大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・327『初日の夜はバンコクで』

2022-08-04 10:05:18 | ノベル

・327

『初日の夜はバンコクで』さくら   

 

 

 スワンナプーム空港(タイの国際空港)では、ちょっと待たされた。

 

 飛行機いうのは車みたいに、空いてるとこに止めたらええというもんではないんですね。

 管制塔からの指示があって、地上で誘導するスタッフが配置について、荷物下ろすカーゴが横付けして、給油と整備のスタッフもやってきて……。これが、通常の国際便やったら、テキパキと進むんやろけど、うちらはプライベート機。それも双発の軍用機なんで、すぐにはいかへんみたいです。

「クイズ出しまーす(^▽^)/」

 メグリンが退屈しのぎにクイズというかナゾナゾを出してくれる。

「……じゃ、つぎ! 今から言う国の首都を言ってください!」

「おう、どんとこいや!」

「アメリカ」ーー「ワシントン!」

「オランダ」ーー「アムステルダム!」

「フランス」ーー「パリ!」

「イギリス」ーー「ロンドン!」

「エジプト」ーー「カイロ!」

「モンゴル」ーー「えと……」「ウランバートル!」

「ロシア」ーーー「モスクワ!」

「ウクライナ」ー「えと……」「キエフ」「今はキーウだよ」

「中国」ーーーー「北京」

「韓国」ーーーー「ソウル」

「バンコク」ーー「えっと……」「バンコク?」「どこだっけ?」

 ここでつまると、ソフィーがニヤニヤ。

 着てる軍服からヘアスタイルまで、印象は攻〇機動隊の草〇素子少佐(いちばん新しいバージョンの)のソフィー。ソフィーは、まだ駆け出しの少尉やけど、空中給油と着陸以外はみごとに決めた。

 で、バンコクの首都は?

「ここですよ、バンコクはタイの首都」

 メグさんが横から種明かし。

「メグリン、なかなかやるねえ」

 頼子さんも機嫌がいい。

「迎えの車が来ました」

 メグさんがドアを開ける。ソフィーは再びコクピットへ。

 

 車は大使館のワンボックス。で、税関を通ることも無く特別ゲートから空港の外へ出た。

 

「はい、これを渡しておきます」

 メグさんが、一人一人にIDを渡してくれる。

 Lady's maid?

「え、侍女なんですか、わたしたち?」

 直ぐに分かった詩(ことは)ちゃんが質問。

「ごめんね、こうしないと通関とかややこしいから」

 頼子さんがすまなさそうな顔。

「万一のことがあったら、王室関係者にしておいた方が簡単にすむんですよ(^_^;)」

 メグさん、万一のことて……あんまり想像はせんことにします。

「うわあ、見て見て、パゴダだよ!」

 留美ちゃんがキョロキョロ。

 確かに、道路から見える景色の中にはごりょうさん(仁徳天皇陵)みたいな緑の合間に、アイスのコーンをひっくり返したような屋根が窺える。

「なんやのん、あれ?」

「パゴダよ。お寺の仏塔」

「あ、うちの如来寺みたいな?」

「そう、タイは仏教国だからね」

 詩ちゃんは大学生なだけあって、詳しい。

「トランジットみたいなものだから、外に出て観光するわけにはいかないけど、えと……あの大きなパゴダがね……」

 まるで大阪市内の観光スポットを説明するような頼子さん。やっぱりプリンセスはちがう!

 車内のモニターにはバンコク周辺のグーグルアースやら、近辺の観光スポットなんかが映し出され、メグさんと頼子さんが説明してくれる。

 ヤマセンブルグの都合=自分の都合で長旅をさせてることへの気遣いやろねんね。

 うちらは、ぜんぜん気にしてないねんけど、こういうとこにも気を配るのは、やっぱりうちらの頼子さん。

 この気持ちには応えならあかんと思うねんけど……うちの頭で考えてもすぐには思いつかへん。

 この旅行を楽しむことが、頼子さんの気持ちに応えることに繋がる……いまは、そう横着に考えときます。

 パゴダを囲む緑が近代的なビル群に置き換わって大使館に着きました。

 晩ご飯の頃にはソフィー少尉も戻ってきて、そして、そのソフィーも私服に着替えると頼子さんの呼び方も変えてる。

 殿下からリッチ。

 リッチいうのはヨリッチがさらに短縮というか親し気になったもんで、百武真鈴(高校生声優)ことクラスメートの田中真央が広めたらしい。

 そう言えば、百武真鈴の勧めで『恋するマネキン』のノルンの女神の声をやった頼子さん(285回)はすごかった。

 もっかいやってくれへんやろか!?

「リッチ、もっかいやんなよ!」

 お友だちモードでせまったソフィーは本気やったと思います。

 

 そして、二日目のあたしらは、再び飛行機に乗って、インドはニューデリーのインディラガンジー国際空港を目指します。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      頼子のガード
  • 月島さやか     さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン

 

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漆黒のブリュンヒルデQ・076『利根4号機・5』

2022-08-04 06:27:32 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

076『利根4号機・5』   

 

 

 敵空母艦隊への攻撃が決まったのは、利根四号機が三度目の索敵情報を伝えた時だ。

『敵空母より攻撃機多数が発進しつつあり、敵攻撃隊の進路は……』

 利根四号機の報告は敵攻撃隊が真っ直ぐ南雲艦隊を目指していることを示している。そして、この時点になると他の艦の索敵機も同海域に到着し、利根四号機と同じ報告をあげてきた。

 事態は明らかになった。南雲の航海参謀が天測をあやまり、実際よりも150海里も離れた位置に固執していた。利根の航海士の方が正しかったのだ。

 南雲は航海参謀を責めることもせず、ただ、攻撃隊の装備を艦船攻撃用に切り替えろと命じた。

 バカか!?

 すでに敵艦隊からは攻撃隊が発進してしまっている。こちらの準備が整はぬうちに攻撃が加えられれば、一方的に叩かれるのは南雲艦隊だ。緊急退避のためにも飛行甲板は空にしなければならない。

『兵装転換急げ!』

 赤城の艦橋からは兵装転換を急かせる檄が飛ぶばかりである。

「無能なやつらだ!」

 利根四号機の発進を間に合わせてやったが、結果は変わらない。このままでは、高い確率で日本艦隊は壊滅する。

 
 利根に戻るか。

 
「おまえのコンパスは間違っていなかったな」

 航海長が航海士に声をかけただけだ。

 赤城の幕僚たちを非難する声は、それ以上に上がることは無かった。

「対空警戒を厳となせ、対空戦闘配置、面舵フタジュウ、艦を赤城の左舷に寄せよ。赤城を護る」

 艦長は落ち着いた声で転舵を指示、操舵主の兵曹が「面舵フタジュウ」を復唱、利根は面舵を切った反動で少し左舷に傾いた。それにつれて右舷対空見張り員の双眼鏡が五度ばかり上を向いた。

「赤城直上に敵機! つっこんでいく!」

 艦長たちの双眼鏡が赤城に向けられる。赤城の飛行甲板は兵装転換の真っ最中だ。

 直後、赤城の飛行甲板に着弾、火の神ロキが立ち上がったような火柱が上がった。

 ズッゴーーーーン! ズゴゴゴーーン! ズゴーーーン!

 あっという間に、むき出しの魚雷や爆弾に引火して、赤城の飛行甲板は紅蓮の炎に包まれる。

「四号機の発進を間に合わせても結果はかわらないか……」

 ミッドウエー海戦は史実通りに日本海軍の大敗北で終わろうとしていた。

 肩の力が抜けるとフッと立ち眩みに似た浮遊感に襲われ、貧血を起こしたように視界が暗くなっていった。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 福田るり子             福田芳子の妹
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の猫又 54回から啓介の妹門脇寧々子として向かいに住みつく
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • スクネ老人             武内宿禰 気長足姫のじい
  • 玉代(玉依姫)           ひるでの従姉として54回から同居することになった鹿児島荒田神社の神さま
  • お祖父ちゃん  
  • お祖母ちゃん            武笠民子
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
  •  

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・24『「「イーーーーダ!」」』

2022-08-04 06:07:15 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

24「「イーーーーダ!」」 

 



 受かってしまうと人間が変わった……いや、戻ってしまった。

「ちょ、じゃま」


 洗面で顔を洗っていたら小菊が割り込んできた。

 うちの洗面は二人同時に使えるくらいの幅がある。実際に小菊以外の家族とは平気で共用しているし、小学校のいつごろまでだったかは小菊もそうしていた。

 夏休みとかに松ネエが来た時なんか子供三人で仲良く顔洗って歯を磨いていたしな。

 じっさい夕べは松ネエと俺はいっしょに歯を磨いたぞ。そーだよ、小菊が四つで歯を磨き始めた時、忙しい親に代わって磨き方を教えてやったのは俺なんだからな。

「小菊、俺以外の時は割り込んだりしないよな」

「うっさい、たまたまよ、たまたま」

 小菊は、他の家族が使っている時には空くのを待っている。傍若無人だけど割り込んでくるのは、家族の中でも、俺のことをどこか親しみやすいと思っているのかもしれない。そう思うと、ほんのちょっぴりだけど可愛く思わないこともない。

「いま変なこと考えたでしょ」
「ねーよ」
「だめよ、あんたは、こういう時鼻が膨らむんだから」

 お前だってドヤ顔するときは盛大に鼻膨らませてんだろぉが……思ったけど口には出さない。

 その代り別のことを聞いた。

「どうして俺と同じ神楽坂受けたんだよ?」

「神さまのお告げ」
「は?」
「…………」

 答えが無いと思ったら、密やかに歯を磨いている最中だ。

「やっぱ、兄貴と同じ学校ならなにかと便利とか思ったか?」

「ングッ、んなわけないれしょ-!!」

 泡だらけの口で否定した。

「磨き終ってから喋れ!」

 小菊の泡がシャツに飛び散ったのを急いで拭う。歯磨きには漂白剤とかが入っているので色が抜けることがあるからな。

「ガラガラペーッ! 言っとくけど、学校で兄妹面なんかしないでよね!」
「おせーよ! 合格発表の時にバレてるよ!」
「え、なんでよ!?」
「おまえ、掲示板の受験番号こすって注意されただろーが!」
「あ、あんたが宝くじの話なんかすっから、間違いじゃないかと念を入れてしまったのよ!」
「あれで、堂本ってオッサンに『あれ、お前の妹か』って言われちまったよ」
「え、あのクサレメタボに!?」
「だいいち、うちの妻鹿って苗字じたい、ちょっと珍しいからな」
「じゃ、とおーいとお-ーーーーい親類っ! いいわね、学校で口なんかきくんじゃないからね!」

 ボフ!

 使用済みの濡れタオルを俺の顔に投げつけ、プリプリとケツを振りながら小菊は階段を上がっていった。

 歯磨きがとれたのを確認して俺も階段を上がる、俺はこれからお出かけなのだ。

「「イーーーーダ!」」

 兄妹いがみ合いながらそれぞれの部屋に入る。

 リュックを手に出かけようとするとスマホが鳴った。

「ん?」

 画面を見るとシグマ。

――すみません、都合で家を出られなくなってしまいました。またいずれ――

 出かける用件が無くなってしまった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校二年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校一年
  • 妻鹿小菊           中三 オメガの妹 
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校二年 雄一の数少ない友だち
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任

 

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