大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・136『白いモヤモヤの正体は白虎』

2022-04-30 10:11:20 | ライトノベルセレクト

やく物語・136

『白いモヤモヤの正体は白虎』

 

 

 ホワイトタイガー!?

 アキバ子が空き箱の隙間から目だけ覗かせて叫んだ。

 犬だと思っていたのが虎だったのだから、アキバ子でなくても驚く。

「いや、あれは犬を載せていた白いモヤモヤであるぞよ!」

「犬がやっつけられたんで、姿を現したんだ!」

 そうか、犬と虎でワンセットだったんだ……でも、なんで虎と犬の組み合わせ?

「「どうしてだろ?」」

 チカコとアキバ子は首をひねる。

「犬は十二支で戌の刻、戌の刻は10時の方向。10時は西方の白虎が支配する……だから、犬と虎の二段構えなのよ!」

「御息所さん、頭いいですぅ」

 アキバ子が感心するのを謙遜もせずに御息所は続ける。

「わらわは、東宮の妃じゃぞ。今風に言えば皇太子のお妃じゃ。学識がそなたらとは違うぞえ」

「ふん、女の子しか産めなくて、御所を放り出されたくせに」

「チカコこそ、東エビスの嫁に……」

「ワーー、それ言うなあ!」

「痛い、髪を掴むな!」

「こら、ケンカしてる場合か!」

 パチン!

「「いて!」」

 二人同時にデコピンを食らわせてやる。

「おのれ、連発デコピンを会得しおったな!」

「やくものくせに、生意気よ!」

「まあまあ(^_^;)」

「いい加減にして! 白虎がこっち睨んでる!」

 

 ガオオオオオオ!

 

「吠えた!」「こっち来る!」「逃げましょう!」

 ピューーーーーー!

 あんまりのスピードで逃げるので、四人の悲鳴がホイッスルの音みたくなってしまう。

 ガオオオオオオオ!

 白虎も追いかけてくる。図体が大きいくせにスピードはほとんどいっしょ!

「あ、なんか、曲がっていくよ(;'∀')」

 真っ直ぐ飛んでいるつもりなのに、しだいに左に寄っていく。

「土星の引力に引っ張られてるんです!」

「やくもがノロマだからじゃ」

「御息所喋り過ぎ!」

 バタン

「「「フギャ!?」」」

 うるさいので箱のふたをしめてやる。

 そうだ、コルトガバメントを撃たなきゃ!

 パン パン パン パン

「うう、ダメだ……」

 土星は丸いので、後ろに撃った弾は、丸みのスレスレ向こうを追いかけてくる白虎の頭上を掠めて宇宙空間の彼方に消えていく。

『スピードを落とせ!』

『少し近くなれば水平になって当たりやすくなるわよ!』

『お二人とも、ここは、やくもさんにまかせましょう!』

 もう、三人は無視! ひたすら逃げる!

 ピューーーーーー!!

 しかし、相変わらず、白虎の頭は丸みの向こうに見え隠れしている。距離が開かないよ!

『わたしたちもお手伝いしましょう!』

『どうやって?』

『やくもはフタをしてしまいおったのじゃぞ』

『やくもさん、少しフタを開けてください』

「どうすんの?」

『わたしたちも、ピューって息を噴いて推進力の助けになります!』

「え、息で?」

『三人の息ぐらいではどうにもならないでしょ』

『気は心というやつか?』

『いえ、宇宙空間では、ちょっとした力でも大きな結果を産みます。ボイジャーの推力なんて、ほとんど人の鼻息ほどなんですから。それで、太陽系を飛び出せるんですから!』

『そうなの?』

『はい』

「じゃ、やってみる?」

『『『おお!』』』

 フタを少し開けてやると、三人の口が仲良く揃って息を噴きだす。

 フーー! フーー! フーー!

「おお………」

 やってみるもんね、白虎の姿は、少しずつ丸みの向こうに消えていく。

 フーー! フーー! フーー!

 フーー! フーー! フーー!

 フーー! フーー! フーー!

 フーー フー フ…………………

「ちょっとどうしたの?」

「ちょっと……」

「頭がクラクラ……」

「……してきました」

 ちょっと頼りない……よし、わたしも頑張らなくちゃ!

 わたしも、コルトガバメントを撃つだけじゃなくて、いっしょに後ろに向かって息を噴く!

 フーー! フーー! フーー! フーー!

 パン パン パン パン

 やってみるものね、空き箱のスピードは目に見えて速くなってなってきたよ!

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 アカアオメイド アキバ子 青龍 メイド王

 

 

 

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乙女先生とゆかいな人たち女神たち・33『運命の金ばさみ』

2022-04-30 06:08:28 | 青春高校

乙女先生とたち女神たち

33『運命の金ばさみ』 

        


 月曜は朝から雨だったので、学校周りの掃除は今日の火曜日に延期された。

 掃除の班は学年の縦割りで、栞とさくやは、偶然同じ班になった。

「あら、さくや!?」「嬉しいなあ、先輩といっしょ(^▽^)/」

 しかし、栞たちの受け持ちは、駅から少し離れた切り通しの道という運の悪さだった。何故かというと、そこは先日の地震で地盤が弱っており、地域の人たちも「危ない」と言って近づかない場所だったからだ。乙女先生以外はほとんど地域と連携のないと言っていい希望ヶ丘高校には、事前にそういう連絡がまるで入らず、担当の桑田先生は、あっさりと、そこも清掃区域に入れてしまった。

「どうして、みんなさっさと帰っちゃうかなあ」

 低い切り通しで、その気になれば、薮になった奥まで入っていけるのだが、みんな道ばたの紙くずや空き缶を拾っただけでさっさと学校に引き上げた。
 確かに、そこは片側が切り通し。反対側はちょっとした小川を隔てて傾斜地になった曲がり角で、あまり人目にもつかない。やっぱり、人に見られていないところでは、なけなしの義務感などは、どこかに行ってしまうのが人情というものである。

「奥の方に、ゴミいっぱいありそうですよ……」
「さくやは、無駄に目がいいんだもんなあ……」

 さすがの栞も、そこはパスしたかったが、どこに人の目があるか分からない。近頃では、こういう不用心なところには監視カメラが付けられていることも多い。まして、二人は、ついこないだMNBの五期生に合格し、例の『進行妨害事件』では、栞の顔は地域の人たちに知れ渡っている。

「仕方ないか……」

 栞とさくやは、イヤイヤながら薮に足を踏み入れた、

「う……」
「先輩、ここ見かけは草原やけど、中ジュルジュル~」
「もう、そこのゴミだけ拾って退散しよう!」

 二人は不法投棄されたゴミ袋を三つばかり拾って出てきた……。

「はい、ご苦労さまあ! 集めたゴミは口を縛ってここに置いてねぇ!」

 集積所係の真美ちゃん先生がハンドマイクで声を張り上げていた。
 技師のボス格である鈴木のオヤジが、ゴミ拾いの金ばさみを回収している。

「こら、ちゃんと洗うて返さんか!」

 鈴木のオヤジの声で、栞は気がついた。

「しまった、金ばさみ!」

 ジュルジュルに足と気を取られて、忘れてきたのである。

「先輩、さくやが行ってきます」
「いいわよ、忘れたのわたしだもん。行ってくるわ」
「これもMNBの修行や思てなあ。次の授業遅れんなよ!」

 学年生指の磯野が、大きな声で嫌みを言う。
 栞は、振り向けば皮肉の一つも出そうなので、何も言わずに校門を出た。
 こんなことで遅刻して、ネチコく言われるのも願い下げだったので、現場まで駆け足で向かった。

 グチュグチュ~

 靴は一足ごとに水を含んだ音がした。買って、まだ半月ほどのローファーがダメになるなあと思いながら、時計ばかり気にして現場へと向かった。

 さすがに途中でローファーと靴下は脱いだ。グチュグチュはグニュグニュに変わって薮の中に突き刺したままの金ばさみに気づいた。

「あった~!」

 そして、次の一歩を踏み出したところで、空と地面がひっくり返った……。

 キャーーーーーーー!

 

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