大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・16『丸の内 徳川物産』

2022-08-21 10:38:18 | 小説3

くノ一その一今のうち

16『丸の内 徳川物産』 

 

 

 けっきょく学校の制服にした。

 

 丸の内の狸オヤジの会社に行くのに、困った。何を着て行けばいいのかなって。

 アルバイトとは云え、百地事務所を代表……なんかしてないんだけど、一員として行くわけだから、それなりのナリでなくっちゃと考えた。

 だけど、百地の制服めいたものは、あのヨレヨレで石鹸くさいジャージしかない(;'∀')

 だから、学校の制服。

 女子高生の制服って、一種の迷彩服……て云うのは『リコリスリコイル』の中の台詞だけど、ほんとにそうだよね。

 髪は自然なブラックで、スカートの丈が五センチくらい膝上で、それ以外はちゃんとしていたら、人畜無害の女子高生で、それだけで風景に溶け込める。

 

 ところが、丸の内っていうのは、この女子高生迷彩がかえって目立っているような気がしないでもない。

 今は、四時過ぎなんだけど、この時間て、日本中どこでも下校時間のピーク。

 たいていの日本の街で高校生が歩いてる。帰宅組だったりバイトに向かうのだったり、仲間同士でブラブラだったり。

 それが、この丸の内では見かけない。

 

 ひょっとして、丸の内辺に高校って無いのか?

 スマホを出してググってみる。

 あ…………無いよ。

 丸の内が頭に付く学校は、一つあるけど高知県。東京には一つもない。

 千代田区には六つほど高校があるんだけども、丸の内には一つもない。

 チ

 思わず舌打ちしてしまう。

 !!?

 とたんに真後ろで人の気配がして、跳躍しながら振り返って、五メートルほども飛んでしまう。

「君は、どこの高校なのかなあ」

 目だけ笑わない笑顔で警察官が、わたしを見てる。

「あ、え、バイトの面接に行くところ……です」

「そうか、お巡りさんは『どこの学校』かって聞いたんだけどね」

 こいつ、あたりは柔らかいけど、疑りの眼差しだ。

 それに……こいつ、すごくデキる。

 わたしに気取られないで真後ろに立つなんて、並みの警察官にできる技じゃない。

「アハハ、ビビらせたのなら、ごめんなさいね。ここ、丸の内でしょ、皇居と東京駅の間だし、国会議事堂とかお役所も多いしね。ついね。警視庁は奈良県警みたいな失敗はできないしね」

「そ、そうですよね(^_^;)、いきなり声かけられちゃって、ビックリしちゃって。あ、生徒手帳見せますね」

 背中のカバンを下ろして、胸元で開けようとしたら、すごい殺気!!

 セイ!

 今度は10メートルもジャンプ!

 ニャンパラリンをきめて、着地すると、もう殺気はおろか、警察官の姿も無い。

 チ…………なんなんだ、あいつは?

 すると、幾人もの視線が足もとから突き刺さって来る。

 しまった、わたしってば、信号機のポールの上までジャンプしてしまっていたんだ(;'∀')。

 

 徳川物産

 

 八階建て……そんなには高くないんだけど、戦前からあったんじゃないかと思われるビルは、ちょっとした神殿みたい。

 で、まさか、その八階建てがまるまる徳川物産だとは思わなかった。

 だって、わたしの生活圏にあるビルって、みんな雑居ビル。

 区役所や図書館とか郵便局とかも合同ビルで、ビル一個まるまるっていうのは警察と消防署ぐらいのものだから、会社一個で一つのビルっていうのは見たことない。

 それに『徳川物産』って看板が、真鍮製とはいえ、学校の看板よりも小さい。

 普通は、入ったとこにテナントの看板が並んでて、共同の郵便受けとかがズラッと設置されてるって感じでしょ。

 受付で挨拶すると、IDをくれて、四階の総務部に言ってくれと言われる。

 たかがバイトだから、受付のうしろの1~5まである出入り業者用の、あるいは玄関払い用の応接の一つだと思ったから、なんというか、お城で云ったら本丸って感じ?

 恐るおそる総務部のドアをノックして来意を伝えると、「あ、これは総務二課ですので、八階の総務二課の部屋になります。ご案内しますので、こちらにどうぞ」

 ちょっとレトロな事務服のおねえさんが案内してくれる。

 終始穏やかに微笑んでるんだけど、余計な話はしませんというオーラ出まくりで、八階の総務二課へ。

 チーン

 事務服オネエサンとエレベーター。

 コーン コーン コーン

 天井の高い廊下に事務服おねえさんのパンプスが響く。

 仰いだ部屋の表示は……社長室!?

 

 なんと、総務二課は社長室の隣だ。

 

「はい、総務二課は社長室直属の配置になっています。少々お待ちください」

 そう言って、総務二課に入って行って二十秒ほどだれかと話して出てきた。

「どうぞ、ここからは総務二課の者がお相手いたします」

「は、はひ」

 なんか緊張して間抜けた応えをしてしまう。

「失礼します、百地芸能事務所から参りました、風魔そのと申します」

「ご苦労で御座った、暫時、それにてお待ちくだされ」

 まるで『吠えよ剣!』の台詞みたいな返事。

 

 顔を上げると……そいつはロボットだった!

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん

 

 

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・41『ハワイ@ホーム・4・試運転』

2022-08-21 06:45:26 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

41『ハワイ@ホーム・4・ 試運転シグマ 




 歳の差は二つだけだ、あたしと小松さん。

 でも、チョウチョと毛虫くらいの違いがありますよ。

 お祖母ちゃんちに着いた日は、ハワイ@ホームで働く女の子たちも集まってパーティーになった。

 女の子たちは歳こそ近いけど、民族的には、白人、黒人、ネイティブ、ヒスパニック、日系、中国系、韓国系とバラバラ。お祖母ちゃんが、わざとしたのか、ハワイの民族構成が反映されているのかは分からないです。

 でも、民族はバラバラだけど、中身はみんなアメリカ人。

 明るく表情も豊かで、とってもフレンドリー!

 彼女たちがやってきて、わずか五分で握手の新記録。

 彼女たちを含め三十人のゲストがみんな握手。あたしは、これまでの十六年間で、この日の半分も人の手を握っていない。

 なんだか、もう握手会みたいで、アイドルは偉いと思った。

 五人目くらいでくたびれて、慣れない笑顔が引きつってくるんです。

 握手によるハッピーは基準値があるのか、あたしの笑顔が弱くなってくるとアメリカネエチャンたちの握手力が強くなる。

 ノブヨという日系ネエチャンは、なんと、あたしにハグしてきた。

 パッと見は日本人なので、ビックリは倍になる。

 ノブヨはほっぺたをくっ付けてスリスリまでする。心臓がドックンで、なんだか百合フラグが立ってしまったのではないかとオタオタ(;'∀')。

 でも、小松さんたちは余裕で対応していた。

 小松さんは、なんだか銀行の案内係のオネエサンみたいに大人びていましたよ。
とっても優雅で、アメリカネエチャンたちが子どもじみて見えてしまった。

「ハーーーあたしなんか、まだまだよぉ」

 洗面でいっしょになったら、歯ブラシ咥えながら、小松さんはため息ついた。

「メイドは永遠の十七歳で、夜にはタンポポの毛に掴まって雲の上のお家に帰るんだもん。さっきのあたしは、そんなメルヘンじゃなかった」

 小松さんの志は高いのです。

 

 昨日は一人でパールリッジショッピング センターのオタクショップに行ってきました。

 

 ハワイ@ホームの開店祝いに配るグッズを買うためだけど、正直エスケープなんです。

 日米16人のやる気ムンムンの中に居たら、空気を壊しそうだし。

 教える方も教えられる方も、まぶしいくらいにキラキラしているんですよ。ひとりだけ手持無沙汰でポツンとしていたら、Σ顔が尖がりすぎて、誰かを傷つけてしまうかもしれないもの。

「自分のは買ってこなかったの?」

 アキバに比べれば数段見劣りするグッズにも、メイドとメイド候補生たちはキャピキャピの反応。新しく店を開くというのは、こんなにも人をキラキラさせるんです。

「だって、ハワイにはエロゲないんだもん!」

 精一杯の強がりを言ってみる。

 今日はハワイ@ホームの試運転。

 お祖母ちゃんの仕事関係や交友関係の人たち、メイドさんたちのお友だちなどが午前と午後の二回に分かれてやってくる。

 制服(メイド服)の力はすごいです。

 押し出しの強すぎたアメリカンメイドたちも程よくメルヘンになっている。

「「「「「「オカリナセマセ、ゴシュジサッマ~!」」」」」」

 制服でない彼女たちから挨拶されたら、お客さんたちは鏡に映る自分の姿を確認しただろう。

 だって、ハリポタの呪文で魔法をかけられたに違いないと思ってしまうから(^_^;)。

 あたしは記録係という仕事を与えられ、すこし時代物のプロカメラ担いで、ひたすら撮りまくりました。

 これだと自分がカメラの付属物になったみたいでラクちんなのだ。

 お祖母ちゃんも、あたしの性格を知っていての上手いはからいです。

 明日は日本に帰ります。

 

 あとはエンターキーを押すだけ…………でも、バックスペースに指を掛けて、ダーーっと消してしまう。

 こんなメール、やっぱり送れないよ。
 

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校二年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校一年
  • 妻鹿小菊           中三 オメガの妹 
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校二年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校二年 幼なじみの神社の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任



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