈夫か!?』の二つの声がした。前者は湯浅、後者は、どうやらカメラの持ち主のようである。
 微妙ではあるが、梅田の手がハンドルと栞の上半身の両方にかかっている。引き倒したようにも、転倒する新子を助けようとしているようにも見える。

『進行妨害です。現状保存をして、警察を呼んでください!』

 栞が、ヘルメットを脱いで叫んだ。

『違反ばっかりしくさって、何言うとんじゃ。さっさと立って学校来い! 湯浅先生、ゲンチャ持ってきてください』

 そして、栞はセーラーの襟を掴まえられて、引き立てられていくところまで映像はとらえていた。

 タイトルは『あなたは、どう思いますか』とだけあり、人物の目の所は黒い線で隠されていたが、関係者が見ればすぐに分かる。いや、関係者でなくとも、栞の制服やゲンチャに書かれた屋号で、かなりの人が分かるだろう。

「アクセスと、コメント見てください」

 出水先生に促されて、そこを見ると、投稿から一時間あまりしかたっていないのに、アクセスは1000件を超え、コメントも数十件入っていた。コメントの全てが、二人の教師を非難していた。「進行妨害!」「拉致か!?」「証拠隠滅!」「女の子かわいそう」中には、在校生であろうか、具体的に梅田と湯川の名前をあげて非難しているものまであった。

 五分後、乙女、出水の両先生は校長室にいた。

 ちょうど入学式の来賓が帰ったところで、校長一人だったのが幸いだった。

「これはまずい……!」

 校長は、すぐに動画サイトの会社に電話をして、削除を依頼した。電話のオペレーターは、学校名と校長名を確認してからかけ直してきた。

「どうにか、なりませんか……は、は、しかし……そうですか」
「どないですのん?」
「警察から、当該生徒及び保護者からの依頼が無い限り保存しておくように依頼があったそうです」
「ちょっと、パソコン貸してください」

 乙女先生は、そう言うと『手島法律事務所』を検索して電話した。

「あ、手島さんのお父さんですか?」

 ビンゴだった。

「あ、お父さんも、あの動画ご覧になったんですか……え、分かりました、校長に代わります」
「もしもし、校長の水野です。先日は……ええ、その動画の件なんですが……は、はい、そうですか……そうですね。ご教示感謝いたします。また、いずれお父さんとはお話させてください」

 校長は、言葉少なに、でも納得して電話を切った。乙女先生は両者の頭と理解力が優れている証拠だと思った。

「削除をすれば、人の興味をかき立てるだけだとおっしゃいます。それに、例え削除してもコピーがとられて、拡散する一方、それも加工されたものになるので、何を書かれるか分からないおのことで、オリジナルで放置した方がいいだろうということでした」
「もう、アクセスが1500を超えました」
「とにかく事情聴取ですなあ、緊急の職員会議も……こりゃ、禁足令だな。ところで、出水先生。学校のパソコンでは動画サイトは見られないはずですが」
「モバイルルーターなんです」
「……あ、なるほど。保健室はいろんな情報がいりますからな。ま、公式にはスマホで発見したことにしといてください」

 それから、校長は、梅田・湯浅に動画を見せながら事情聴取を行い、続いて、手島親子に面談した教師全員にも事情聴取と事実確認を行った。

 それを30分で済ますと、職員会議が開かれた。
 会議は、校長からの一方的な説明と指示に終始した。

 マスコミや警察からの問い合わせは、校長に一本化すること。手島栞について懲戒にかかるような問題は無いことの確認。栞が旧担任のところに出した書類を全て、学校長に提出すること。

 さすがに中谷の顔色は変わったが、書類を受け取った記憶はないと、押し通した。

「正直におっしゃっていただかないと、学校長として責務が果たせません。なお、この責務の中には、中谷先生がおっしゃることが正しいことを前提ですが、先生を弁護することも含まれております」
「それは、管理職の越権、恫喝だ!」

―― このオッサン、アホちゃうか ――

 他の教職員も、同意見らしく、沈黙を持ってこれに応えた。

 職員会議のあとは、マスコミの攻勢だ。

 校長は、6時から記者会見に応じるとして、手島親子と連絡をとった。事実確認と氏名を伏せることの確認だったが、事実確認のあと、手島親子は記者会見に同席することを要求してきた。

「マスコミは、ちょっとした言葉尻や、ニュアンスの違いを突いてきます。同席して、同時にやった方がいいでしょう」

 校長は、最後に、梅田・湯浅・中谷の三人に、即刻の自宅待機を命じ、校門前に出た。

「校長、記者会見までには、間がありますが?」
「何か、新しい事実でも?」

 校長は待っていた。そしてマナーモードにしていたスマホが三度振動することを確認した。

「ええ、記者会見の会場のご案内です。会議室では手狭ですので、講堂を使用いたします。30分後開催。それでは、マスコミのみなさんはご準備してください」

 各社は、争って入学式のままの講堂に急いだ。本来、入学式が終わると、昼を挟んで、撤去に移るが、乙女先生が気を利かして、そのままにしておくように首席の筋肉アスパラガスの桑田に言い含めておいた。

 そして、校長宛に三回のコールを送り、マスコミが居なくなった裏門から、神社の軽ワゴンを借りて、自宅謹慎組を護送したのである……。

 

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