大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・293『ポチョムキン村・2・エリザベータ』

2022-10-16 09:42:32 | 小説

魔法少女マヂカ・293

『ポチョムキン村・2・エリザベータ語り手:マヂカ 

 

 

『不思議の国のアリス』にこんなシーンがあった。

 

 お姉さんの歴史の話がつまらなくて、木の根方で、ついウトウトするアリス。

 すると、草原からピョコっと顔を出した兎が懐中時計を出して「しまった、遅刻する!」とピョンピョン跳ねて行ってしまう。そこから不思議の国の物語が始まってしまう。

 別の異世界でアリスに振り回された(078『M資金・12 アリス』~)ことがあるので瞬間身構えてしまう。

 しかし、そいつは兎ではなく、どっちかというと兎では無くてアリスに近い。

 アリスのような少女なのだが、金髪ではなくて銀髪、瞳も淡い銀鼠色。そして「どっちかっていうと」と断わりが入るのは頭にウサ耳が付いているからだ。

「なんだ、こいつは?」

 悟嬢が眉をひそめていぶかるが、そいつは恐れる風もなく、フワフワしながらこちらを見ている。

「あなたたち、迷い人さんね?」

 言われて、悟嬢と顔を見かわす。

 ポチョムキンとの戦いで結界の割れ目に呑み込まれて、ここに来てしまったのだ。

 してやられた、あるいは嵌められたという意識はあるが、アリス的迷い人というのとは違う。自分の意思で来たわけじゃないからね。

「そういう顔をしている人を『迷い人』って言うの、わたしに付いて来て」

 そう言うとウサ耳は、クルっと前を向いて、ズンズン歩き出した。

「わたし、エリザベータ。微妙に長いからエリザでもベータでもいいわよ。あなたたち魔法少女でしょ?」

「分かるのか?」

「ええ、迷い人で無事にたどり着いたのなら、ただものじゃないわ。男なら魔法使い、女なら魔女か魔法少女。見た感じボルシェビキでもないし邪悪でもないから魔法少女。で、お名前は?」

「マジカ、こっちは孫悟嬢」

「孫悟嬢!?」

「知っているのか、わたしのこと?」

「ええ、孫悟空の話は有名でしょ。日曜学校の子たちも好きで、ジュニア版の『西遊記』は人気よ。本当は、ちゃんと大人版の『西遊記』を読みたいんだけど、ミーシャが、あ、ミーシャっていうのは日曜学校の先生でね、ミーシャが『子どもには難しいですから』って読ませてくれないの。本当は、難しいんじゃなくて、子どもには読ませられない内容だからくらいは分かってる。いわゆるZ指定ってやつよ。わたしは、もう子どもじゃないんだから、読んだって問題ないと思うんだけどね、まあ、ミーシャの言うことは90%は正しいことだからね。まあ、がまんしてるのですよ」

「「フフフフ」」

「失礼ね、わたしは、もう十六歳なのよ! 男子だったら士官学校だって入れるわ、予科だけど。で、孫悟嬢ということは、悟空の奥さん?」

「孫だ」

「フフ、そうよね。キタイスキー(中国人)は夫婦別姓だから、夫婦で苗字が同じわけないもんね」

「フフ、物知りだな、エリザ」

「ありがとう、悟嬢! エリザでもベータでもいいって言ったけど、ほんとはエリザって呼ばれる方が好き。だって、ベータって、英語で言えばBのことでしょ、なんだかB級のエリザって感じ。だからエリザ」

「こっちの方は知ってるのかい?」

 悟嬢がわたしを指さす。

「うん、もう千年くらいやってるヤポンスキーの魔法少女。通り名は渡辺真智香。渡辺って言うのは武士階級の名族の苗字よね。清和源氏の流れをくむ河内源氏」

「驚いたなあ、だが、渡辺は清和源氏ではない、嵯峨源氏だけどな」

「サガ源氏? ウウ、ミーシャの10%の間違いか。でも、酒呑童子をやっつけた源頼光の四天王には違いないでしょ?」

「酒呑童子や源頼光まで知っているのか!?」

「へへ、日曜学校の知識だけどね。わたしのウサ耳は伊達じゃないのよ」

「「なるほどな」」

 悟嬢と声が揃ってしまった。

 

 パパパパパーーーン!!

 な、なんだ!?

 

 村の入り口まで来ると、盛大に花火があがった!

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔
  • サム(サマンサ)     霊雁島の第七艦隊の魔法少女
  • ソーリャ         ロシアの魔法少女
  • 孫悟嬢          中国の魔法少女

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • ファントム      時空を超えたお尋ね者

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・96『微妙な気持ち』

2022-10-16 06:20:13 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

96『微妙な気持ち小菊 





 我が家に外人さんがやって来た(;゚Д゚)。

 それも十八歳のブロンドの女の子……第一印象は女の人なんだけど、自己紹介で十八と言われてぶっ飛んだ。

 今どき外人の女の子なんて珍しくないんだけど、受ける印象がひどく大人びている、おまけに日本語ペラペラ。

「……ということで、しばらくお預かりすることになった、みんなよろしくな」

 お祖父ちゃんの紹介が終わると、青い瞳を春の海のような穏やかさにして口を開いた。

「マッジ・ヘプバーンと申します、急な話でご迷惑をおかけするかもしれませんが、勤め先が見つかるまでの間ですので、なにぶんよろしくお願いいたします」

 そうなんだ、マッジさんは急に決まったお務めの為に、松ネエと同じ便で東京にやって来た。

 羽田からは、自分の勤め先に行く予定だったんだけど、勤め先が火事で焼けてしまうという不運。

 とりあえず落ち着く場所が必要ということで、松ネエが電話してきてお祖父ちゃんが二つ返事で引き受けた。

「当たり前なら、いったんハワイに帰るところなんですが、不退転の決意でやってきたものですから無理を申しました」

「いやいや、是非にと言ったのはわたしの方だ。お節介なんだが、若い人の決意は応援したくてね」

 お祖父ちゃんが頼もしそうに言う。あたしが突破新人賞を獲った時も似たような顔をしていたけど微妙に違う。

 お祖父ちゃんが三十歳も若ければ「惚れたか?」と勘違いする。曰く言い難しなんだけど、言葉にしたら「頼もしそう」ということになる……しておく。

「部屋は、小松の隣の部屋を使ってもらう」

 うちは無駄に部屋が多い、大昔置屋をやっていた名残なんだけどね。

 あたしは、微妙な気持ちになった。

「あ、えと……あ、
あそこは、あたしが使いたいんだけど(#゚Д゚#)!」

 

 みんなの視線が集まった。

 

「えと……本を書くじゃない、今の部屋は通りに面してて、ちょっとね」

「おまえ、そんなこと言ってなかったじゃねえか」

「うっさいわね! 考えてたけど言い出せなかったんじゃない」

「だけどなあ」

「うっさい、腐れ童貞!」

 

 実は兄貴が正しい。今の今まで部屋を代わろうとは思ってなかった、お祖父ちゃんがいきなり言うもんだから、反射的に出てしまった。

 

 うちは間数は多いけど、手入れや掃除をしないですぐに使える部屋は、そんなには無い。

「わたしが無理を言ってるんですから、パイン……小松さんと同じ部屋で結構です」

 うちに来るまでは、松ネエと、そういう話になっていたらしい。

「ようし、マッジさんには小菊の部屋を使ってもらおう。じゃ、今から引っ越しだ」

 お祖父ちゃんが宣告した。

 身から出た錆。

 

 夕べは遅くまでかかって引っ越し。とてもあたしとマッジさんだけではできないので、兄貴と松ネエも手伝ってくれる。一言も文句言わないで。

 悔しいけど、二人の方が大人だ。

 自己嫌悪で夕べは眠れなかった。

 今朝起きると、町内恒例のドブ掃除をやっている。うちは間口も広いので一家総出、マッジさんもTシャツに短パンという出で立ちで手伝っている。

 あ、つい寝過ごしちゃった……

 声が小さすぎたのか、誰も反応しない。

 急いで状況を判断、下水に撒く薬がまだのようなので「薬もらってくる!」と宣言して町会長さんちへ。

 それからは、例年通り、手を洗ったり着替えたりしてからみんなでスイカを頂く。

 そして、反省しながら、この文章を打ってんのよ。

 も、文句ある!?

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            

 

 

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