大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・332『いよいよエディンバラ』

2022-08-09 14:08:57 | ノベル

・332

『いよいよエディンバラ』さくら   

 

 

 頼子さんは99%ヤマセンブルグの王女さま(正式には日本国籍を捨てんとなられへん)なんで、言葉が丁寧。

 

 ビックリするときも「ま!」「え!」「わ!」ぐらいの優しい驚き方をする。

 年に何回か、ほんまにビックリした時は「ゲ!?」とか「ゲゲ!?」とか「ゲゲゲ!?」とか驚き方をして『ゲゲゲの頼子』になってしもて、ああ、やっぱり、うちらのお仲間なんやぁ(^0^)とうれしくなる。

 ま、それは、ちょと置いといて。

 うちらは、ウィーンでオリエント急行を下りて、ウィーン観光は駅から空港に向かう車の中で見るだけ。空港に着いたら、そのままイスタンブールで修理しおわって飛んできた飛行機に乗って、最初の訪問地であるエディンバラに着いたわけです。

 今日で三日目になる移動で、さすがに疲れ果て、飛行機の中でも空港からの車の中でも、ほとんど寝てた。

 お屋敷は、エディンバラ市街の手前のホリウッドいう丘の上にある。

 もうちょっとで、そのお屋敷に到着という時に、頼子さんの「ゲゲゲ!?」の驚き声で目が覚めた。

「ええ、なに~~?」

 ネボケまなこでバックミラー見ると、バスの後ろの方を走ってる二人の女の人が小さく見えた。

「三年ぶりのホリウッド、懐かしいでしょうから、少し回ってからお屋敷に向かいます」

 運転手のジョン・スミスが、彼にしては長すぎる注釈をして、ホリウッドを周る道にハンドルを切る。

 小さな動物園や公園、丘の上から望めるエディンバラの遠景……それなりに「懐かしい」んやけど、長旅に疲れたあたしらは、正直、早く着いて休みたい。

 それでも十分ほどすると、ホリウッドの周回を終えて、お屋敷に向かう。

 ヤマセンブルグの国章の付いたゲートを入って、クニっと曲がると、お屋敷本館へのアプローチ。

「わ、すごい!」

 初めてのメグリンが感嘆の声を上げる。詩ちゃんはさすがに声は上げへんけど、口に手を当てて驚いてます。

 屋敷中のメイドさんや執事さんが居並んでお迎えしてくれてます。

 アキバとちゃうさかい「お帰りなさいませ、ご主人さま~」は言わへんけど、王侯貴族のお出迎え。

「ゲゲゲ!?」

 うちも、同じように驚いてしもた!

 お出迎えの正面には、ヤマセンブルグの女王陛下(頼子さんのお祖母ちゃん)が、サッチャー……いや、イザベラのおばはんを従えてにこやかに立ってるやおまへんか!?

 で、二人とも、さっきバックミラーで小さく見えたジャージ姿やおまへんか!?

 そうか、頼子さんは動物的な警戒心で、天敵を早期発見したわけなんや!

 

「ようこそ、エディンバラへ! 待ちわびたわよぉ! いまいましい流行り病のために丸二年も会えなかったけど、まあまあまあ! こんなに大きくなって! こんなに美しくなって! やっぱり、スカイプだけじゃ、ヨリコの成長や美しさは分からないわねえ! サクラとルミも元気そうでなによりです! 始めてこられたメグリ、コトハも大歓迎です! どうか、素敵な、思い出深いバカンスを過ごしてちょうだいね!」

「ほんとうに、プリンセスはお若いころの陛下そのままでございます!」

 サッチャー、いやイザベラのおばはんも、胸に手ぇ当てたりして、眠れる森の美女が結婚する時の魔法使いの婆さんみたい。

「ありがとうお祖母ちゃん、ありがとうスタッフのみんな。ここまでの旅も楽しかったけど、みんなの心のこもったお出迎えも心にしみます」

 そして、頼子さんは女王陛下とハグするねんけど、その時交わされたヒソヒソ話を、うちは気いてしもた。

『なんなのよ、このジャージ姿は?』

『気に入った?』

『さっき、このジャージで走ってたわよね?』

『安心して、あれは、すぐ洗濯にまわして、わたしもイザベラもおニューのを着てるから』

『いや、そうじゃなくて……』

『だいじょうぶ、あなたたちのも用意してあるから』

『いや、だから』

『それは、あとのお楽しみ』

『お祖母ちゃん!?』

「さあ、みんな疲れたでしょ、まずは、それぞれのお部屋でくつろいでちょうだい!」

「ご案内を!」

 イザベラのおばはんが締めくくると、みんな、一斉に「イエス、マム!」の返事をして、うちらは、それぞれの部屋に搬送されてしもた。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王位継承者 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      頼子のガード
  • 月島さやか     さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 女王陛下      頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 

 

 

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漆黒のブリュンヒルデQ・081『ダイダラボッチ・2』

2022-08-09 07:00:47 | 時かける少女

漆黒ブリュンヒルデQ 

081『ダイダラボッチ・2』   

 

 

 
 山の上で途方に暮れてしまった。

 
 クロノスの爺さんは居ないし、ダイダラボッチには逃げられてしまうし。

 ブァルキリアからこの異世界に来て、元の半分ほどしか力を発揮できないわたしだが、時空移動能力がゼロなのは堪える。以前、時空を超えて全国の八幡を巡る旅に出たが、あれはスクネ老人の力で八幡の煙道を使ったからだ。

 こんな海進期の縄文時代に放り出されては、元に戻るすべがない。

 が、焦っても仕方がない。

 待っていれば、一休みしたクロノスが戻って来るだろう。元々は、クロノスが頼んできた仕事なんだからな。

 名も知らない広葉樹の根元で横になる。

 リスやウサギたちがチョロチョロ現れる。どいつも令和の時代のよりも大きい。きっと縄文の気候が合っているんだろう。みんな目がクルクルしていて可愛らしい。

 そんな小動物たちを見ているうちにウトウトしてしまう。

 まあいい、クロノスも時計店に戻って休んでいるんだ……

 
 夢を見た。

 
 どこかの田舎だろう。囲炉裏を囲んで三人の子どもたちとお婆ちゃんが秋の夜長を過ごしている。

「むかーしむかーし、ここいらへんにはダイダラボッチいう大男がおったげな。身の丈こそは雲を突くようだったけんど、根はやさしいやつでな、毎朝起きてはお日様に手を合わせて、自然の恵みに感謝してから海の方にノッシノッシと歩いていったがじゃ。人の村やら、獣の住み家は気を付けて避けながらな。そいで、半日かけて海に行っては、両手で海の水をすくって口に含むと、器用に貝やら魚を濾して食べよった。そいで、貝やら魚を口に入れたまま、自分の住み家まで戻りよる。戻ったころには、口の中は貝殻と骨ばかりになっとる。途中で吐き出したら、みんなに迷惑が掛かるっちゅうんで、吐き出さんのじゃなあ。なんせ大男なもんじゃけ、そんなもんを吐き出されたら、道はふさがり、谷は埋まったり、川を堰とめたり、運が悪いと人や動物が下敷きにしてしまうかもしれん」

「やさしいんだね、ダイダラボッチ」

「そうだよぉ、そいで、住み家に戻ったダイダラボッチは、周りに人や獣がおらんことを確かめてから、プププと口の中のもんを吐き出しよる。プププってなあ」

「ププププ」

「プププ」

「「「アハハハ」」」

 ダイダラボッチの真似をして子どもたちが喜ぶ。

「んじゃから、ここいらの山の中から貝殻がドッチャリ見つかるってわけなんさ」

「それが、お山の貝塚なんだね」

「アハハ、そうさそうさ……」

 孫と婆ちゃんが暖かく笑っていると、風呂から上がった一番上の孫が腰を下ろして、こう言った。

「それは違う」

「え、どう違うんじゃ、兄ちゃん?」

「昔は、縄文時代言うて、今よりもうんと暖かい時代があって、ここらへんまで水に浸かっとたんじゃ。それで、昔の人が採った貝殻やら魚の骨を捨てたのが積もり積もって貝塚になったんじゃ」

「そんな、海がここまで来とったなんて、おかしな話じゃ」

「モースいう外人の先生が大森貝塚を発見なさって、研究が進んでな。今じゃ確かなことと認められとる。その証拠にな、貝塚からは土器の欠片や、釣り針の折れたのやらも見つかって、明らかに人のゴミダメちゅうことが分かっちょるんだ」

「ええ、そうだったんか?」

「婆ちゃんの言うたんは、迷信なんじゃな」

「迷信は言い過ぎじゃが、まあ、お伽話じゃ」

「なんじゃ、お伽話か」

「兄ちゃんの話の方が、おもしろいじゃ!」

「他にも、遺跡の話とかもあるぞ」

「聞かせて聞かせて!」

「よし、そんじゃ、みんな俺の部屋にこい」

「「「うん!」」」

 婆さんは囲炉裏の傍で一人ぼっちになってしまった。

 
 そうか……それで、ダイダラボッチは居場所が無くなったというわけか。

 
 目が覚めたわたしは、群馬県にダイダラボッチを探しに行くことにした。

 

☆彡 主な登場人物

  • 武笠ひるで(高校二年生)      こっちの世界のブリュンヒルデ
  • 福田芳子(高校一年生)       ひるでの後輩 生徒会役員
  • 福田るり子             福田芳子の妹
  • 小栗結衣(高校二年生)       ひるでの同輩 生徒会長
  • 猫田ねね子             怪しい白猫の猫又 54回から啓介の妹門脇寧々子として向かいに住みつく
  • 門脇 啓介             引きこもりの幼なじみ
  • おきながさん            気長足姫(おきながたらしひめ) 世田谷八幡の神さま
  • スクネ老人             武内宿禰 気長足姫のじい
  • 玉代(玉依姫)           ひるでの従姉として54回から同居することになった鹿児島荒田神社の神さま
  • お祖父ちゃん  
  • お祖母ちゃん            武笠民子
  • レイア(ニンフ)          ブリュンヒルデの侍女
  • 主神オーディン           ブァルハラに住むブリュンヒルデの父
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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・29『あやまたずBをクリック!』

2022-08-09 06:36:47 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

29あやまたずBをクリック!』 



『君の名を』には五人の女の子が出てくる。

 みすず(主人公の従姉) きらら(ギャル系) あいこ(お嬢系) はまり(オタク系眼鏡っ子) ゆうき(体育会系)

 あいうえお順では、 あいこ きらら はまり みすず ゆうき
 身長順では、    ゆうき きらら あいこ みすず はまり
 胸の大きさ順では、 きらら あいこ ゆうき みすず はまり
 家の近さ順では、  みすず ゆうき はまり きらら あいこ

 五人も出てきたら混乱するので、メモにしてノーパソの横に置く。

 五人は主人公と同じ学園に通っていて、主人公との関係は隣の従姉のみすずから高台に住むセレブで高嶺の花であるあいこまで、出発点はさまざま。

 みすずは毎朝主人公を起こしにくるし、日によってはご飯まで作ってくれる。一時間やって分かったんだけど、なんと生活費もみすずからもらっている。主人公の両親は仕事で外国に行っていて主人公は一人暮らしをしている。俺んちは五人家族なんで、ちょっと羨ましい。両親から「くれぐれも雄二(偶然だろうけども俺の名前に似ている)のことお願い」と言われているので、うるさいくらいに世話を焼く。

 他の登場人物も同じ学園なので、いろんなきっかけがあって主人公と親しくなっていくのだ。

 一つひっかかった。

 どうみても高校なのに、ゲームの中では、みんな学園と呼んでいる。

「起きろ雄二! 学園に遅刻するぞ!」とか「学園帰りに寄っていこっか?」とか、絶対学校とか高校とかは言わない。

 こういうことに引っかかると先に進めないのが俺の性格。

 いろいろ検索して分かった。

 エロゲはZ指定どころか18歳未満は買うこともプレイすることも禁止されている。ま、そのくらいのことは分かる。

――なになに……未成年への配慮と高校生以下を性的な対象とすることは、法的にも社会通念上もはばかられるので、登場人物は全て18歳以上の設定になっています――

 なるほど。

 それから

『君の名を』がたまたまなのか、こういうものなのかエロシーンというのはなかなか出てこない。

 淡々とした日常の中で、高校生らしい……って、18歳以上なんだけど、いろんな問題が起こってくる。

 勉強、友だち、部活、アルバイト、文化祭、異性への興味と反発、先生や親の無理解などなど、あーそーだよなって事件や問題が起こってくる。

 ある日なんか、こうだ。

 通学途中できららが、大きな荷物を持ったお婆さんを助けているところを目にする。

「コラー! ざけんじゃねーよ!」

 左折した自動車の尻に向かってきららが拳を上げる。

「お婆ちゃん、だいじょーぶ?」
「ええ、だいじょうぶ。ゆっくり横断していたものだから……」
「でも、お婆ちゃんのすぐ横をぶっ飛ばしていくなんてブチギレるよ!」

 きららはお婆ちゃんの荷物を持って目的地まで付き添ってやる。
 そのために遅刻し、朝礼の時に教室に入ってきて、きららは担任から叱られる。

「さーせんさーせん、マジさーせん」

 ギャル口調でいなすきららに担任がマジ切れ。

 これがフラグというものらしく、選択肢が現れる。

 A:きららは叱られ慣れているので、ま、クラスの日常だと生温かく黙って見守る。
 B:きららは悪くないので、見たことを正直に言って担任の先入観を解いてやる。

 シグマを堂本のオッサンから庇ってやったことを思い出した。やっぱ、ここは正直に言ってやるよなあ。

 Bをクリックして誤解だか曲解だかを解いてやると、休み時間に、きららから礼を言われる。

「人から、あんな風に言ってもらったのマジ初めて、ほんとありがとね」

 きららの目は、びっくりするくらい素直だった。

 こいつ、いいやつなんだ……。

 それから、きららと話すことが多くなって、気が付くと友だちになっている。

――親に心配かけるわけにいかないし……下もつかえて……留年するわけには……――

 苦しい息の下から電話してきたきららに……。

 A:体が大事だから試験は休め!
 B:よし、俺が送り迎えしてやる!

 俺はBをクリック、自転車の後ろにきららを乗せて学年末考査の学校、いや学園にかっとばす!
 
 38度の熱を出しながら試験を受けて、きららはなんとか及第点を獲る。

「ありがと雄二、妹や弟に『強いネーチャン』見せるだけでいいと思ってた、ほんとに進級できるとは思ってなかったよー、雄二、あたしがんばってよかった!」

 俺は、もうきららに惚れてしまった(´;ω;`)ウッ…。

 そして、時あたかも春休み、雄二ときららは結ばれる。

 ここから初々しくも目くるめく18禁の描写が始まるのだ(*゚▽゚*)。

 だけど、少しもイヤラシイとは思えない。それまでの二人の葛藤があれば、これは当然の帰結だと微笑ましくさえある。

「よかったなあ……」

 思わず俺は呟いた。

 その後いくつかの選択肢があってたどり着いたエンディング。

 卒業後、晴れて二人は結婚。

 最後の選択肢。

 A:ここで見送る
 B:もう少し手を繋いで歩く

 俺は、あやまたずBをクリック!

 すると後ろから車の気配。

 おりからの雨で気づくのが遅れ、振り返ると間近に車が迫る!

「危ない!」

 そう叫んで、きららは俺を突き飛ばし、きららは車に撥ねられる。

「あたし、あたし……最後まで、あんたの名を……大事な人だから『君の名』だね……言っていくね……そしたら……また……むこうで……結婚しよ……雄二……雄二………雄………ゆ……う……じ………」

 きららーーー(⌯˃̶᷄ O˂̶᷄⌯)!!!!!

 俺はノーパソを掴んで、画面に頬を寄せて、身も世もなく泣いてしまったのだった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校二年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校一年
  • 妻鹿小菊           中三 オメガの妹 
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校二年 雄一の数少ない友だち
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
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