大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・127『火星の春もたけなわ』

2022-10-01 10:13:45 | 小説4

・127

『火星の春もたけなわ』ミク  

 

 

 え……え……心子内親王殿下!?

 

 胡蝶さんの目配せで現れたのは、西之島から本土にお移りになったとも、地球そのものから脱出を図られる途中でシャトルが爆発して亡くなられたとも噂されている、日本国の皇嗣殿下!

 映像やホログラムでしか見たことはないんだけど、どこか今上陛下と同じ気品を感じさせる。

 今上陛下とは、修学旅行でお目にかかっているので、印象に間違いはない。

「みな、騒がぬように」

 いつの間にか真後ろにまわった胡蝶さんが静かに、でも、キッパリと注意する。

「お察しの通り、心子内親王殿下であられる。必要以上に緊張することは無いけど、あまり騒がないようにね」

 上様がご注意になるのは、テルが子どもみたいにピョンピョンしだしたからだろう。頭脳は大人以上なのに感情表現は見かけのまま。

「心子です。意外で複雑な事情でお世話になることになりました、よろしくお願いいたします」

「「「「は、はい!」」」」

「あ、畏まらないでください(^_^;)。こちらでは、将軍の個人的な居候なんですから」

「一応、外部には秘密ということでいくつもりだから、承知しておいてくれたまえ」

「「「「はい」」」」

「人前で『内親王さま』とか『殿下』と呼ぶのは禁止だからね」

「では、なんとお呼びしたらいいんでしょう?」

「心子は呼びにくいでしょうから、ココ……ではどうでしょうか?」

「そんな、呼び捨てなんて!」

 思わず首をプルプル振ってしまう。

「じゃ、ココちゃん。西ノ島じゃ、そう呼ばれてましたから」

 うう…………(;'∀')

「はい、みなさん、ごいっしょに(^▽^)」

 

 コ、コ……ココさん(≧0≦)!

 

「アハハ……まあ……そういうことでよろしくお願いいたします。みなさんのお名前も伺っていいですか?」

「はい、緒方未来。幕府大学医学部二回生です……ほら、つぎ!」

「穴山 彦。幕府大学国際政治学科二回生です。お見知りおきのほどを」

「大石 一(いち)。国立大学二回生であります。あ、いちは漢数字の一ですが、みんなからはダッシュと呼ばれておりますので、そうお呼びください!」

「ダッシュ……ですか?」

「一は、ダッシュにも見えますので、子どもの頃から、そう呼ばれております」

「頭で考えるより、体の方が先に出ちゃうバカなんで、そう呼んでます」

「ひょっとして、ミクさんがお付けになった?」

「あはは、幼なじみですから(^_^;)」

「まあ、素敵ですね。こちらは、妹さんですか?」

「ち、違うのでしゅよ! 平賀 照、幕府大学工学部二回生なのでしゅ! これでも、パルス動力専攻なのよさ! いや、でしゅ(#'∀'#)」

「ま、ごめんなさい!」

「いいのいいの! 通過儀礼みたいなもんでしゅから(#'0'#)」

「六回も飛び級して、高校に入ってからは、ずっとわたしたちと一緒なんです」

「そう、みなさん、良いお仲間のようですね。わたしも、仲間に入れていただけたら、とても嬉しいです」

「は、はい!」

「「「もちろん!」」」

「殿下には、わたしの研究のお手伝いをしていただくつもりでです。みんな、よろしくね」

「「「「はい!」」」」

 

「お待たせいたしました~」

 

 公園の入り口の方から、小柄な少女が手を振りながら走って来る。

 女のわたしが見ても、めちゃくちゃ可愛くて、ダッシュもヒコも目がハートになって、テルは同類を見つけたような笑顔になる。

 その子は、わたしたちの前まで来ると、折り目正しく礼をして、こう名乗った。

「ココちゃんのお世話係で、サンパチと申す者でござる。よろしくお見知りおき下され」

 

 可愛いのに、言葉も雰囲気もおさむらい、それも、なんだかオッサンぽい……

 

 火星の春は、いよいよたけなわになろうとしている。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・81『久々にペンタブを出してみた』

2022-10-01 06:16:39 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

81『久々にペンタブを出してみたシグマ 





 久々にペンタブを出してみた。

 中三の春に出来心で買った中古品。動画サイトで、あたしくらいの女の子がスラスラ描いてるのを見て欲しくなった。
 そのままネットオークションにジャンプしたら、2000円で出ていたので、そのままクリックしたんだ。

 競り落としたブツが来るまでが華だった。ペンタブさえ手に入れば、いっぱしのクリエーターになれる気になっていた。

 いま思い出しても恥ずかしいんだけど、わたしは気持ちから入っていくタイプ。

 まず、机周りを、それまでのゲーマー仕様からクリエーター仕様に変更。

 プリンターは必需品になるので、インクの残量をチェック、イラストをプリントすると、インクの使用量がケタ違いになってくる。ところが、ブラックがほとんどエンプティー。

 お財布掴んで近所のホムセンへ、見つけたカートリッジの値段を見てビックリ。

 なんと、競り落としたペンタブよりも値段が高い。

 しかし、インクが無ければ話にならない……!

 思案すること十分余り。スカイツリーのテッペンから飛び降りる気持ちで買った。

 その三日後にペンタブが届いて準備万端おこたりなし!

 で、見るとやるとは大違いだった。

 

 ペンタブは、パソコンのモニターを見ながら、手元のペンタブに描く。

 つまりね、描いたペンタブには何も映らないで、描いたものはモニターに出てくるの。

 めちゃくちゃムズイ。

 たとえば目を描くとするでしょ、上目蓋の線を描いて、下目蓋に移ろうとすると下ろしたペン先が上目蓋の描きだし位置に合わない。

 とても手に負えるものじゃないわけ。

 改めて検索しなおすと、夏コミなんかの常連さんたちは『液タブ(液晶タブレット)』てのを使っている。

 つまりね、ペンタブが液晶のモニターになっていて、直接ペンで描いていけるってシロモノ。

 なるほど……感心はしたけど、液晶タブは十万円前後する。

 あたしは、大きなため息ついてペンタブをクローゼットにしまい込んだ。

 そのペンタブを二年ぶりに出して、USB端子をパソコンに繋ぐ。

 なにを描こう……えと……どうせ上手くなんか描けない。

 エイヤ! 

 ペンを走らせるとドラえもんになった。

 意外にいけるかも!

 今度はイメージを持って描く。ゲームでよく見る、いわゆるイケメンを描いてみる。

 オーシ、なかなかイケる!

 なんだか、ゲームの中の立ち絵みたいなのが描けた。

 元気が出てきたので、風信子先輩にメールの添付でイラストを送る。

 すぐに返事が返って来た。

―― なかなか上手いよ! やっぱ普段からよく見てるのね、ゆう君(オメガ)そっくり! ――

 え、えーーそんなつもりは……*!?$%#♡¥+*%$#(#'∀'#)!!!!!

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
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