せやさかい・327
スワンナプーム空港(タイの国際空港)では、ちょっと待たされた。
飛行機いうのは車みたいに、空いてるとこに止めたらええというもんではないんですね。
管制塔からの指示があって、地上で誘導するスタッフが配置について、荷物下ろすカーゴが横付けして、給油と整備のスタッフもやってきて……。これが、通常の国際便やったら、テキパキと進むんやろけど、うちらはプライベート機。それも双発の軍用機なんで、すぐにはいかへんみたいです。
「クイズ出しまーす(^▽^)/」
メグリンが退屈しのぎにクイズというかナゾナゾを出してくれる。
「……じゃ、つぎ! 今から言う国の首都を言ってください!」
「おう、どんとこいや!」
「アメリカ」ーー「ワシントン!」
「オランダ」ーー「アムステルダム!」
「フランス」ーー「パリ!」
「イギリス」ーー「ロンドン!」
「エジプト」ーー「カイロ!」
「モンゴル」ーー「えと……」「ウランバートル!」
「ロシア」ーーー「モスクワ!」
「ウクライナ」ー「えと……」「キエフ」「今はキーウだよ」
「中国」ーーーー「北京」
「韓国」ーーーー「ソウル」
「バンコク」ーー「えっと……」「バンコク?」「どこだっけ?」
ここでつまると、ソフィーがニヤニヤ。
着てる軍服からヘアスタイルまで、印象は攻〇機動隊の草〇素子少佐(いちばん新しいバージョンの)のソフィー。ソフィーは、まだ駆け出しの少尉やけど、空中給油と着陸以外はみごとに決めた。
で、バンコクの首都は?
「ここですよ、バンコクはタイの首都」
メグさんが横から種明かし。
「メグリン、なかなかやるねえ」
頼子さんも機嫌がいい。
「迎えの車が来ました」
メグさんがドアを開ける。ソフィーは再びコクピットへ。
車は大使館のワンボックス。で、税関を通ることも無く特別ゲートから空港の外へ出た。
「はい、これを渡しておきます」
メグさんが、一人一人にIDを渡してくれる。
Lady's maid?
「え、侍女なんですか、わたしたち?」
直ぐに分かった詩(ことは)ちゃんが質問。
「ごめんね、こうしないと通関とかややこしいから」
頼子さんがすまなさそうな顔。
「万一のことがあったら、王室関係者にしておいた方が簡単にすむんですよ(^_^;)」
メグさん、万一のことて……あんまり想像はせんことにします。
「うわあ、見て見て、パゴダだよ!」
留美ちゃんがキョロキョロ。
確かに、道路から見える景色の中にはごりょうさん(仁徳天皇陵)みたいな緑の合間に、アイスのコーンをひっくり返したような屋根が窺える。
「なんやのん、あれ?」
「パゴダよ。お寺の仏塔」
「あ、うちの如来寺みたいな?」
「そう、タイは仏教国だからね」
詩ちゃんは大学生なだけあって、詳しい。
「トランジットみたいなものだから、外に出て観光するわけにはいかないけど、えと……あの大きなパゴダがね……」
まるで大阪市内の観光スポットを説明するような頼子さん。やっぱりプリンセスはちがう!
車内のモニターにはバンコク周辺のグーグルアースやら、近辺の観光スポットなんかが映し出され、メグさんと頼子さんが説明してくれる。
ヤマセンブルグの都合=自分の都合で長旅をさせてることへの気遣いやろねんね。
うちらは、ぜんぜん気にしてないねんけど、こういうとこにも気を配るのは、やっぱりうちらの頼子さん。
この気持ちには応えならあかんと思うねんけど……うちの頭で考えてもすぐには思いつかへん。
この旅行を楽しむことが、頼子さんの気持ちに応えることに繋がる……いまは、そう横着に考えときます。
パゴダを囲む緑が近代的なビル群に置き換わって大使館に着きました。
晩ご飯の頃にはソフィー少尉も戻ってきて、そして、そのソフィーも私服に着替えると頼子さんの呼び方も変えてる。
殿下からリッチ。
リッチいうのはヨリッチがさらに短縮というか親し気になったもんで、百武真鈴(高校生声優)ことクラスメートの田中真央が広めたらしい。
そう言えば、百武真鈴の勧めで『恋するマネキン』のノルンの女神の声をやった頼子さん(285回)はすごかった。
もっかいやってくれへんやろか!?
「リッチ、もっかいやんなよ!」
お友だちモードでせまったソフィーは本気やったと思います。
そして、二日目のあたしらは、再び飛行機に乗って、インドはニューデリーのインディラガンジー国際空港を目指します。
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
- 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
- 夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
- ソフィー 頼子のガード
- 月島さやか さくらの担任の先生
- 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン