大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・037『再びの希望が丘』

2023-07-05 11:30:45 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

037『再びの希望が丘』   

 

 

 自習が二つも出て、委員長の高峰君と副委員長のたみ子が走り回って午後の授業を無しにした。

 

 ロコも今さらのクラブ見学なので、一人で帰る。

「あ、そうだ」

 戻り橋を渡っている最中に思い立つ。

 令和の希望ヶ丘に行ってみよう!

 玄関上がるのももどかしく、框にカバンを置くと制服のまま自転車に跨って希望が丘を目指す。

「ちょ、めぐり?」

 お祖母ちゃんの声がしたけど、お構いなし。

 

 三十分はかかるかと思ったけど、十七分で着いてしまう。

 

 こんなに近かったんだ。

 我が家のある寿町とは丘一つ隔てていて、せいぜい自転車しか乗らない子どもには生活圏外。

 丘のこっち側に公民館がある感じ。

 とりあえず、目の前の希望が丘ニュータウンにハンドルを向ける。

 

 あれ?

 

 めちゃくちゃ静か。

 こないだ公民館の屋上から見た賑わいがどこにもない。

 子どもたちのさんざめき、干したお布団をパンパン叩く音、チリ紙交換、宣伝飛行機の爆音とアナウンス、配達の車やバイクの音、犬がワンワン、ネコがニャンニャン……そういった音や気配がまるでない。

 といって、閉鎖されているわけじゃない。

 空室らしいのもポツポツ見えるけど、ベランダに洗濯物を干してある家もある。植え込みや花壇も手入れされている。

 街路樹や植え込みの木は二回りも大きくなってるけど、枝打ちもしてあるし、掃除もされている。

 でも、店舗棟のお店は、どこもシャッターが下りて、開いているのは米屋さんが一軒だけ。

 バス停は現役のようだけど、近寄って見ると、時刻表のパネルは中に雨が染み込んだのか黒やらピンク色のシミが浮き出して見づらい。じっくり見ると、どこの過疎地かっていうくらいに便数が少ない。

 

 チャリリリィ………………

 

 ペダルを空回りさせながら、ゆっくりと団地と団地の間を抜ける。

 

 あ…………

 

 抜けたところに学校の抜け殻があった。

 希望が丘第二小学校

 校舎は、まだしっかりしてるけど、グランドの半分は草で覆われている。イメージはさっきのカビの生えた時刻表。

 回り込むと、校舎の反対側に不自然な空き地。

 あ、そうか。

 空き地の正面に向かうとフェンスが途切れたところに門扉があって、門柱に『希望が丘高台幼稚園』の名板がかかっていた。

 幼稚園が先に閉鎖されたんだ。

 

 もうちょっと行ってみよう、この先も団地は続いている。

 チャリリリィ………………

 

 わぁ…………

 

 さっきと同じかと思ったら、そこから先は団地の建物ぐるみフェンスで囲まれている。

 間の道は通れるみたいなんだけど、草も生えてるし、人気も無いし、ちょっとおっかない。

 

 チャリリリィ………………

 

 ハンドルの向きを変えて公民館への坂。自転車を押して上ってみる。

 もう一度屋上に上がって、三日前に見た景色と比べてみたかった。

 

 ああ、ここも……

 

 石碑みたいな看板はそのままだったけど、建物は閉鎖されていた。

 なんか、VRの映像を見ているようで現実感が無い。

 駐車場に周る、直美さんのホンダN360を停めたところに立てばスイッチが入るような気がした。

 意外にも車が停まっていた。

 車種は分からないけど軽自動車。ピカピカだから今の車だと思う。

 確かめてみようかと思ったけど、駐車場の隅だし、そこまではしない。

 振り仰いで結婚式場があったあたりに見当をつける……分からない。

 

 視線を感じて振り向くと、四足歩行のおばあさん。

 

 いっしゅん妖怪かと思ったら、両手にストックのお婆さん。

 ペコリとお辞儀をすると笑顔が返ってきた。

「宮之森の生徒さん?」

「あ、はい」

 普通なら五時間目の時間なので、つい付け足してしまう。

「昼から自習だったので(^_^;)」

「授業入れ替えたのね」

「は、はい」

「昔は、よくやったわ。あ、わたしも宮之森の出身なのよ」

「え、先輩ですか!?」

「もう何十年も前だけどね……あなたのそれ、昔の制服よね?」

 あ……しまった。令和の宮之森は今年から制服が変わったんだ(;゚Д゚)。

「あ……新しいのは新一年からで、ニ三年は昔のままで……」

「……そうよね、人には事情があるわよね」

「あ、えと……」

「ちょっと、そこに掛けない?」

「あ、すみません!」

 ストックを突いてらっしゃるんだ、足がお悪いのに、気の利かない子だ、わたしは。

 植え込みの石垣に腰を下ろす。

「わたしね、ここで結婚式を挙げたの」

「え、そうなんですか!?」

「大台を過ぎたころから足が弱くなって、少しでも元気なうちに見ておこうと思って」

「歩いてこられたんですか!?」

「ホホ、まさか、ここまでは、あの車」

「あ、ああ、そうですよね!」

「そろそろ免許も返納しようかと思うんだけど、ブレーキとアクセル間違えるまえに」

「アハハハ……」

 返事に困って、必殺の愛想笑い。

「あなた、自転車なんでしょ、そこに置いてあった?」

「あ、はい」

「わたし、この公民館が出来た時に自転車で見に来て、結婚式場があるのに嬉しくなって。料金も安いし、将来式を挙げるるんならここだって。なんか、あの時のわたしが居るみたい。ちょうど、今のあなたみたいに、昼からの授業が無くなった午後にね見に来たの」

「え、そうなんだ!」

「だから、一瞬、昔のわたしがいるみたいで、ビックリしちゃった」

「アハハ、すみません驚かせて」

「旦那といっしょに見に来ようって言ってたんだけど、去年、先に逝っちゃって。人間、やっぱり思いついたが吉日よね」

 そうなんだ……ここに来るっていうことは同じだけど、背負ってるものは違うんだよね。

「シゲさん、ここですよ、わたしたちの人生が始まったのは……」

 そう言って、リュックから写真を取り出すお婆さん。

「腕のいい写真屋さんに撮っていただいて、わたしとシゲさんのいちばんの宝物なの」

 

 あ!?

 

 それは、三日前に直美さんが撮った写真だった。

 

 家に帰って、着替えようとして気が付いた。

 制服の胸に付いていた学年章は一年のエンジ色。

 お婆さんは、きっと留年した子だと思ったよ。

 

 

彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

 

 

 

 

 

 

 

 

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RE・かの世界この世界:148『ここはどこだ・1』

2023-07-05 06:55:51 | 時かける少女

RE・

148『ここはどこだ・1』タングリス 

 

 

 ほんの0.1秒見えた気がする。

 
 視界の端から端までグレートウォールのように広がるゴツゴツの樹皮、一枚一枚が神殿の絨毯ほどに大きな葉っぱ、それが幾重にも重なって陽の光をさえぎる圧迫感…………これが世界樹ユグドラシルか?

 思った瞬間に衝撃がきたんだ。

 

 数瞬か数時間かたって意識が戻る。

 

 おぼろに視界が戻ってくると、四号の車内は傾いでいる……いや、どこか傾いたところに着地したので、意識が四号の傾ぎと認識しているのだ。俊敏な意識と感覚の回復はトール元帥親衛隊の訓練の賜物か、姫をヴァルハラまでお連れしなければならない役目の自覚からなのか。いずれにしろ、他の乗員よりも早く意識が戻ったのは幸いだ。

 目視できる範囲で乗員を見渡す。

 ショックで気絶はしているが、重篤な怪我などはしていないようだ。とりあえず、すぐ横のユーリアを起こそうと手を掛けて、ハッとした。

 キューポラのハッチが開いているのだ。

 混乱した。

 車内には本来の乗員五人とヘルムからの仲間であるユーリア……全員そろっている。

 だのにハッチが開きっぱなし……締め忘れはあり得ない。軍に籍を置いてから配置の変わらぬ戦車兵だ。戦車の扱いは自分の体と変わらない。ハッチを閉め忘れるなど呼吸を忘れることに等しい。

 ならば、外敵によってこじ開けられたか!?

 

 思った瞬間、腰のワルサーを引き抜いた。

 

 すぐにハッチから首を出すようなヘマはしない。一秒とかからずにキューポラ全周のペリスコープを確認する。

 一番(正面)のペリスコープが真っ暗だ。なにかが視界を塞いでいる。

 車載機銃のカートリッジを掴んでハッチの外に放り出す。敵の注意がカートリッジに向いた瞬間、0.3秒でキューポラの外に飛び出しゲペックカステンの後ろに隠れるとともに両手でワルサーを構える。

 敵は砲塔の上に居るはずなのに動きが無い。

 音を立てずに砲塔の側面にまわって、下方から、そいつに銃を構える!

 

「なにやってんの~?」

 

 間延びした声に記憶が戻って来る。

 砲塔の上でぼんやり体育座りしているのは小柄な少女……こいつは、ラタトスクのナフタリン。

「な、なんだナフタリンか」

「アハハハハハ……」

「なにが可笑しい?」

「だって、タングリス、あたしが乗ってたの忘れてただろ」

「そんなことはない(^_^;)」

「でもよ、そんなに怖い顔して銃を構えてるんだもん。ついさっき、やってきたばかりのあたしを忘れたんだ。だろ?」

「そういうナフタリンは何をしているんだ?」

「どうやら、ヨトゥンヘイムに着いたような気がするんだけど、どうもおかしいんだ」

「ヨトゥンヘイムだと?」

 ヨトゥンヘイムと言えば巨人の国だ。ところが、目に映る家々は我々人間にとっての原寸大で、とても巨人族が使うようなものには見えないのだ。

「メッセンジャーで何度も来てるんだけど、街も家も見覚えたヨトゥンヘイムなんだけどな、なんだか小さすぎるんだ」

「これは、普通の人間の町だ。ミッドガルドではないのか?」

「ミッドガルドはありえない。だって、雲は流れてるし、鳥だって空を飛んでる」

 
 あ……時間が停まっていない!?

 
 人間界はヘルムの女神が力を失ったことで時間が停まっているはずだ……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
   ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
   ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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