大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・038『光化学スモッグ』

2023-07-11 09:17:05 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

038『光化学スモッグ』   

 

 

 前にも言ったけど、昭和の宮之森高校には朝礼が無い。

 

 令和の宮之森はやってると思うよ、小学校や中学じゃやってたしね、なんか常識って感じ。

 先生たちは「遅刻をしないように!」とか注意するけど、朝礼で点呼とれば遅刻は断然減ると思う。

「そりゃあ、朝礼なんかやったら、教師も遅刻できなくなるからなあ……」

 ロコとぼやいてたら、十円男がニヒルに呟く。

「あ、ああ……」

 七月に入って、わたしたち一年生も、少しずつ学校の事情が分かってきた。

 先生の半分は遅れて出勤している。

「そうだよねぇ、日直のとき出席簿や学級日誌取りに行っても、朝の職員室ってガラガラだもんね」

「ああ、うん……」

 教室の窓から見てても、一時間目の途中に校門入って来る先生って、けっこういる。

「知ってるか、一時間目と六時間目って講師の先生が多いんだぞ」

「え、そうなの? っていうか、講師の先生って、どうして分かるの?」

 先生と顔を合わせるのは、ほとんど授業だけだから、講師と正教諭の区別なんてつかない。

「住所録に書いてありますよ」

「え、そうだっけ?」

「ほら」

「ロコ、持ち歩いてるの?」

「データベースですから」

「ちびっこのクセに偉いなあ」

 チラッと十円男を睨んでから続けるロコ。

「ほら、最初に教職員が載ってて、左端に『教諭』『常勤講師』『非常勤講師』とかあるでしょ」

「あ、ほんとだ」

「出勤簿でもわかるんだぞ。正教諭と講師じゃ出勤簿別だしな」

「出勤簿って?」

「職員室入ったとこ、でっかい時間割の下にある」

「ラジオ体操の出席カードのでっかいやつですよね」

「講師って立場弱いからよ、なんだかんだ言って、正教諭の要望が通っちまう。みんな遅く来て早く帰りたいからな」

「でも、部活とかの指導あるんじゃないの、ね?」

「アハハハ……」

「ちびっ……宮田は分かってんのな。正直に付き添ってる顧問なんか、一部の運動部だけだ……」

 十円男が目配せした教室の隅で佳奈子が、なにやらノートに書いている。

「佳奈子、なにしてんの?」

「え、あ、ああ……」

 返事の代わりにバシっと見せてくれた表紙には『女バレ日誌1970』とマジックで書いてある。

「セッターって日誌も書くの?」

「うん、一年は勉強だからね。交代で書いて顧問の机の上に置いとくの」

「ああ……」

「ほんとは、家で書いて始業前に提出なんだけどね(^_^;)」

 邪魔しちゃ悪いので席に戻る。

「顧問のアリバイさ。ページの終りにハンコついときゃ監督してることになる」

「ふうん……」

「ねえ、加藤君は、このごろ遅刻しませんねえ?」

「え、ああ……ちょっと期するところがあってな」

 アゴに手をやって小さく笑う。耳が半分隠れる髪といい、カラーの無い学生服といい、ポケットから覗いている赤本といい、なんか胡散臭い。

 

「あ、そうだ!」

 

 急に立ち上がると、日誌をホッパラカシて佳奈子は教室を飛び出していった。

 佳奈子は体育委員でもあるので、体育のある日は始業前に授業の予定を聞きに行くんだ。

 七月は男子がグランド、女子はプールだから、この三日続きの晴れマーク(めちゃくちゃ暑そうだけど(^_^;))聞きに行くまでもないと思うんだけどね。

 でも、戻ってきた佳奈子は意外なことを言った。

「今日の体育は体操服で体育館!」

 なんで?

 絶好の水泳日和なのに、メチャ不思議……と思ったのはわたし一人、みんなは、チラッと窓の外を見て――仕方ないなあ――という顔をしている。

「なんで納得なの?」

「光化学スモッグですよ」

「コーカガクスモッグ?」

「ここからじゃ見えないけど、グランドに赤旗出てると思いますよ」

「え?」

 

 休み時間、購買にいくついでに覗いたら、ロコのいう通りグランドの真ん中に運動会で立てられてるみたいな赤い小旗が立っていた。

 

 廊下の隅でスマホで検索。

 

 オゾンとかアルデヒドとか硝酸塩とか硫酸塩とかオキシダントとか、オドロオドロシイのがどうのこうので、メッチャ健康に悪いので、この時代は警報だ出たらしい。

 知ってしまうと、急に目がシカシカして、微妙に気分が悪くなったような気がした。

 

 四時間目の体育、ブルマで体育館のフロアを10周! 反復横跳びにうさぎ跳び! でもってトスバレー!

 まるっきり罰ゲーム!!

 

 今までで一番昭和が嫌になった一日だった(-_-;)。

 

 

彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

 

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RE・かの世界この世界:154『オオカミ王子フェンリル二世』

2023-07-11 05:45:28 | 時かける少女

RE・

154『オオカミ王子フェンリル二世』ポチ 

 

 

 

 なにを驚いてるの?

 
 トンネル小僧が不思議そうな顔で聞く。

「そ、それは(ついさっきまで1/12サイズだったなんて言えない)……おまえが、か、かわい……変わってるからだ! オ、オオカミの耳こそしてるけで、まだ、ほんのガキじゃない!」

「子どもでも立派なオオカミだ」

「どこがよ! あたしと目が合っただけで、ぶっ飛んで逃げちまうし、グニャグニャトンネルとラビリンスの区別もついてないし、あたしみたいな女の子に組み伏せられてるし!」

「おまえが怖すぎるんだろ! おまえ、目が合った時は人形みたいにちっこかったくせに……」

「ちっこいゆーーーな! あ、あたしは、最初っからこのサイズよ、あんたの目がおかしいんだ!」

「え? そ、そうなのか…………また見間違えたのか」

「え?」

「………………」

「簡単にしおれないでよ。だいたい、何者なのよ、あんた?」

「おれは、フェンリル二世だ」

「ニセ? おまえ、なにかの偽者か?」

「二世だ、に・せ・い、二代目って意味の二世だ!」

「二世? おまえ、田舎貴族かなんかか?」

「田舎貴族だと!? 失礼な! おれはオオカミの王子だ」

「オオカミの王子? お、おまえが!?」

「お、おう」

「オオカミの王子が、なんで、泥棒みたいにエスケープハッチから入ってくんのよ!?」

「森の出口が二重になってんのかと思ったんだよ」

 森の出口? 

「カテンの森も縮んでしまえば、ヨトゥンヘイム(巨人族の国)は完璧に縮んで、スヴァルトアルムヘイムがユグドラシルの中心の地位を取り返せるからな」

「取り返すだって?」

「そうだよ、世界樹ユグドラシルの中心は根っこのスヴァルトアルムヘイムだぞ。ヨトゥンヘイムの巨人たちじゃない。いや、もう巨人でさえないだろ。半神族にやられた上に、縮んでしまったからな」

 むかつく話だけど、疑問が大きくなる。

「ちょ、その半神族のスヴァルトアルムヘイムに、なんでオオカミ族のあんたが肩入れしてんのよ?」

「スヴァルトアルムヘイムは、元々はオオカミ族のものだ。半神族が大オオカミ王たるフェンリル一世を姦計にかけるまではな」

「大オオカミ王?」

「ちょっと長い話になるけど、いいか?」

「お、おう、聞いてやろうじゃないのよ」

 フェンリルは、記憶を整理するように空を仰いでから語り始めた……。

 

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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