大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・65『再びの秀長さん』

2023-07-19 10:54:56 | 小説3

くノ一その一今のうち

65『再びの秀長さん』そのいち 

 

 

 豊国神社の秀長さんに挨拶してから本丸に向かった。

 

 秀長さんは詫びてばかりだった。

『そうか、空堀はフェイクでしたか……いやはや、はんぱなことを教えてしまって、かえって木下に利用されてしまいましたね、申しわけない』

「いえ、お守りのお蔭で助かりました」

『少しでも役に立ったのなら嬉しいです……確かに天守の北側に抜け穴を作るという話はありました』

「あったんですね?」

『北側には、元々、大川の水を引き込んで舟入にしたところがあったんです。建築資材やら城内で入用なものを運ぶには便利です。大阪湾から直接船で運べますからね。でも、それは城の内側に作られていて、外側への連絡はありません』

「船で侵入されることは想定していなかったんですか?」

『同様な舟入は石山本願寺のころからあります。総見院様も、ここを何度かお攻めになりましたが、大手口の千貫櫓同様、最後まで陥せませんでした』

「千貫櫓?」

『はい、石山合戦で攻めあぐんだ総見院様が「あの櫓を陥した者には千貫文の褒美をやるぞ」とおっしゃって付いた名前です。今の貨幣価値で一億円以上でしょうか。櫓の名前は兄が引き継ぎ、徳川も使って今日に至っています。あ、そうそう、舟入ですね。その舟入まで、兄は秘密の通路を作っていて、一部は穴になっています』

「それが抜け穴なんですね!?」

『寧々さんは「禿鼠のヌケヌケ穴」と呼んでましたがね』

「ヌケヌケ穴?」

『アハハ、兄は通路を通ってヌケヌケと女の元に通っていたんです。抜け穴を使うことで寧々さんには内緒というサインにしたんですねえ』

「え、あ、どういうことでしょ? 関白太政大臣なんだから、なんでもできたでしょうに?」

『ポーズですよ。天下の秀吉でも女房の寧々さんには頭が上がらず、抜け道を使って女通いをしているという。ある時などは、わざと情報を漏らしましてね、会議の後、家康殿がここを通るように仕向けておいて、わざと見つけさせたんです』

「え、なぜなんですか?」

『狼狽えてみせるんですよ。わたしも前田殿もいっしょだったんですが、小袖を尻っぱしょりにして頬かむりの兄は傑作でした。「い、いや、これは違うんじゃ、大川でウナギが取れるというんでな、夜に取れるんじゃ。のう小一郎、尾張のの中村でも、よう尻っぱしょりで取ったろうがあ(^_^;)」って、顔を赤くして。「兄者、ウナギなら、そのユルフンの隙間から顔を覗かせておるぞ」と指さしてやると、みんなで大爆笑になりました』

「プ( ´艸`)」

『いちおう「寧々にはナイショ(≧〇≦)!」と言うんですが、噂は、あっという間に広まります。これで、寧々さんも兄者を責めにくくなりますし、兄の人気も上がります。それに、舟入の守りは盤石だという噂にもなります。千貫櫓と同じです。名前や噂で「あそこは責めにくい」と評判が広まります』

「え、かえって抜け道を教えることにならないですか?」

『後日、ほんとうに家康殿を誘って遊女屋に行っています。家康殿自身、舟入の守りを見て、攻略の難しさを自覚するという寸法です。そして、密かに南への抜け穴も指示し、これは秘密にします。天下は南の方こそ本物だと思います。まあ、そういう虚々実々の話でみんなを煙に巻いて楽しんでいたんです。あ、そうそう、抜け穴……いや、埋蔵金の隠し場所ですね……』

 

 気が付いたら日が傾いている。

 

 秀長さんは、昨日の失敗で、少しナーバスになりかけていたのを解してくれた。昨日のしくじりを引きずっていたら、きっとうまくいかなかっただろう。

 わたしは閉館間近の天守閣に上ってあたりを付けた。

 最後に秀長さんは、スマホのマップを見ながら、いくつかのポイントを示してくれていた。

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
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RE・かの世界この世界:162『街はずれの宿』

2023-07-19 06:25:51 | 時かける少女

RE・

162『街はずれの宿』ポチ 

 

 

 

 あれ…………?

 そう言ったきり、ダグ(フェン)は車を止めてしまった。

 

「どうかしたの?」

「街の様子が変わってしまってるんだ……大きくなってるし……」

 わたしは初めてだから、大きいもなにも分からないんだけど、ダグの表情から、うかつにデミゴッドブルクには踏み込めないということは分かった。

「さっきの車で、てっきりデミゴッドブルクは縮んでいると思ったんだが……」

「どういうこと?」

「あの婆さんは命のあるうちに葬られようとしていた。半神族は肉体が滅ぶと神になる。だから肉体には未練が無いんだ……だから、肉体のための街や世界にも未練がないんだと思っていたんだが……それが、このありさまだ。うかつには踏み込めない」

 市街地からは一キロほど手前だけども、建設中の機械や工事車両の音が聞こえてくる。

「今まで通って来たところは、あんまり人気(ひとけ)は無かったでしょ」

「ああ、やつらは、さっさと肉体を捨てて、ヨトゥンヘイムを征服するんだとばかり思ってたからな……どこかで宿をとって考えよう」

 

 しかし、なかなか宿はとれなかった。どこも、工事関係者が泊っていて空き部屋が無かったのだ。

 

 街はずれの四軒目で泊まることができた。

 築五十年ほどの二階建てのホテル。豪華でもきれいでもないけど、清潔で品のいいコロニアル風。街はずれでクラシックなところが敬遠されるんだろうか。

「先日までは工事関係者で一杯でしたが、ようやく落ち着きました。ごゆっくりお休みください」

 フロントの、たぶんオーナーのおじさんが、のんびりと言う。

「こちらへは、お仕事ですか?」

 部屋のキーを渡しながらオバサンが続ける。

「ああ、デミゴッドブルクのルポをね。ぼくらは、夫婦そろってルポライターなんだ」

「それはそれは」

「静かだということでは、スヴァルトアルムヘイム随一ですので、記事をお書きになるのにはうってつけです」

「よかったわね、ダグ」

「さ、お部屋へご案内いたします」

「どうも」

「ところで、オーナーさんたちは半神族じゃありませんね……」

 

「「…………!」」

 

 ダグの一言でオーナー夫妻が固まってしまった……。

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:14 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 フェンリル二世     狼族の王子

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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