大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・352『今日から試験……の朝』

2022-10-12 14:17:40 | ノベル

・352

今日から試験……の朝さくら    

 

 

 忘れてたわけやないねんけど、今日からテスト、中間考査。

 

 そのせいか、昨日はあれだけ晴れてた空が、どんよりと曇り空。

 うちから自転車に乗って堺東のスナック『れいぜい』の駐車場。

「「お早うございます!」」

 今日から試験でも、ドンヨリ曇り空でも、留美ちゃんと二人、明るく挨拶は欠かしません。

「「おはよう!」」

 え、挨拶が二つ返ってきた?

 最初の頃は、お店のドア開けて挨拶したんやけど、お店は朝の営業中。「まあ、顔合わせた時だけでええで」とマスターの親友でもあるテイ兄ちゃんが言うので、駐車場で顔合わせた時だけにしてます。

 朝は、食パンやら牛乳やらのデリバリー、スタッフの(言うてもマスターとアルバイトさん)の制服クリーニングの受け取り、ゴミの運び出しなんかで、50%くらいの確率で会います。

 で、もう一回言います。挨拶が二つ返ってきた。

 マスターが同じスタッフの制服着たきれいな女の人と荷物運んでるやおまへんか!

 うちらも、十六年生きてきた人生の経験で分かるんです。

 この二人は夫婦、あるいは夫婦に近い関係、それも成たてのホヤホヤ!

 とうぜん、十六歳のJKとしては、瞬間で頬染めてニヘラ~と笑てしまうんです!

「あ、まだ式は挙げてへんねんけど、奥さんの亜里沙( #´o`#)。この子らは話してた友だちの身内で、さくらと留美ちゃんや、アハハハ(n*´ω`*n)」

「家内の亜里沙です、よろしく( #´o`#)」

「「はい、こちらこそ!!」」

 元気よくお辞儀して駐車場を出る。

「あ、せや!」

「え、どうしたの?」

「ちょ、待ってて!」

 うちは、取って返して、裏口から店に入ろうとしてたマスターを掴まえる!

「え、なに?」

「このこと、うちのテイ兄ちゃんは知ってるんですか?」

「え、あ……まだ知らんと思う」

「了解!」

 もう信号のとこまで行ってる留美ちゃんに簡単に説明。

「え、そうなの!?」

「なんか訳ありみたいやけど、これは面白いと思わへん?」

「え、お目出度いことでしょ」

「これ、テイ兄ちゃんに言うたったら、どんな顔しよるやろなあ( ´艸`)」

「ちょっと、ひとが悪いよ(^_^;)」

「さて、どんな風に話したろかなあ……クククク」

「さくら、今日から試験だって忘れてるでしょ?」

「え、あ、せやった!」

「今日は英語と公民だよ、分かってるよね、一学期、英語は欠点だったんだからね」

「憶えてますぅ」

「だったら、集中集中! 電車来るまで単語の復習するよ!」

「へいへい……」

「なに、ブツブツ言ってんの」

「いえ、ただのお念仏です」

「阿弥陀様は、極楽往生しか保証はしてくれません。勉強ばかりは自力作善です」

 ああ、留美ちゃんも、すっかりお寺の子になってしまいました。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー       ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか     さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 女王陛下      頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 

 

 

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鳴かぬなら 信長転生記 90『クルミを見分ける』

2022-10-12 09:47:11 | ノベル2

ら 信長転生記

90『クルミを見分ける』織部 

 

 

 

 スナイパーだからだろうか、覚えると的確だ。

 

 クルミ団子を食べて思いついたんだ。

 クルミをいっぱい採って、皆虎の街で売ってみよう。

 最初は辻売りでいい。売れたら、それを元手に……元手といっても金の事ばかりじゃない。

 当分の活動に困らない程度には生徒会からもらっている。

 わたしの言う元手は評判のことさ。

 あいつの商売は固い、信用が置ける。そういう評判だ。

 小さな評判でも立てておけば、そこから道が開ける。

 むろん、わたしは扶桑(転生国)のスパイだから、そっちの道をつけるための評判が第一なんだけどね。

 わたしは、美しいものを見たいんだ。できたら所有もしてみたい。

 天下で一番許せないのは、値打ちも分からずに無駄にお宝を所有してるやつらだ。戦国大名で、そういう値打ちの分かる者はほんの一握りだった。

 松永弾正とか秀吉とかは最低だった。

 弾正は自分が滅ぶくらいならお宝も道連れ。平蜘蛛の茶釜に火薬をぶち込んで、己が身とともに爆砕させてしまった。この古田織部ほどの数寄人が頭を下げて頼みに行ったというのにだ!

 秀吉は、なんでも金に換算しないと値打ちの分からん阿呆だった。値段の高いもの、金ぴかのものに目が無かった。青磁や古九谷を金の茶釜と並べて悦に入るアホ猿。

 むろん他にも数寄者の戦国大名はいっぱいいるけど、この扶桑に転生しているやつらは、ちょっと評しにくい。

 まあ、察してちょうだい。

 

 あ、覚えると早いという話、リュドミラのことね。

 

 ウクライナ出身のスナイパーで、生前309人のドイツ兵を一発で撃ち殺したって伝説の狙撃手。

 こいつにくるみの見分け方を教えてやった。

 オニグルミは大きさの割には実が小さくて、味もそれほどじゃない。狙うのはサワグルミ。

 実はしっかりしてるし、味もそこそこ。超一級品というわけじゃないけど、辻売りの元手にはちょうどいい。

 

「全部が全部小振りというわけじゃないのに、よく分かるわねぇ」

「いちど特徴のあるものを見たら、あとはオーラで分かる」

「くるみにオーラがあるのか?」

「ああ、優れた標的には優れているだけのオーラがあるんだ」

「そうなのか?」

 見分け方を教えたわたしでも、樹高の高さ、微妙に明るい葉の色ぐらいしか分からないし、それも目を凝らしていないとなかなか見分けられない。

「たとえ、風采が上がらなくても同じ軍服を着ていても部隊長クラスの将校やスナイパーは持っているものが違う」

 そうか、同じ窯で焼いても名品は違うからな。

 名品があれば、窯出しの火口を開けただけで、迫って来る迫力が違うものな。

「そうか、おかげで捗った。では、そろそろ皆虎に入るとするか」

「あ、ああ」

 ちょっと上気した返事をすると、少し後ろについて歩き出す。

 一見従者めいたポジションだけど、わたしを主と見ているわけじゃない。

 警護対象は少し前に置いた方が視野が広くなってガードがしやすくなるんだ。

 この古田織部、単に数寄者というだけで戦国大名になったわけではないからね。

 

 皆虎の城壁が見えるころには、街道にチラホラと扶桑、三国志の物売りや商人らしい者たちの姿が見えるようになってきた。

 信長が開けた穴は、少しずつだが風の流れを呼んでいるようだ。

 スパイという身を忘れはしないけど、ちょっとワクワクしてきたかも。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生(三国志ではニイ)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹(三国志ではシイ)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(劉備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  •  

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・92『ぶり返す傷痕』

2022-10-12 06:53:36 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

92『ぶり返す傷痕』小松 




 もう少し早く声を掛けていたら……。

 マッジさんは、枕もとで凹んでいる。


 右わき腹の傷痕は、やっぱり二人には分かってしまった。

 @ホームのメイドは毎日自分たちで制服や身だしなみをチェックする。お客さんに夢を与える仕事だから当然のこと。ロッカールームで着替えたら、お互いの姿を数秒見て「よし!」と確認してからフロアに行くんだ。仕事中も、メイド服やエプロンにシミが付いていないか、乱れはないかとか無意識にチェックしている。それが、ハワイに来ても出てしまう。

 Tシャツ脱いだ瞬間に、二人の視線。ほんの0・1秒ほどなんだけど、元からわたしの傷を気にしているもなかさんが気が付いて、もなかさんの表情からチロルさんも息を呑んでしまった。

 もなかさんは――どうしよう――という気持ちで一杯になって表情まで引きつってきた。

――ドンマイ――

 口の形で、そう言って、水に飛び込んだ。

 瞬間迷った。知らないふりするか、なにか気の利いた言葉を掛けるか。逡巡したり、固まったりするのは一番NG。

 なにかエスプリの利いた一言が言えればよかったんだけど、ドンマイじゃ――気にしてる――って丸わかり。

 二人だけじゃなくて、近くに居た水泳客も、わたしたちの表情から気づく人がいて、ちょっと困ってしまった。

 むろん、お行儀のいい水泳客ばかりだから――お気の毒に――というものばかりだったけど、どんな目で見られようと、もなかさんにはプレッシャーだ。

 おまけに、わたしは具合が悪くなった。

 海水に浸かったせいか、薄い水着のせいか、傷痕がつっぱらかり、右わき腹全体が痛み出したのだ。

 そのため、夕食も食べずにベッドでひっくり返り、マッジさんの世話になっているってわけ。

 マッジさんが二度目のため息をついたときにドアがノックされた。

 

「ミリーさんが来られたわよ」

 

 マッジさんの応対を待たずに入って来たのはチロルさん。そのチロルさんの次にもなかさんのエスコートでミリーさんと、引退したお相撲さんのような男の人が入って来た。

「ビックリしたわ、日本でのこと、何も知らなかったから……どう、おかげんは?」

「申し訳ありません、わたしが付いていながら」

 マッジさんの恐縮した肩に手を置いて慰めた後、引退したお相撲さんみたいな人を紹介するミリーさん。

「お医者様に来ていただいたの、わたしが五十年診ていただいているから太鼓判よ」

「五十年も!」

「わたしは二代目です、シバラク・オバマと言います」

「なんだか大統領みたいでしょ」

「わたしはシバラク、ぼくは共和党だしね、さ、脈から診ましょう……」

 毛むくじゃらの手にビビったけども、腕を掴んだ手は、とても優しかった。

「傷跡を見せてもらっていいですか?」

 男の先生に見せることよりも、女四人に見られる方が極まりが悪い。

「きれいに縫合してあります、ただ術後の日数がたっていないので、ちょっと無茶でしたね。水着になるのにドクターの許可は得ましたか?」

「術後は一回行ったきりで、そのあとは行ってないんです」

「それは、またどうして?」

「じ、じつは……」

 わたしは、薄情な女医さんのことをまくしたてた。

「アメリカなら訴訟になりますね、ま、そのままほったらかしにした貴女も豪傑ですけどね」

「わたし、日本に帰れますでしょうか……?」

 凹んでいるマッジさんともなかさんを元気づけるために、おどけて聞いてみた。

「こんなチャーミングなメイドさんなら、そこのお友だちもいっしょに出国を阻止したいところですけどね」

「オバマさんは、うちのお店の常連さんなのよ」

「@ホームはスバらしいですよ、とってもファンタジーです。わたしも、後継ぎが出来たら妖精さんになりたいですね」

 妖精さん? 瞬間戸惑ったけど、メイド喫茶のスタッフ(妖精さんと呼ぶ)のことだと思い至って笑わせてもらった。

 気が付いたら、わたしのベッドを中心にして輪が出来ていた。

 わたしに人望があってとか、みんなが気を遣ってというんじゃない、気が付いたら部屋のスツールや椅子がそうなっていて、みんなで仲良くお茶会になっていたのだ。

 オバマ先生が帰ってから気が付いた。

 お茶を出すタイミングとテーブルの移動、さりげなく輪になるようにマッジさんが誘導していたんだ。

 マッジさん……なかなかの人だ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  

 

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