大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・329『オリエント急行○○事件!』

2022-08-06 14:58:16 | ノベル

・329

『オリエント急行○○事件!』さくら   

 

 

 故障というわけやないねんけど、ちょっとした不具合が見つかったんで部品交換の為に飛行機が飛べんようになった!

 

「部品交換のためにニ十四時間は飛べないんで、その代わり、オリエント急行でウィーンまで行きます!」

 ベテランツアーコンダクターみたいに頼子さんが宣言する。

 ソフィーが持ってきたメモを見て言ってるねんけど、まるで自分が考えて結論出したみたいに力強い。

 これも、王女さまとしての努力と才能やねんやろね。

 信頼のおけるスタッフが決めたことは、自分の決定として国民に伝えて安心感を与える。一朝一夕でできる芸やない。

 次に、ダイニングの隅でスマホをチェックしてたメグさんが頼子さんに耳打ち。

「え、そうなの!?」

 素の頼子さんに戻ってビックリ。ビックリすると目が二割増し大きくなる(目を見開くわけですねえ)のが可愛らしい。ほら、プリクラの補正で目を大きくするの、あれが自然にできてしまうんよ。

「マーガレット(メグさんの正式名)が副操縦士に、ソフィア(ソフィーの正式名)がバトラーをやります」

「イエス、マム」

 ソフィーが踵を鳴らして敬礼する。

「申し訳ありません、説明が不十分でした」

「え?」

「ソフィーと交代しますが、エディンバラ到着までは、このわたしが緊急事態の対応まで織り込んで手配済みです」

 ドンと胸を叩くメグさん。

「ですから、ソフィアは殿下といっしょに行動するだけでいいんです」

「それは、どういう意味ですか、少佐?」

 え、メグさんリアル少佐やったん!?

「軍服を脱いで私服に着替えなさい、ソフィー」

「承知しました! ソフィア少尉、私服に着替え少佐よりバトラーの任務を継承します!」

「だからぁ、バトラーはわたし。全部段取りはつけてあるから、ソフィーは着替えたら、殿下のクラスメートで散策部の部員です。分かった?」

「え、あ、はい」

「understand?」

「understood mam!」

 二人そろってダイニングを出ると、頼子さんが噴き出して、みんなに伝染してしまう。

 フフフ( *´艸`) ハハハ( *´〇`)

 関空からこっち、ソフィーは副操縦士とSPの立場でガチガチやった。

 それで、飛行機が具合悪なったのをきっかけに開放してあげたいうのがホンマのとこやと思います。

 

 ウワアアアア(꒪ȏ꒪)!

 

 駅に着いてビックリしたのは、あたしらだけやない。

 ホームに居あわせたトルコの人やら旅行者やらが貨物のホームで写真を撮ったり歓声をあげたり。

「ああ、やっぱりこうなるわよねえ……」

 あたしらは、ホームの群衆を前にたじろいでしまう。

「いちおう貨物扱いなんだけどね……チェックしてみる」

 頼子さんがため息をつく横でソフィーがお友だちモードでスマホを操作

 食堂車を含めて三両のオリエント急行は正規の列車編成とちゃうんです

 オリエント急行いうのは、もう何年も前に廃止されてて存在せえへんのです。

 今回は、アメリカ人のお金持ちがトルコに残ってた車両を買いとって、オーストリアの工場に移動させるのに便乗するんです。これも、ヤマセンブルグ諜報部のテクとかコネとかやねんやろねえ。

 前後には機関車も含めて十二両、その最後尾四両のうち三両が青い車体のオリエント急行。

「いま乗ったら目立ちすぎるわねぇ」

 なにごとも控え目な留美ちゃんは、目立つのが苦手。

 それに、頼子さんはプリンセス。あんまり目立つ行動はでけへん。見つかったらすぐに写真とか動画に撮られてSNSにアップされてしまうしね。

「……いちおう配慮はしてあるみたいよ、リッチ」

「え、これで?」

「みんな、こっちこっち」

「あ、そっちは……」

 鉄道ファンの群れの中に入って行くのかと思ったら、その手前の最後尾の車両。

 貨車みたいやけど、入り口と小さな窓がいくつか付いてる。車掌さんやら作業の人を収容する車両。

 うちらが近づくと、中の方からドアを開けてくれる。どうやら話はついてるみたい。

「発車してホームを離れたら、前の方に移るよ」

 ソフィーにそう言われて、窓の外から見えへんように息を潜める。

 

 プォーーーーーーン

 

 貨物列車やから、出発のアナウンスも発車のベルもない。

 ガッタン   ゴットン  ガッタン  ゴトン ガタン ゴトン ガタン ゴトン……

 列車がホームを離れて、さすがに車や自転車で追いかけてくる日本のテッチャンみたいなのはおらへんみたい。

 車掌さん的なオッチャンにお礼を言うて、前の車両に移る。

 

 オオ……………ウワア……………スッゲー………………

 

 みんな静かに感動。

 ゴージャスやねんけども下品やない、 高級そうやねんけどえらそぶってない、 みんな静かに感動……。

「せやけど、どこに座ったらええのん?」

 ゴージャスな車内の椅子やらテーブルには白いシーツみたいなんが掛けてあって、座るとこがない。

「コンパートメントが二つ使えるよ」

「コンパートメント?」

「個室のことよ、行ってみよ!」

 頼子さんに先導されて前の車両に行く。編成は前の方から食堂車・コンパートメント車・サロン車。

「うわあ、ハリーポッターが魔法学校行くときに乗ったやつみたい!」

「あれより、豪華だよ!」

「ワインセラーがある!」

「なにも入ってないけど!」

「中にもドアがあるでぇ!」

「勝手に開けちゃ……」

「うわ、シャワー室や……水もお湯も出えへんけど」

「営業車じゃないからね」

「わたしでも余裕で座れる!」

「外のお手洗い、どこかなあ……」

「進行方向の前だよ」

「みんなで見に行こ!」

 ゾロゾロ

「うわあ、お洒落!」

 お手洗いも、木目の壁で、フックとかドアノブとかレバーとか、ピカピカの金色。

「ウォシュレットじゃないんだね……」

「けど、便座はぬくもりのマホガニー!」

「注意書きがあるよ」

「英語は読めまっせーん」

「なになに……停車中は使わないでください」

「これって、そのまんま線路に落ちる式だ(^_^;)」

「だ、だいじょうぶよ。停車中使わなきゃいいんだから」

「でも、ヨーロッパの列車って、平気で一時間二時間停まってるよ」

「ええ、そうなのぉ!?」

「おう、向こうにも探検に行こうぜ!」

「ちょ、さくらぁ」

「ここにも、なんか書いたある……Japanだけ読める」

「なになに?」

「……ええ、これ、日本で走ったことがある車両だよ!?」

「オリエント急行は広軌と標準軌です、狭軌の日本じゃ走れませんよ」

「1988年に、バブルにものを言わせて、パリ発東京行を一編成だけ組んだことがある。その時の車両だよ」

「え、でもレールの幅が……」

「広島の工場で台車を付け替えたのよ」

「でも、途中、海を渡るでしょ?」

「翼とジェットエンジン付けて飛んできたのよ」

「え、ほんとですか!?」

「ウソよ、香港から広島までは船に積んできたの」

「もう、ソフィーは夢がないんだから」

「リッチのは、夢じゃなくてヨタだよ」

「ムーー」

「みんなぁ、食堂車も入れるよ!」

 ゾロゾロ……

 ああ…………

 食堂車は、ちょっと期待したんやけど、サロン車と同じようにシーツみたいなん掛けられて、使用はでけへんみたい。

「でも、24時間乗ってるわけですよね……」

「そうだよね……飲み水とか食事とか、どうするんだろ?」

「厨房の湯沸かしは使えるそうです。食料も……あ、その段ボールに」

「うわ、なんやろなあ(^ω^)……」

 ベリベリ

「え、なにこれ?」

「あ、戦闘糧食」

「戦闘糧食って、軍隊の?」

「フランス、イタリア、自衛隊……うん、比較的おいしい軍隊のがそろってる」

「あ、そう、ちょっと楽しみかも」

 さっそく、食堂車のテーブル二つを使えるようにして、戦闘糧食ランチ。

 意外に美味しかった。

 ソフィーが静かに予定をチェック。

「……次の駅は、90分停車」

「「「「「え?」」」」」

 ジャンケンして、みんな、交代でお手洗いに行きました(^_^;)

 

 ジャンケンでビリケツになって、お手洗いから出てくると、ソフィーが腕組みして思案顔。

「どないしたん、ソフィー?」

「うん……殺人事件が起こったのは、どこかと思って」

「さ、殺人事件!?」

「オリエント急行と言えば……殺人事件だろうが……」

「ちょ、ソフィー、目がこわい(;'∀')」

 

 キャーーーー!!

 

 そのとき、コンパートメントからえげつない悲鳴が聞こえてきた!

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      頼子のガード
  • 月島さやか     さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン

 

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漆黒のブリュンヒルデQ・078『ひるでの行水・1』

2022-08-06 06:26:44 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

078『ひるでの行水・1』   

 

 

 
 クロノスが付いてきた理由が分かった。     

 
 わたしは、自分の意思に反して行水をしている。

 外で行水なんかできるかあああああああ(`#Д#´)!! 

 叫んだのだが、体の自由がきかず、その場で素っ裸になってお湯を満たした盥に半身を浸している。

「さすがオーディンの娘、見事な体をしておるなあ……」

「み、見るなあ(xДx)!!」

「恥ずかしがるなぁ、ヒンダルフィヨルの麓の川でグズルーンと口喧嘩した時は互いスッポンポンで行水の真っ最中だったじゃないか」

「あ、あれは、女同士だ! 周りに人の気配も無かった! 今みたいに変態ヒヒジジイも居なかったしな!」

「おや……哀れな、傷があるではないか、わき腹と股の付け根に」

「れ、歴戦の姫騎士だ! 古傷の一つや二つはある!」

 日ごろは魔力で隠しているが、お湯につかるとホンノリ……いや、かなりハッキリ浮き出てしまう、特に今のような状況ではな。

「どれどれ……」

「み、見るな! 来んな! 触るなあああああ!」

 気持ちは100%拒絶しているのだが、か、体が……(;゜Д゜)……じっと見るだけではなく、クロノスは古傷を撫でまわし始めた~~~~~~(;'∀')(;゜o゜)(;゜Д゜)

  しょぼくれたクソジジイだが、なんせゼウスとポセイドンの父親、魔力ではとてもかなわない。

「さ、さ、触んなぁぁぁ撫でるなぁぁぁぁ……ひぃぃぃぃぃぃ」

「よし、これでいい」

「ん……?」

 古傷がきれいに消えてしまった。

「な、治してくれたのか?」

 意外に優しい?

「ああ、これからの任務に差し支えるからなあ」

 任務だと?

 疑問符が立つと同時に汽笛が聞こえてきた。

 ポーーーーーーーーー!

「間に合ったか」

「お、おい!」

 この庭は土手道から丸見え!?

 上の土手からは蒸気機関車の乗客、その下の土手道からは通行人から丸見えなのだ!

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 福田るり子             福田芳子の妹
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の猫又 54回から啓介の妹門脇寧々子として向かいに住みつく
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • スクネ老人             武内宿禰 気長足姫のじい
  • 玉代(玉依姫)           ひるでの従姉として54回から同居することになった鹿児島荒田神社の神さま
  • お祖父ちゃん  
  • お祖母ちゃん            武笠民子
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
  •  

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・26『お祖母ちゃんが突然やってきたワケ』

2022-08-06 06:05:59 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

26お祖母ちゃんが突然やってきたワケ 



 お祖母ちゃんは思い立ったらすぐの人だ。

 若いころに、お好み焼きのお店に入って「めちゃくちゃ美味しい!」と大感激。お勘定をしてもらいながらバイトを申し込み、三か月働いてノウハウを覚えると、直ぐに自分の店を出したらしい。

 買い物に行って、人さまのムームーやアロハがダサいと感じて、あくる日には衣料品の店を出してしまったこともある。

 お祖父ちゃんと出会ったら「この人だ!」と猛烈にアタック。一か月後には結婚し、十一カ月後にはお母さんが生まれている。

 あたしが生まれた時も「神さまの啓示があった!」と叫んで飛行機に乗り、生まれた病院に直行し「孫娘を抱っこしたい!」と詰め寄った。新生児は24時間はガラス張りの新生児室から出せないので、ガラスに貼りついてスリスリしていたとか(^_^;)。

「お母さん、明日には抱っこできますから」

 お父さんが言うと。

「義男さん、この子の名前!」
「え、あ、それはまだ」
「ミコになさいな、響きがいいし、縁起もいいの。字はね……」

 電子辞書を出して検索し「美」が気に入って、その押し出しのまま、あたしに美子という名前を付けてしまった。

 美子ってのは普通「よしこ」って読まれる。

 以前は、名前を伝えるたびに「ミコって読みます」と注釈していた。

 でも中学からこっちはシグマで通っているので、まっいいや。

 今回は何を思い立ったかというと……。

「ミコ、この写真に写ってるのはなんという?」

 うちに来るなり写真を見せた。ウインドブレーカーの下には、あのTシャツを着てるけどスルーしておく。

「えと、皇居?」

 見たマンマを答える。

「んーーーーーミコもそうかぁ(-_-;)」

 お祖母ちゃんは、まるで外人を見るような目であたしを見る。

 てか、お祖母ちゃんこそ外人なんだけどね。

 日本語はペラペラだけど、髪はブロンドで目は青い。

 名前はミリー・ニノミヤ。お祖父ちゃんはとっくに亡くなったけど、お祖父ちゃんの苗字を大事にしている。

「写真に写ってるのは橋だろ?」
「え、ええ?」

 確かに写っているのは皇居前広場から見た二重橋だ。

「不思議だよねーーーー」

 ということで、先輩との約束をキャンセルして皇居前広場に行くことになった。

「ちょとスミマッセーン」

 わざとカタコトの日本語になって皇居前広場の人たちに聞くから恥ずかしい。

 お祖母ちゃんとあたしには共通点がある。

 お祖母ちゃんの口もΣなんだ。

 でも、お祖母ちゃんのΣ口はチャーミングだ。

 チャーミングなΣ口をアヒル口とも言う。グニュっと尖がったところに愛嬌がある。

 子どものころ、ディズニーランド(アメリカのね)に連れて行ってもらって、ドナルドダックに初めて会って、親類に違いないと思いこんだこともあるんだって。

 普通の口でもアヒル口はできるけど、わざとらしくなる。お祖母ちゃんのは天然だし、アヒル口に見合った活発さと愛嬌がある。

 わたしのアヒル口も天然なんだけど、肝心の活発さと愛嬌が無い。だから、ただ尖がってるとのみ認識されてΣと呼ばれる。

 お母さんはΣでもアヒル口でもない普通。どうやらお祖母ちゃんの形質的隔世遺伝。

「お祖母ちゃんと比べっこしよう」

 中学の時、鏡に映して比べたことがある。

「ハハ、ミコとお祖母ちゃんはいっしょだね。口元がとってもチャーミング、そうだ! これTシャツにプリントしよう!」

 藪蛇で、お祖母ちゃんは、あたしとのツーショットをイラスト化してしまった。

「これ、お店でも良く売れてるよ!」

 でもって、皇居前広場に来たあたしはおソロのTシャツ。肌寒いからと言い訳してカーディガンを着てるんだけどね。

 とにかくエネルギッシュなお祖母ちゃんにはかないません。これで、先月は心臓発作で死にかけたんだけどね。

 

 そんなお祖母ちゃんと、昨日と今日はアキバに来ている。

 

 アキバはあたしのお庭みたいなもんなんだけど、久々にアキバでノビてしまった。

 いろいろ話題を提供してくれるお祖母ちゃんなんだけど、またいずれお話します(^_^;)。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校二年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校一年
  • 妻鹿小菊           中三 オメガの妹 
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校二年 雄一の数少ない友だち
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任



 

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