大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・350『ラジオ体操人形の呪い』

2022-10-05 16:56:40 | ノベル

・350

ラジオ体操人形の呪いさくら    

 

 

 無抵抗なまま胸までスカートがまくり上げられ、パンツが膝までずり降ろされ、裏がえしにされたかと思うと、眩しいほどに白いお尻が露わになった!

 そして、その白い双丘に、ギラギラと欲望に満ちた十個の目玉が釘付けになるのであった!

 

 あ、変な想像したぁ?

 

 実はね、ほら、テイ兄ちゃんが、お骨といっしょに預かってきたドール。

 夜な夜な、シクシクと泣く。

 センサーが、時間やら人が近づいたのを感知して、いろんな言葉を喋るんやけど『シクシク泣く』という設定は無い。

 それに興味を持った頼子先輩とソフィーがやってきて、本堂裏の旧文芸部の部室で実況見分になったという次第。

「ドールは、お尻のところにメーカー名とシリアルナンバーがあるのよ」

 ソフイーの情報部員らしい着目で、ドールのお尻をみんなで視てるわけです。

 メーカー名とシリアルが分かったら、今のご時世、ネットで検索したら一発で分かるということなんです。

 

 …………無い!?

 

 ドールのお尻は、ツルンツルンで、ナンバーも刻印もありません。

「どういうことなの!?」

 ワトソン君の勇み足を咎めるシャーロックホームズみたいに眉根を寄せる頼子さん。

「では、背中と首筋を調べます! 物によっては、こちらにある場合があるから」

 ソフィーは、ドール本体や衣装にダメージを与えないよう、器用に素早く衣装を脱がせた。

 これは!?

 イテ!

 あんまり顔を寄せたんで、うちはメグリンの頭とぶつかってしもた。

「あ、ごめん」

 メグリンは膝立ちになって、うちの頭の上から覗き込む(^_^;)。

 首筋と背中にはメーカー名があったんやけど、なんとメーカーが違う。

 背中・メーカーA  首・メーカーB  お尻・無印 

 なんや、バラバラの死体から別の体をでっち上げたフランケンシュタインみたいな……思たけど、口には出しません。

 あたしも、高校生、ちょっとは考えるようになった。中学やったらいちびって叫んでたやろけどね。

「どういうことなの、ソフィー?」

「おそらくは、三つ以上のメーカーのパーツを寄せ集めて作られたオリジナル……内部のメカもだと思う。これ以上は、本格的に分解しないと分からない」

「ああ、ちょっとそれは……」

 頼子さんがためらいの声を上げて、留美ちゃんもメグリンも詩(ことは)ちゃんも――それはそうや――とうなづく。

 あたしは分解してみたかったけどね。

「たぶん、プログラムもオリジナルだけど、これ以上は興味本位で触るべきじゃないでしょ」

 ドールの衣装を戻しながらソフィーが結論付け、ドールを元の場所に戻して、お祖父ちゃんを呼ぶ。

「気ぃすんだんか?」

「あ、はい。無理なお願いいたしました。お供養お願いします」

「よっしゃ、ほんなら、みんなで手ぇ合わせとこか」

 みんなで手を合わせて、おしまいにしました。

 

「あ、人形っていえば、あれがあるじゃない」

「あれ?」

「あれよ、あれ」

「あ、ああ、あれ」

 

 これだけで意味が通じるのは、同居の従姉やからやと思います。

 うちは、部屋に戻って懐かしい人形を持ってきました。

 

「クレーンゲームの景品?」

「いや、ちゃうんです!」

 詩ちゃん以外は――なんや(期待外れ)――いう顔したけど、うちの一言で顔を寄せてくる。

 フフっと笑うお祖父ちゃん。

「これは、ラジオ体操人形なんです!」

「「「ラジオ体操?」」」

 ほら、三年前の夏、テイ兄ちゃんが檀家さんから貰ってきた縫いぐるみ(041『不発の漫才いう感じで縫いぐるみをもらった』)です。

「ほら、ここを押えるとね……」

 チャンチャカチャン(^^♪ チャンチャカチャン(^^♪ チャチャチャチャチャンチャカチャン(^▽^)/

「「「「おお!」」」」

 ソフィー以外の四人が――懐かしい!――という歓声をあげる。

 日本人以上に日本慣れしたソフィーやけど、このメロディーは知らんかったみたい。

「体操みたいだけど、聞くのは初めて」

「そういえば、小学校でやったきりかも、あなたたちは?」

 ソフィーが興味を持って、詩ちゃんが水を向ける。

「あ、そういえば……」

「ラジオ体操って、まともにやったことないかも」

「自衛隊体操なら知ってるけど(^_^;)」

「なんや、いまの学校はラジオ体操せえへんのんか?」

 中学でも高校でも……いや、小学校の三年ぐらいからは、学校独自の体操で、ラジオ体操はせえへんかった。

「テンポはいいけど、どうやるのか、分からないわね」

「わたしは、全然分からない」

 ソフィーは腕を組んでしもた。

「よし、お祖父ちゃんが見本見せたろ!」

「え、お祖父ちゃん!?」

「これでも、高校で体育委員やってたんやぞ」

 そういうと、お祖父ちゃんは、本堂の真ん中で見本をやりはじめた。

 

 チャンチャカチャン(^^♪ チャンチャカチャン(^^♪ チャチャチャチャチャンチャカチャン(^▽^)/

 

 おお!

 

 意外な体の柔らかさに、みんな感嘆の声を上げる。

 一番を終わったお祖父ちゃんは、自分からラジオ体操人形2号のスイッチを入れて、二番に移った……

 

 グキ!

 

 最初の跳躍運動で足をグネてしもた!

「大丈夫、折れてはいません!」

 ソフィーが調べて応急措置をしてくれる。

 で、みんなが「ありがとうございました」とお礼を言うて帰った後、今度は腰が痛みだした。

「いや、ここまで歳はとってへんぞぉ!」

 お祖父ちゃんの強がりのため、この一件は『ラジオ体操人形の呪い』ということになってしまいました(^_^;)

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー       ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか     さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 女王陛下      頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・85『このビルは増田さんちの?』

2022-10-05 06:53:33 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

85『このビルは増田さんちの?オメガ 





 アニメには詳しくない俺でも、それと分かるものが一杯だ。

 もののけ姫 千と千尋の神隠し 魔女の宅急便 となりのトトロ ラブライブ ラブライブサンシャイン 化物語 地獄少女 ラブプラス ドラえもん タイトルは分からないけど多分アメコミのキャラ そしてハリーポッター スターウォーズ えと……

 とある科学の電磁砲 はがない おれいも アルプスの少女ハイジ 魔法科高校の劣等生 アナザー トリニティーセブン ブラッド うる星やつら ペルソナ4 宇宙戦艦ヤマト あしたのジョー ガンダム トゥーハート……

 俺が詰まったのをシグマが引き受けてタイトルを言ってくれる。 

「すごいよ増田さん!」

 シグマでも詰まったところでノリスケが感嘆した。意識しているわけじゃないんだろうけど、感嘆するタイミングを心得ている。

「これ、涼宮ハルヒの北高なんだけど、このブレザーのは?」

「それは『涼宮ハルヒの消失』の別世界でハルヒが通っていた光陽園学園」

「あ、そっか、あそこはブレザーだった!」

「気づいたシグマさんもすごいです!」

 シグマと増田さんは相似形なのかもしれない。

「でも、これだけのコレクション、どうやって集めたの?」

「えと……ここは元々はコスプレ衣装の会社が入っていたんです、それが去年倒産して、溜まった家賃が払えないので置いて行ったんです」

「てことは、このビルは増田さんちの?」

「え、あ、はい」

「ビル一つ持ってるってすごいよ」

「えと……お祖父ちゃんが元気なころに建てたんです」

「お祖父ちゃん?」

「今は入院してます」

 ビル一つおっ建てるなんて、うちの祖父ちゃんよりもすごいぞ。

「ねえ、着てみてもいいかな(#
^_^#)?」

 シグマがノリノリの気分になった。

「あ、どうぞどうぞ、そのために来てもらったんです!」

 で、ファッションショーが始まった。

 いろいろ試した末に、俺は宇宙戦艦ヤマトの古代進に、ノリスケはルパン三世、風信子はアナと雪の女王のアナ、シグマはおれいもの高坂桐乃に変身した。

「じゃ、みなさーん、チーズです~」

 みんな並んで記念撮影、シャッターを押したのは増田さんだ。

 カシャ!

「ね、増田さんもコスプレして撮ろうよ!」

「あ、いえ、わたしは……」

 増田さんは身を縮めてイラナイイラナイをする。

「でも、せっかくだから」

「いえ……」

「ここのコスプレ衣装って、みんなタグとか仕付けが付いたままだけど、増田さんは……」

「見てるだけで十分なんです」

「あ、そうだ、みんなで『耳をすませば』の制服着て写真撮ろうよ!」

 シグマがいいことを思いついた。増田さんはノリスケに借りた図書館の本を拾ってもらい、自分を『耳をすませば』の月島雫に仮託することによってノリスケにアプローチできたんだ。これならイケる!

「じゃ、こんなとこかな」

 シグマは数が揃っている制服を、人数分見つくろった。

「あ、それじゃだめです」

「これ似てるけど」

「ぜんぜん違います、『耳をすませば』の制服はこちらです」

 奥の方から五人分の制服とパネルを持ってきた。パネルは月島雫と天沢誠二の立ち絵だ。

 俺たちはパネルと見比べながらコスプレし直した。

 増田さんは、奥で着替えていて、オズオズと出てきたときにはビックリした。

 ウィッグを付けてメイクまでした増田さんは月島雫そのものだった……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
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