大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・23『自習時間の忍び語り』

2022-10-14 10:03:07 | 小説3

くノ一その一今のうち

23『自習時間の忍び語り』 

 

 

 今日は一時間目から自習だ。

 

 自習は、たいてい自習監督の先生が自習課題を配って「あとで取りに来るから、やっておけよ」と言って出ていく。

 一時間目の自習なので、SHRを済ませた担任が、そのまま自習課題を配っていった。

 あれ?

 取り掛かろうと思ったら、すでに自習課題には答えが書いてある。それも、わたしの字で。

―― やってるふりをしておけ ――

 忍び語りの声が飛び込んできた。声は服部課長代理だ。

『どこにいるんですか?』

―― 自分で探してみろ ――

 二秒で教室内のクラスメートたちを透視……教室には居ない。

 胸元の魔石が仄かに熱を持つ……とたんに意識が倍ほどに冴えてきて、窓の外、校庭のメタセコイアの根方で日向ぼっこしている猫が目に入る。

―― ほう、気づいたか。さすがは『その一』だな ――

『なんの用ですか、学校にまで押しかけてきて』

―― おまえ、佐助に会ったな ――

『あ、今日報告するつもりだったんです』

 昨日の今日だ、業務報告なら、バイトに行ってやればいいと思ってた。

―― 会社では人の目がある ――

 課長代理だって会社の人間だろうに……いや、ヤバイ話?

―― 俺の気まぐれだ ――

『……ですか』

 だめだ、想念が読まれてる。聞くことに専念しよう。

―― 社長は『同じ豊臣のガード、構うな』と言うだろう ――

『だめなんですか?』

―― 豊臣の裔は鈴木の家一つがあればいい。木下は不要だ。あちらは鈴木こそ不要だと思っているがな ――

『はい、シカトします』

 あんな奴、こっちから願い下げ。

―― 言っておく。佐助とは慣れ合うな。いずれ命のやり取りをすることになる ――

『無視すればいいんじゃないんですか?』

―― 今はな、将来的には殺す。木下の当主ともどもな ――

『じゃ、今から始末すればいいんじゃないですか』

 売り言葉に買い言葉。

―― 笑わすな、お前が敵う相手じゃない ――

 ちょっと腹立つ。

―― その子は笑っていただろ ――

『お祖母ちゃんを呼び捨てにしないでください』

―― その子は下忍、俺は上忍だ ――

『そうですか』

―― 手に負えない時、あいつは笑うんだ ――

『でも、佐助の方から仕掛けてきたら?』

―― まあや様をお守りすることだけに集中しろ ――

『それだけですか?』

―― 必要があれば連絡する ――

『とりあえずは?』

 佐助の様子からして、近々なにか起こりそうな気がしているから聞き返す。

―― 近々な……フフフ ――

『なにがおかしいんですか!?』

―― ハハハ……俺だって笑うんだぞ ――

「課長代理!」

 

 ヤバイ、声が出てしまった(;'∀')。

 

 さいわいクラスメートには気付かれなかった。

 胸に手を当てると、魔石がさらに熱を持っていた。

 メタセコイアに気を戻すと、すでに猫の姿は無かった。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍)
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・94『三人ともぶっ飛んだ』

2022-10-14 06:38:03 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

94『三人ともぶっ飛んだ小松 





 マッジさんがいなければテニスは諦めていただろう。

 わたしたちに、マッチョ七人を相手に交渉する度胸は無い(^_^;)。

 で、その交渉の結果、仲良く一緒にプレイすることになった。

 

 正直――なんでよー!?――

 コートの向こうとこっちに分かれてプレイ開始!

 袖口からタトゥーが覗いて、身長は190はあろうかというマッチョが進み出てきてネット越しの握手。

 ガシガシ!

 ボクシングのグローブくらいの手で握手され、振動で景色がブレて、わたしのちっこい手は完全に呑み込まれる。

「『我々は初心者なんで、どうぞお手柔らかに』だそうです」

 マッジさんが同時通訳。

 通訳が終わると、マッチョは一瞬サングラスをとった。

 意外に甘いマスク……というか子供っぽいスマイルに、ちょっと拍子抜け。

 アメリカ人というのは一般的に歳より老けて見える。それが、この童顔はいったい?

「アメリカには、ベビーなんちゃらとか、なんちゃらキッドとか童顔の悪もいるって云うよ(,,꒪꒫꒪,,)」

 もなかさんが小声で忠告。

 で、ゲームを始めると「おちょくってんのか!?」というくらいにマッチョたちはヘタクソだった。

 サーブは確かに力があるけど、力任せのためか、ことごとくがファウル。

 Goddamn!(こんちくしょー!!)

 わたしにも分かる英語で悔しがるマッチョたち。ラブ:フィフーティーンになるとさすがにコントロールを意識してきた。

 カッポーーーン

 意識すると、今度は極端に球速が落ちて簡単に打ち返せる。

 打ち返したボールは三回に一回くらいしか返ってこない。ヒットしたボールも力任せなので、明後日の方向に飛んでいき、あっという間に勝ってしまった!

 童顔マッチョだけかと思ったら、他の六人もことごとくヘタクソマッチョ。

「やっぱりインターハイに出るような女子高生は違うなあ~……だそうです」

「「「イ、インターハイ? 女子高生?」」」

 三人ともぶっ飛んだ。

「そう紹介したんです、インターハイに出るための練習に来てるって」

「はあ……で、こちらの方々は?」

「サンフランシスコのお巡りさんたちです、休暇でハワイに来られてるんです。テニスはEスポーツではグランドスラム級だそうですよ」

「Eスポーツ?」

「……これですよ」

 コントローラーを持つ仕草でアキバでもお馴染みのテレビゲームだと分かった。

 プレイが終わって七人のマッチョさんたちと改めて挨拶。

 サングラスをとった七人は、みんな人のいい顔をしていた。

 一人童顔のマッチョさんはトム・クランシーというなり立てホヤホヤの19歳だと分かった。

 マッジさんはマッチョさんたちにも種明かし。

 オオ! アメージング!!

 わたしたちがアキバのメイドだと知ると、驚いたり喜んだり。

「実は、ホノルルにもメイド喫茶がオープンしたんですよ。彼女たちは、その指導にやってきたんです」

 マッジさんが微妙に誇張し、ランチを食べた後、みんなでハワイ@ホームに出向くことになった。

 マッジさんの凄さを認識したのでした……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
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