大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・421『王室名誉衛士ボビー』

2023-07-12 11:08:13 | ノベル

・421

『王室名誉衛士ボビー』詩(ことは)   

 

 

 宮殿で暮らしはじめて、ほとんど時計を見なくなった。

 

 宮殿には女王陛下を頂点として、王女のリッチ(頼子さん)、ガードのソフィー、それに、それぞれの部署や係りを担当する人たちが、分単位、秒単位の正確さで生活したり働いたりしている。

 5時半には、宮廷庭師のチャーリーさんが猫車(一輪車)を押しながら庭園の花や草木を見回る。

 6時には制服姿の衛士、これは当番制で日によって人は違うんだけど、どの衛士さんも同じ時間、同じリズムで同じ経路を通って巡回していく。窓を少し開けて耳を澄ますと、厨房や宮殿のあちこちで朝の準備をする声や物音がかすかに聞こえてきて、いとおかし。

 7時には、宮殿の親時計が時報の鐘を鳴らして本格的に宮殿の一日が始まる。

 そして、そこから始まる一日は、日本の鉄道並みの正確さで進行していって、そう言う正確さの中に身を置いていると、本当に時計を見なくなる。

 実家もお寺だったので、宮殿ほどでは無いけどルーチンがあって、そういうルーチンの中で暮らしているのは心地いい。

 

 サクサクサク……サクサクサク……

 

 音で陛下と秘書のイザベラさんだと分かるんだけど、時間がルーチンじゃないし、ちょっと急ぎ足。

『なに急いでるんだ、マリアは?』

 ナンシーが陛下を呼び捨てにしながら窓に張り付く。

『ああ、詰所の犬よ……たった今、くたばったみたいよ……』

 バンは興味なさそうに、板書をノートに写すふりを続ける。

『バン、おまえ仮にもバンシーだろ、チラ見ぐらいして涙の一つも流してあげたら』

『バンシーは人専門なの、犬がくたばるのには関わらないわ。それに、今は授業中よ』

 二人とも聖真理愛の制服姿で、日本の女子高生ごっこをするのが気に入ってる。

「詰所に犬がいるの?」

『居るよ、ボビー。躾がいいからむやみに吠えないし、決められた場所以外ではウンコもしないし立ち入らないし』

『十五年前にね、メグって女衛士が拾ってきて、ズーズーしく居ついたのよ』

「それに陛下が?」

『マリアは、そういう子なんだ。バン、おまえも行っていっしょに泣いてやりなよ』

『ナンシーこそ、愛情の妖精でしょ、あんたこそ行ってあげなさいよ』

「二人で行ってあげたら?」

『わたしたちに指図!?』

『なにを考えているのかしら、この東洋人は!?』

「指図なんかじゃないわよ。わたしの部屋に居るんだったら、優しい妖精でいてちょうだい!」

『え、追い出すつもり!?』

『鬼よ、この東洋人!』

「なんだってぇ……」

『わ、わかったわかった(;'∀')』

『行けばいいんでしょ行けば(;'∀')』

 窓を開けると二人は白いオーブになって詰所の方に飛んで行った。

 足元を見ると、ちょうどリッチも詰所の方に向かうところ。

 コンコン

 仮にも王女殿下、高いところから声をかけるのは憚られて、ちょっと強めにガラスをたたく。

「あ、コットン!」

 気づいてくれて、わたしも電動車いすをトップスピードにして詰所に駆けつける。

 

 ソフィーも駆けつけていて、ボビーは特製のベッドに寝かされて息を引き取っていた。

 枕もとにはバンとナンシーも来ていて、さっきの憎まれ口はどこへやら、肩を震わせて泣いていた。

 魔法使いのソフィーには分かってるはずだけど、気づかないふりをしてくれている。

 

 ボビーは正式に飼われていた犬ではないので、法律的な処遇では衛生局が引き取ってゴミとあまり変わらない扱いで火葬にされるんだけど、陛下のお言葉で王室墓地に葬られる。

 その墓誌には『王室名誉衛士ボビー』と記される。

 

 わたしは、チェストの上に『南無阿弥陀仏』のお念仏を置いてお線香をあげた。

 

『ちょっと!』『なによ、この悪魔の呪文は!』

 

 バンとナンシーに説明するのは、ちょっと骨が折れたけどね……。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 
  • 声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
  • さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
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RE・かの世界この世界:155『フェンリル二世の事情』

2023-07-12 06:40:22 | 時かける少女

RE・

155『フェンリル二世の事情』ポチ 

 

 

 トンネル小僧……フェンリル二世は静かに語った。

「世界樹ユグドラシルには、もともと世界の区別なんかなかった。九つの種族が、それぞれの習慣や個性をもって生きていて、人も聖霊もみんな自由に暮らしていた。おおざっぱに居住地は決まっていたけど、旅行や商売、聖地巡礼なんかでの往来はあった。まあ、旅行は見識を広めるために学者とか腕を磨く職人とかで、そういう人口は5%ほどだし、聖地巡礼は一生に一回、そんなに多い交通量じゃなかった。オオカミ族は放浪の種族で、九つの世界を行き来して自由に暮らしていた。他の部族たちが、それぞれに国を作っても『ま、そういう暮らし方もあるんだろう』くらいに思って、いちばん多くのオオカミ族が暮らしていたスヴァルトアルムヘイムに半神族が国を作っても、我々が自由に暮らせていれば好きにさせればいいと思っていた。ラタトスクたちは『オオカミ族も国を作った方がいい。これからは国を持たない者はのけ者にされていくよ』と忠告もしてくれた」

「ラタトスク……ああ、ナフタリンたちだね」

「でも、気が付いた時には遅くて、オオカミ族はスヴァルトアルムヘイムに小さな自治区での居住しか認められなくなった。父のフェンリル一世は神々に戒めを掛けられ、不遇なままに一生を終えた。このままでは、オオカミ族は絶滅すると気が気ではなかったんだ……そこに起こったのがヨトゥンヘイムの巨人どもの進撃だ。遠くまで進撃して帰れなくなった巨人たちの隙を狙って半神たちがヨトゥンヘイムを侵略し始めた。ラムノ、ノシホ、ノヤの三人の半神王はヨトゥンヘイムの経営のためにスヴァルトアルムヘイムを留守にすることが多くなって、多くの半神たちもヨトゥンヘイムに移り始めた。それで、ヨトゥンヘイムを偵察して、半神たちが当分帰ってこないようなら、スヴァルトアルムヘイムを僕たちの手に取り戻そうと思ったんだよ」

「ノヤってのは死んだよ」

「え……ノヤが死んだ!? ひょっとして、君たちがやっつけたの!?」

「ちがうちがう、事故だったんだ。ユグドラシルの近くまで来たら乗ってた戦車が吹き飛ばされて、落ちたのがノヤっていうのが居た神殿だったんだよ」

「え、たまたま落ちたのがノヤの神殿だったって言うのか!?」

「う、うん。最初はとんでもないことになったと驚いたんだけど、小さくなって若返った巨人族たちが喜んでくれて」

「そうか……それは、やっぱり君たちには力と神のご加護があるんだ。神殿と言うのはセキュリティー魔法がかかっていて、落下物なんかは避けられる仕組みになってるからな」

「そ、そうなんだ」

「キミたちには主神オーディンのご加護があるのかもしれないよ」

 ご加護どころか、オーディンの姫が乗ってるんだけど、話がとんでしまいそうなので、スルーする。こっちにも聞きたいことがあるしね。

「ヨトゥンヘイムでは、死んだノヤ以外に半神は見かけなかったんだけど、なんか訳あり?」

「辺境の征伐に出ているやつが多いんだと思う。むろん、街にも居たんだろうけど、君たちが来たんで、隠れているんだよ」

「そうなんだ……とりあえず、一度カテンの森に戻るよ。何をするにしても、あたし一人でなんにもできないし、みんなも心配するだろうから」

「ああ、それがいい。時間がたってるから穴が小さくなってるかもしれない」

「それって、ヨトゥンヘイムが縮んでることと関係あるの?」

「説明はあとだ、とにかく穴に!」

 穴の入り口に戻ると、小さくなっているような気がした。

「縮み始めてる、戻るのは危険だよ」

「どうしよう……」

「メッセンジャーを貸してあげるよ」

「メッセンジャー?」

「うん、ラタトスクたちにも気づかれずに通信できる、魔法石の小さい奴……」

 そう言うと、フェンリル二世は無造作に小石を取り出した。

「石ころ?」

「祈るとメッセンジャーになる。さあ、手に取って想いを籠めるんだ」

「う、うん」

 小石に想いを込めて、穴の中に、そろりと放り込んだ……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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