大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

滅鬼の刃・30『栞と来客』

2023-07-21 16:20:36 | エッセー

 エッセーラノベ    

30『栞と来客』   

 

 

『お祖父ちゃん、お友だちがいらっしゃったわよ!』

 

 図書館に行くと言っていた栞が階段の下から呼ばわります。

 ドアホンの調子が悪いので、来客は玄関の戸を叩いています。

「はい、どちらさまでしょうか?」

「○○と申します、大橋さんは御在宅でしょうか?」

「あ、祖父ですね、少々お待ちください」

 というやり取りがあって、最初の『お祖父ちゃん、お友だちがいらっしゃったわよ!』に繋がります。

 

 栞は、こういうところがあります。

 来客があると、その声の調子でおおよそのところを察してしまいます。

 セールスや勧誘などは、いちいちわたしに次げずに対応し、たいていは撃退してしまいます。

 わたしへの来客も、勘なのか、どこかで憶えたのか「町会の○○さん」「公〇党の▢▢さん」「共〇党▢▢さん」「同窓の○○さん」「お友だちの○○さん」と告げる、あるいは呼ばわります。

 小さな家なので、たいてい栞の声も来客に聞こえてしまいます。

 単に「お客さ~ん」とか「誰か来てるよ」ではそっけないと思っているようです。

 来客も「お友だちの~さん」などと呼ばれると気分が良いようで、栞の評判は上々です。

 一度「お友だちの○○さんよ」と言って失敗したことがあります。

 やってきたのは、友人○○の息子でした。

 前の月に○○は亡くなっていて、葬儀の後、遺品の整理やら連絡を手伝ったお礼に息子さんがお礼に来たのを間違えたんですね。声がよく似ていたので、つい間違えたのです。

 栞は恐縮していましたが、息子の方は「ひょっとしたら、親父も付いてきたのかもしれません」と床しく思ってくれました。

 

 さて、今日の来客は武者走といいます。

 

 お気づきになったかもしれませんが、わたしのサブペンネームが武者走で、こいつの苗字をそのまま使わせてもらっています。武者走はずっと高校の先生をやっていたのですが、再任用も五年前に終わって、暇を持て余している不良老人です。

「もう古希も超えてしもたし、ちょっと現役時代のことを振り返っとこと思てなあ。自分で書いてもええねんけど、お前以上に根気も文才もあれへんし、ブログに書いてアクセス少なかったら凹むしなあ。お前やったら、しょっちゅう書いてて慣れてるやろ。気の向いた時でええからさ、まあ、散歩のついでに寄って語る感じでさ、文章にしてくれへんか」

「その気の向いた時っていうのは、俺のか? お前のか?」

「あはは、まあお互さまや(^_^;)」

 

 そこへ、栞がお茶を持ってやってきました。

 

「なんだ、図書館行くんじゃないのか?」

「ふふ、こっちの方が面白そうだし。お祖父ちゃん、引き受けたら?」

「簡単に言うなよ」

「お祖父ちゃんもネタ切れで、ここのところ停まってたじゃない」

「そうか、ひんなら話は決まりや!」

「おいおい」

「おいおい書いてくれるんだそうです」

「そうか、話は決まった。そうや、記念に一杯やろうや。栞ちゃん、お代は俺が持つからデリバリーでなにか頼んでくれへんか」

「あ、やったー! 晩御飯の心配無くなったぁ(^▽^)/」

 

 ピザと寿司と缶ビールで盛り上がり、肝心の記事のネタは次回からと言うことで、迎えに来た息子に介抱されながら悪友は帰っていきました。

 はてさて、どうなることやら。

 

☆彡 主な登場人物

  •  わたし        武者走走九郎 Or 大橋むつお
  •  栞          わたしの孫娘 
  •   武者走                   腐れ縁の友人

 

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・041『テスト休みと終業式と』

2023-07-21 10:02:07 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

041『テスト休みと終業式と』   

 

 

 テスト休みというらしい。

 

「え、うそっ」

 

 小さく叫んでしまった。

 期末の最終テストが終わったホームルーム、藤田先生が「明日から休みだけど……」と切り出した。

 で、あとの説明も聞かずに喜んでしまった。

「この間、先生たちは採点をしたり成績を付けたり会議をしたりする。出来の悪い奴は終業式までに呼び出して指導することもあるから、バイトなんかしてないで家に居ろ」

 付け加えた但し書きは気いちゃいない。

 とにかく、このクソ暑い中、冷房も無い(扇風機すら無い!)学校に来なくていいというだけでラッキー!

 

 テスト休みは四日間。うち二日は冷房の利いた希望が丘の結婚式場で撮影助手のアルバイト。

 

 そして、七月二十日の今日は終業式。

 家と結婚式場の冷房に慣れてしまって、ちょっとゲンナリの予感。

 それで、百均で買った携帯扇風機を持っていく。

 工夫して、日傘の柄にマジックテープで留める。

 これだと、駅のホームとかで畳んでても使える。

 

 パシュ

 

 改札を出て傘を開く。扇風機を顔の位置につけ直して、スイッチオン!

 うん、ちょっとマシ。

 信号待ちで、一瞬お巡りさんの視線を感じる。

 え、なんかした?

 お巡りさんは一瞬だったけど、信号待ちの人たちがチラチラ見てる。

 あ……ああ、JKの日傘は、ちょっと珍しいんだ(^_^;)。

 

「え、なに、そのカワイイの!?」

 

 机に突っ伏していると真知子の声。

「子どものおもちゃ? でも、アイデアねえ!」

「あ……」

「ああ、ピンポイントでも、けっこう涼しい!」

「あ、こっちもこっちも」

 お馴染みが寄って来て、ちょっと取り合い。

「このサイズなら単三電池なんでしょうが、どこから入れるんでしょうねえ?」

「あ、分解しないでね(^_^;)、ちなみに、充電式だから」

「おお!」

 ロコが大げさに感動する。

「この軽さで充電式! メーカーは?」

「あ、たぶん中国」

「中国?」

 え、なんで不思議? 十円男もこっち向くし。

「充電はどこから……」

「あ、そこ、USBで」

「「「USB?」」」

「え、ああ、ゲーム機とかパソコンとか……」

 言いながらしまったと思った。

 この時代、ゲーム機もパソコンも無い。きっとUSBなんかもないんだ。

「さすがは人民中国、毛沢東語録だけじゃなかったんだ!」

 変な感動をする十円男、ちょっとヤバイ。

 

『全校集会、全校集会、校庭で終業式をやるので、全校生徒は校庭に集合しなさい』

 

 校内放送がかかって、扇風機騒動は中断。

 やれやれ……。

 

 でも、ピーカンの校庭で終業式とかやる!?

 ついこないだは光化学スモッグとかで外に出るなって言ってなかったぁ?

『一年生は、ようやく学校生活にも慣れ、二年生は中だるみ。三年生は、いよいよ受験が射程距離に入って臨戦態勢です』

 のっけから校長はカマシてきた。

『世の中では四当五落とか言いますが、四時間睡眠では身が持ちません。昼寝も含めて六時間は寝るようにしてください。四時間五時間の睡眠では、脳が十分には覚醒しません。覚醒しきっていない状態での勉強は苦痛なものです。勉強が苦痛だと刷り込まれてしいまうと、その反動で大学に進学してから勉強も研究もしないダ学生になります。ダ学生のダとは駄目の駄、堕落の堕の云いであります。有意義な夏休みを心がけて……』

 もっともな話なんだけど、みんなあまり聞いてない。

 騒がしいというんじゃないいんだけど、選挙期間中、横断歩道で青信号待ってる間に聞きたくもない選挙演説聞かされてる感じ。

 次に朝礼台に立ったのは、生活指導の若杉先生。

『先日、駅向こうの雀荘から「授業時間中にマージャンをやってる生徒がいる」と通報があった。出かけると、本校生三人と他校生一人で卓を囲んでいたので指導した』

 三年生から、微妙に不穏な騒めき。

『未成年の雀荘出入りは、県の条例でも禁止されている。金銭を賭けていることは確認できなかったが、賭けていたとしたら賭博行為にあたり、完全に違法で……』

 次に保健室の先生の注意。

『中には万博に行く人もあるでしょうが、万博の会場は、殺人的な混雑です。六月に入ってから日射病で緊急搬送される人が大勢出ています。万博に限りませんが、夏休み中に出かける人は十分に気を付けてください。水分補給に留意するとともに、日差しを避けるように。帽子、日傘などが有効です』

 日傘のところで、クスクスと笑いが入る。

 やっぱ、この時代、JKの日傘はギャグに近いみたい(^_^;)。

 

「ねえ、万博の件だけど」

 

 教室に戻って、藤田先生が来るまでにお仲間で相談。

 話して見ると、みんな旅費を稼ぐのにバイトを入れている。

「まあ、旅費を稼ぐのに三週間以上はかかるから、出発はお盆過ぎだね」

 たみ子が副委員長らしく提案してくれて大筋が決まる。

「宿は、大阪に親類がお寺やってるから交渉してみる」

 佳奈子がいちばん気がかりな宿泊問題に解決策を言ってくれて、ほぼ解決した。

 

 一学期最後のホームルームで成績表をもらう。

 数学が平均点を下回ってたけど、まあまあの点数。

 めでたく一学期が終わった(^▽^)/。

 

彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
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RE・かの世界この世界:164『瀕死のトール元帥』

2023-07-21 06:36:58 | 時かける少女

RE・

164『瀕死のトール元帥』テル 

 

 

 

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!

 
 少年巨人族のアドバイスで野営のテントを張り終えたとき、森の中央あたりでとんでもない音がした。

「え、なに?」

 ペグを打つ手が止まって、目を向けた時にはヒルデもタングリスも駆け出している。

「ケイト、行くぞ!」

「うん!」

「わたし」

「ユーリアは少年と残れ! ロキもだ!」

 ペグもハンマーも放り出し、ケイトと並んでカテンの森を奥に向かって走る。

 ヒルデたちの姿は見えなくなっているけど、森の真ん中と思われるあたりから煙が立ち上っているので、それを目当てに奥を目指す。

 奥に近づくにしたがって、鉄と油と肉の焼ける臭いが濃くなって息苦しく、目もシカシカしてくる。

 

 うわあ……………………(;'∀')

 

 言葉にならなかった。

 学校の校庭ほどの範囲に木々がなぎ倒され、その木々を押しつぶしたり下敷きになったりして数十両の戦車が擱座している。煙や炎を噴き出しているものや、これでも戦車かと目を疑うようなひしゃげ方をしたものばかりで、まともなものは一両もないありさまだ。

 そして、その戦車のことごとくがトール元帥の部隊の所属を示すミョルニルハンマーのマークがついている。火や煙を噴いている車両からは肉の焼ける臭いがして、戦車の周囲には半ば焦げた戦車兵たちの骸が転がっている。

「あ、あそこに!」

 タングリスの声がして、わたしたちも、そこを目指した。

 砲塔が吹き飛んだ五号戦車の横にトール元帥が横たわっている。

「元帥、しっかりしてください!」

 タングリスが駆け寄ってトール元帥を抱き起す。ヒルデは比較的無事な車両からAEDを取り出して、元帥の軍服の胸をはだけようとする。

「姫、そのようなものでは、もう間に合いません……」

「元帥!!」

 ヒルデの呼びかけに、元帥はようやく目を開けた。

「わたしの手にも負えないところまで来ております、なんとかカテンの森まで撤退してきましたが……ここまでです……姫たちはお逃げなされ……別の次元に……異世界に……」

「じい、死ぬな!」

「間もなく、敵の追手が……」

「元帥!」

 ちょっと違和感……トール元帥が普通の人間の大きさになっているのだ。

 そうか、デミゴッドの呪いめいたものが元帥にまで影響しているんだ。

 若返って消えてしまわないのは、トール元帥の神性によるものなのかもしれない。

「元帥、タングニョーストは?」

「激戦の中で行方がしれません……おそらくは、退路を確保するために……」

「元帥、アルティメイトリカバリーを」

「タングリス(‘꒪д꒪’)!」

 ヒルデが目をむき、元帥が息をのんだ。

「このために、自分は存在しているのです」

 そう言うと、タングリスは軍服を脱ぎ始めた。

「タン……グリ……」

 数秒で美しい裸身を晒したタングリスはトール元帥の上に覆いかぶさっていく。

「お、おまえらは見るな!」

 わたしたちの存在に気付いたヒルデが体を張って隠そうとする。

「あ、あわわわ……((;゚Д゚))」

「すまない!」

 ショックを受けているケイトを引きずって焦げた木の陰に隠れる。

 
 ア! アッ! アア……アアアア……!

 
 苦痛とも喜悦ともとれるタングリスの声が森の中に木霊する。

 この声を聞いてはいけない! 聞かせてはいけない!

 テルの頭を抱えるようにして木の陰に蹲った。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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