大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・354『文化祭が決まれへん!』

2022-10-27 14:55:19 | ノベル

・354

文化祭が決まれへん!さくら    

 

 

 文化祭の取り組みが遅れてる。

 

 うちのクラスだけやなくって、学校全体が遅れてる。

 なんでかっちゅうと、コロナですわ。

 外国人旅行者への規制もほぼなくなってインバウンド(中身に凝ったバウンドケーキみたい(^O^))もコロナ前に回復し始めてんねんけども、相変わらずテレビとかでは『本日の感染者数』を発表してて、『第八波の流行が危ぶまれる!』とかワイドショーで煽ってるんで、先生やら理事やらPTAの一部なんかが二の足、三の足ですねんわ!

 先生 理事 PTAの偉いさん……共通点は、みんな年寄り! 年寄りはテレビのワイドショーばっかり見てるからね。

 それで二の足、三の足。

 年度初めの行事予定では10月の15日、16日やったんやけど、ズルズル遅れて11月の23日、一日だけの開催。

 中止の声も大きかったんやけど、三年生は入学以来一回も文化祭を経験してへん。

 その三年生からの強い要望やら、OBからの声援やら、近隣の実施状況やらを鑑みて、やっと実施のみこみ。

 せやけど、一年生は、ちょっと冷めてきてます。

 クラスでも、ペコちゃんが取り組みのアンケートをとってHRを盛り上げようとしたんやけど、どうも盛り上がれへん。

 アンケートでは、たこ焼き屋とかクレープ屋とかの模擬店が半分以上やったんやけど、いざ、話し合いをすると熱が無い。飲食店は、調理に関わる者は検便せならあかんというのが分かると、さらに熱が下がる。

「う~~ん、もう一つ議論が深まってこないわねえ……(^_^;)」

 ペコちゃんは、この三月までは安泰中学で、うちらの担任やってたさかい、生徒の事がよう分かってる。

 この状態で決めたら空中分解して悲惨な状況になるのん分かってるねんわ。

 ペコちゃん、舞台で合唱するという腹案を持ってるらしいねんけど、担任が押し付けるようなことはしたくない。

 それに、あんまり盛り上がれへんことは、口に出してこそ言わへんけど、ペコちゃんにもうちらにも予想はつきます。

 三年ぶりの文化祭、やっぱり熱の高いもんやりたいです。

 

「ねえ、ちょっと様子を見に行こうよ」

 

 留美ちゃんの提案で、昼休、職員室にメグリンも居れて三人でペコちゃんを訪ねることにしました。

「失礼しま……」

 職員室に入って、ペコちゃんの席を見ると、聖真理愛学院の重鎮が一二年生の先生らに熱く語りかけてるのが目に飛び込んできた!

「我儘なことを言っているのは百も承知です。でも、このままでは文化祭の取り組みの大方は空中分解してしまいます。われわれ三年生には最初で最後の文化祭になります。どうか、取り組みが未定のクラスがありましたら、三年生有志学級と合同の取り組みにご協力ください!」

 まるで、ラスボスの魔王を倒すのにギルドで仲間を募ってる女騎士長!

 というか、その声はまさに今春一番人気アニメやった『異世界大戦』のヒロイン、シャルロッテ・ヒンデンブルグ。その前は『恋するマネキン』でヒロイン、マネキとネキンの声を一人でこなした声優生徒会長の百武真鈴こと田中真央!

 声は、もともとスゴイとこへもってきて、120%の闘志がみなぎってて、これに賛同せえへんやつは、よっぽどの悪党か玉無しのヘタレという感じ。

「全体像を一分で示します、これをご覧ください」

 生徒会書記の眼鏡っ子が、国会中継の野党議員みたいに大型のフリップを掲げた。

 その声と手際の良さに、先生らのほとんどが視線を向け、わたしの肩には手が置かれた。

「え?」

 振り返ると、我らが姫騎士、頼子先輩がガードのソフィーを引き連れて立ってる!

 まるで、勇者を見送りにお城から出てきたお姫様みたいやったやおまへんか!

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら    この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌      さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観     さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念     さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一     さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保     さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美     さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子     さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー      ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー       ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか     さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 女王陛下      頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宇宙戦艦三笠2[黎明の時・2]

2022-10-27 06:44:13 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

2[黎明の時・2]   

 

 なかなか寝付けなかった。

 潰した当事者が言うのもなんだけど、ブンケンは学校での唯一の居場所だった。

 と言っても、ブンケン以外でシカトされたり、学校そのものが嫌になっていたわけじゃない。一年生のトシを除いて樟葉も天音も横須賀国際高校の生徒としてはテキトーに順応して立ち回っている、むろん俺もな。

 でも、なんちゅうか、本音で付き合えたのはブンケンの仲間だけ。でも、そのことをブンケン同士で言うのは気恥ずかしくって言ったことは無い。フランクに生きているようでも、高校生というのはめんどくせえもんだよな。

 ブンケン(横須賀文化研究部)という地味なクラブは元来が横須賀を舞台にしたRPGの聖地巡礼のオタクが集まってできたクラブだけあって、仲間内の結びつきは強かった。

 オレたちが入部したころ、NHKの『坂の上の雲』がネット配信で何度目かのブームになっていた。聖地巡礼みたいに戦艦三笠やロケ地を巡って部活のホームページに上げたり、SNSで動画をアップしたり、イベントなんかは実況したり。広告料やスパチャも少しはあったりして、部活の機材を揃えたり取材費に使えたりして充実していた。

 でも高校生の悲しさ、半年もやると横須賀ネタが途切れてきた。調べると横須賀ネタは『坂の上の雲』の他は『つ〇きす』とかがあるんだけど、R指定なんで取り上げるわけにもいかない。純粋に自衛隊や米軍がらみのネタは歴史にしろリアルにしろ、ブンケンでは及びもつかないオタクや大人の人ばかりで太刀打ちできない。

 それで頭を巡らせると、隣接する横浜や湘南を舞台にした映画やドラマやアニメはいくらでもあることに気付く。それで、放課後や休日に足を伸ばしてネタを仕込むんだけど、やはりニワカがアクセス稼ぎにでっち上げても、そうそうアタリをとれるもんじゃない。

「まあ、資金も少しはできたし、あとは君たちでがんばんなよ」
「うんうん、自分でやってこその部活だからね」

 三年生の広瀬先輩、杉野先輩に励まされて、なんとか頑張ってきたけど。目立った成果もあげられず、部活の最低要件である――部員五人以上――も割ってしまって部室を明け渡すことになってしまった。

 

 トシ

 

 トシは、この春、たった一人の新入部員として入ってきた。

 でも、一学期の終わりごろから不登校になっちまって、二学期になったら……という願いも虚しく、本物の引きこもりになっちまった。何度か家まで行ったけど、会うことさえできなかった。校門前で解散の一本締めをやったとき電柱三つ分先に来れたのはトシにしては上出来。

 三人の結びつきは……正直ただの「同級生」になってしまいそうだな。天音も樟葉もわけもなく群れるのは良しとしないタイプだ。

 寝られないままパソコンを点けた。立ち上がると習慣でブンケンのアイコンをクリックしてしまう。

 あ……そうか。

 削除したので何も出てこない。

「天音と同じことやってどーすんだよ……」

 樟葉か天音とチャットとも思ったけど、午前0時半という時間を考えれば気が引ける。それに、こういう傷の舐めあいみたいなことは樟葉は苦手だし天音は嫌いだしな。

 もう切ろう……そう思った時、画面に『後ろを見て』という文字が浮かび上がった。


 え……なんだろう?


 振り返ると……セーラー服にお下げという古典的な女生徒が、オレのベッドにハニカミながら座っていた。

「ども……」

「だれ……?」

「えー……神さまだったり……します(*´∀`*)」

「か、神さま!?」

「あ、一応って枕詞がつくけどね(^_^;)」

 ハニカミながら、でも、どこか真剣な眼差しは、ジブリの『コクリコ坂から』に出てくるメルに似ている。

 スーーーー

 その子は座った姿勢のままオレの傍に寄ってきた……つまり座ったまま宙に浮いている。

「え……神さまが、なんの用……っすか?」

「宇宙戦艦三笠に乗ってもらえないかしら?」

「……は?」

「うん(^_^;)」 

 とたんに周りのものの存在が希薄になり、すぐに真っ白になったかと思うと急に椅子の存在が無くなり、20センチほど自由落下した。 

 わ!? 

 腹にズンときて落ちたところは、革張りのソフアーの上だった。

 テーブルを挟んで右側に樟葉と天音。左側にはトシが居る。

 で、二秒ほどして気づいた。天音が素っ裸。

 で、次の瞬間天音の悲鳴が、世界中の熟睡者を起こすぐらいに響き渡った……。


 キャーーーーーーーーー!!

 


☆ 主な登場人物

 修一      横須賀国際高校二年
 樟葉      横須賀国際高校二年
 天音      横須賀国際高校二年
 トシ      横須賀国際高校一年

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・乃木坂学院高校演劇部物語・7『スマホ片手に悶々』

2022-10-27 06:20:53 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

7『スマホ片手に悶々』  

 

 

 寝床でスマホを手に悶々(もんもん)としている。

 

 悶々って「もだえ苦しむ」って意味だけど、もだえてはいなっかった。じっと仰向けになってスマホとにらめっこ。でも心はもだえていた……でもって、ラノベくらいしか読まないわたしのボキャブラリーでは、この表現が精一杯。

 なにを悶々としていたかというと……観客動員ですよ。

 コンクールの観客って、手の空いた出場校や、出演者の友達、家族、その程度。まちがってもコンビニでチケ買ったり、ネットで予約してくるお客さんなんかいないんだ。

 だいたい、入場料そのものとらないんだもん。とったら、それこそ誰も来なくなる。甲子園の「高校野球大会」はアルプス自由席でも五百円の入場料をとっている。高校生のお芝居だって、三百円くらいはとってもいいんじゃないかと、乃木坂で演劇部やってると思うんだけど(それだけ、プライドと自信はある)

 でも、他の学校は、ひどいのになると学芸会。とても、お金とって他人様にお見せはできません。

 それと、入場料とると、既成脚本の場合、上演料が一万円を超えちゃう。

 なによりも入場料とっちゃうと、劇中で使う音楽や効果音の使用に著作権というヤヤコシイ問題がおこってくる。無料であるからこそJASURACも「曲や歌詞に改変を加えない限り、使用許可も、使用料もいらない」ってことになっている。

 じゃあ、乃木坂の看板で観客……せいぜい百人くらいしか集まらない。
 フェリペのキャパは四百。ちょっとキビシイ。

 で、マリ先生のご命令で、一ヶ月も前から各自観客動員に力を入れている。
 わたしも主だった友達なんかにはメールを送りまくった。

 でも、リハの夜になってもメールを送りかねているヤツが一人……。


 わたしのモトカレ、大久保忠友……。


 アイツとは、去年の秋、あらかわ遊園でデートして以来会っていない……。

 受験をひかえた去年の秋、久々に「デートしようぜ」ってことになり、互いにガキンチョのころからお馴染みのあらかわ遊園。

 都電「荒川区役所前」から、九つ目があらかわ遊園前。お互い小学校の遠足で来て以来。ガキンチョに戻ったようにはしゃいでいた。都電の中でも、遊園地の中でも。
 互いに意識していたんだ、このデートが特別なものになる予感……それが嬉しくって、怖くって、はしゃいでいた。

 カレとは、中二のときに同じクラスになり、いっしょに学級委員をやったのが縁。

 二人ともお祭り騒ぎが大好きだったんで、クラスのイベントは二人で企画して意気投合。

 意識したのは、文化祭の取り組みで一等賞をとったとき。

 実行副委員長をやっていたはるかちゃんが表彰状を読み上げてくれた。実行委員長の山本って先輩が、閉会式の直前に足をくじいて保健室に担ぎ込まれていたので、はるかちゃんが代読。

「……よって、これを表します。南千住中学文化祭実行委員長 山本純一。代読五代はるか。おめでとう……」

 幼なじみの顔になって、はるかちゃんが表彰状を渡そうとしたとき、突然いたずらな風が吹いてきて、表彰状が朝礼台の前で舞い上がってしまった。

「「あ、ああ……!」」

 慌てたカレとわたしは、表彰状を追いかけてキャッチ……そして、お互いもキャッチ……つまりね(思い出しても顔が赤くなる)偶然ハグ……ってか、モロ抱き合っってしまった(#´ω`#)。

 それも、なんという運命のいたずら。互いのクチビルが重なってしまったんだ!

 わたしにとって……多分アイツにとっても、ファーストキスは何百人という生徒と先生たちの公衆の面前で行わてしまったんだ((;'∀'))よね!


☆ 主な登場人物

仲 まどか       乃木坂学院高校一年生 演劇部
芹沢 潤香       乃木坂学院高校三年生 演劇部
貴崎 マリ       乃木坂学院高校 演劇部顧問

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする