大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 132『忠八の慰労会』

2023-07-18 11:35:36 | ノベル2

ら 信長転生記

132『忠八の慰労会織部 

 

 

「そがなことなら、うちが案内しょう」

 

 乙女会長は気安く腰を上げ、わたしと武蔵の前を歩いた。

 学園に二宮忠八を訪ねたんだけど、約束の時間になっても現れない。それで生徒会室に行ったら、生徒会長自らが案内してくれることになったんだ。

「いやあ、あそこは、学園の中でもいちばんややこしいところにあるきなあ、案内無しではぜったい迷うぜよ」

「忠八くんは、ずいぶんと忙しいようですね」

「もうしわけない。飛行部は場所をとるんでクラブハウスには収まらんき、奥の奥に行ってもろうちゅー。いまは、クラブ予算の折衝の時期やき、ちっくと走り回っとるんや思う。校内放送も頼んじょいたきね」

『飛行部の二宮忠八くん、二宮忠八くん、御来客ですので至急部室にお戻りください。繰り返します……』

「あ、さっそく……」

「生徒会役員や部長はGPSをつけろという声もあるがやけんど、勘弁してもろうちゅー。GPSは防犯カメラとリンクしちゅーき、行儀悪うしちゅーとこなんか見られたらかなわんきね。あ、足もと気ぃ付けて。そこ、頭打たんように……」

「おっとっと……」

「こんどはこっちを……」

 

 安全対策さえしておけばテーマパークのラビリンスになりそうなところを抜けて、くたびれた倉庫の前に出る。

 

「まあ、放送もかかったし、ざんじ来るぜよ。それじゃあね(^▽^)」

「お世話になりました」

 不愛想な武蔵の分も合わせて礼を言って頭を下げる。振り返って倉庫を仰ぐと背後で「ウワア!」と乙女会長の悲鳴とガッシャーンと物の崩れる音。

「大丈夫ですかぁ?」

『アハハ だいじょぶ だいじょぶ(^_^;)……』

 

 やっと乙女会長の気配が消えると、今度は武蔵。

 

「殺!」

 剣呑な気合いと共に太刀を抜く。

 慣れっこになっているので、肩に手を置いて制止する。

 見上げると、瓦礫とスクラップの山の向こうからハングライダーで忠八が降りてくるところだった。

 

「いやあ、すみません、予算折衝であちこち飛び回っていたので、申しわけありませんでした」

「いいよいいよ、こっちも朝に電話を入れたとこだったし」

「どうぞ、散らかしていますが、お入りください」

 クキ クキ ガタピシ ギーー

 大戸の脇の潜り戸を、忠八以外では絶対開けられないだろうという感じで開け、パチンと電気のスイッチを入れる。

「おお……」

「散らかっていて、申しわけないです(^_^;)」

 並のちらかりようではない。

 一見、無造作無分別に散らかされているようだけど、物づくりの勢いと、その試行錯誤が結晶したようなスゴミがある。

 わたしは、数々の名品を手に入れ、あるいは手に入れることができずに垂涎の眼で見てきたが、その名品のあれこれが作り上げられたのは、こういう設えの構えがあったからだろうという感じだ。

 焼き物に窯変をおこさせる窯の中、火が周って薪や炭が朱く火照りながら崩れ始めた、そんな案配を感じさせる。

「写真に撮っていいか?」

「え、あ、恥ずかしいです。あ……武蔵さん?」

 ブン!

 わ!

「いきなり抜かないでくれる!?」

「許せ、この有様に、この剣を対峙させたくなったまでだ」

「あ、あ、そうですか(^_^;)」

「忠八」

「はひ」

「この武蔵、お前のことは単なる酔狂者と思っていたが、この情熱と有様は佐々木小次郎に匹敵するぞ」

「佐々木小次郎ですか、あの、燕返しの!?」

「ああ、剣の他にはなにも分からぬ武蔵だが、これには感服いたしたぞ」

「あ、ありがとうございます!」

 褒めるにしても、自分に負けた小次郎に例える……まあ、これも武蔵の面白さだけどな。

「感心ばかりしていても仕方ない、今日は、見事に双ヶ岡から三人を飛ばした技師殿の慰労に来たんだ。いろいろ作ってきた、宴会をしよう!」

「え、あ、あ、え? そうだったんですか!?」

「ああ、そうだ!」

「いや、僕は、また、その、まだまだご不満があって来られたんだと、それなら、工場に全部揃ってますから、話が早いと思って……そうか、そうなんですか。だったら、ここは宴会には向いてませんから、そうだ生徒会室を借りましょう!」

 ということで、再びラビリンスを通って生徒会室に戻る。

 無駄足をさせたと言うので、恐縮しきりの忠八だったが、わたしも武蔵も満足だった。

 

「いやあ、ほんなら皿鉢料理も出さんとならんろ(^▽^)!」

 

 乙女会長は目をへの字にして歓待してくれ、副会長の巴御前たちも加わって陽気な慰労会になる。

 

 思えば、信長がやってくるまでは、ここまで学院と学園の交流は無かった。

 転生への覚悟とコンセプトが違うからと、互いに敬遠するところがあったが、それは違った。

 市といい、リュドミラといい、いっしょに行動すると、とってもいい奴だった。

 茶姫を扶桑に連れ帰ったのは、事の成り行きと言えば身もふたもないが、自然な成り行きにさせたのは、信長と、扶桑、三国志の熱い男や女たち。

 やはり、秋が動き始めた。

「ほお、おまんらも行くか!」

「はい、陰ながら道を付けます、下準備の根は張ってきましたから」

「そうか、出来るなら戦はしたくはないが、避けられんものならやらんとならんろう」

「わたしも行きたいなあ」

「巴、おまんは義仲さんを待たんといかんやろう」

「分かってる、義仲どのが転生された暁にはな」

「しかし、大丈夫ですか、武蔵さん殺気に満ち満ちてきましたけど」

「なあに、これがある」

「ちょ、織部、これは国境を超える時でいいだろ!」

「いや、何事も準備が大事だ……えい!」

「え、あ、わ!?」

 もう慣れたもので、あっさりと武蔵の目にカラコンをハメてやる。

「「「おお!」」」

 

「あ、あ…………そんなに見つめられると、ムサ、困ってしま……(*´△`*)」

「ああ、そうや、武蔵はムサちゃんに変身するがやった!」

 

 武蔵をムサちゃんにして学園を後にし、国境を目指した。

  

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

   

 

 

 

 

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RE・かの世界この世界:161『棺の中から』

2023-07-18 06:10:21 | 時かける少女

RE・

161『棺の中から』ポチ 

 

 

 

 四人とも固まってしまったよ(;゚Д゚)。

 
 吸血鬼がベッドに使っているのでなければ死体が収まっているはず。その棺桶から声がしたんだからね。

 でも、固まり方が違う。

 あたしはオカルト的な驚き、フェンは犯罪の証拠を見てしまったように驚き、中年夫婦はちょっとした隠匿物資を見つけられたような驚きだったよ。

 

『あ……だれか、人がいるのかい?』

 

 気まずそうに棺の声が続いた。

「実は……棺の中は母なんだ。死亡予定日には間があるんだけど、仕事の都合で、今日しか墓地にいけなくってね……そりゃあ、死亡前埋葬は違法だけども、みんなやってることだし……むろん、母の意思は確認したよ」

「そうなの、そもそも言い出したのはお義母さんの方からなの。そうでしょ、お義母さん?」

 すると、ほとんど音もなく棺の蓋が開いて、顔色の悪いお婆さんが上体を起こした。

「よっ……こらしょっと。そうなの、言い出したのはわたしよ。息子は公務員で、内容は言えないんだけど、とっても忙しい仕事をしているの。それが、来週……グズグズしてたから、もう明日からかしらね、とても忙しくなるの。国や社会にとっても大事な仕事でね、この春に課長になったばかりで、繁忙期に休むわけにもいかないし。それで、わたしから言ったのよ。通りすがりのお人なんでしょうけど、これも縁だと思ってちょうだい。この通りだから」

「あ、え、死に装束で手を合わされましてもね(^_^;)」

「じゃ、頭を下げるわ。これ、この通り。ほれ、あんたたちも」

「わ、分かりました。見なかったことにします。見なかったんだから、エンコしてることにも気づかないわけだから、修理は他の人に見てもらってください。じゃ、いこうベス」

「う、うん」

 回れ右した後ろから、小さく「ありがとう」の声がするけど、気持ちは「手を貸してくれたっていいじゃないか」が感じられ、なんだか、あたし達の方が悪いことをしたみたいで、面白くないよ。

 フェンが車を出すのを待って声をかけた。

「生きたまま葬るってありえあないでしょ」

「死んだら神さまだからね、そんなに抵抗はないんだろう。棺も生前葬仕様で、最長一年の生命維持ユニットが付いている。違法なことなんだけど、半神政府も実質は見て見ぬふりなのさ」

「公務員って言ってたわよね。公務員だったら、有給ぐらいなんとでもなるって気がするんだけど」

「あいつは、情報管理局だ。以前、潜り込んだ庁舎で見かけたことがある。なにか大きな動きがおこる前兆なのかもしれない」

「半神族って、わけわからない」

「ちょっと探りを入れてみよう」

 ニヤリと方頬で笑うフェン。

「フェン、変な笑い方しないでよ」

「フェンじゃない、ダグだよ。ベス」

「そうだったわね」

 フォルクスオーパーはデミゴッドブルク方面行きの車線に移っていった……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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