大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・169『ピタゴラスゴールデン街・3』

2023-07-10 14:03:22 | 小説4

・169

『ピタゴラスゴールデン街・3』緒方未来 

 

 

「まぁた、おまえらかぁ」

 

 警務の班長は、そう言うと二人の部下に酔っ払いを連行させ「先生も大変だねえ、でもまあ、一応……」と簡単な事情聴取をして行ってしまった。

「さっきは、ありがとうね」

 路地から出てきたそいつに一応の礼は言っておく。

「分かってるんだな。あのキックが入ったら事情聴取で済まなかったぜ」

「うん、下手したら半身まひ、古い型式だから義体の修繕費高そうだし」

「診療所の給料なら三か月分くらいはとんでしまうだろうね」

「ああ、知ってんだぁ」

「先週見かけた時は救急の制服だったけど」

『ねえ、中に入んなよ、今日は二人とも驕りにしとくからー』

「ラッキー!」「それはありがたい!」

 女将さんの声に同時に反応して店の奥に収まる。むろんスリッパに履き替えて。

 

「いやあ、ご活躍!」「たいしたもんだよ!」「二人とも!」「いっぱい奢らせてくれ!」「スッとしたぜ!」

 

 席に着くまで酔っ払いたちが喝采してくれるのを「やあやあ」「どもども」「またねえ」「ありがと」といなしながら……「プライベートの奥使っていいよ」と女将さんの言葉に「こっちでいいよ」と、そいつが言うので奥にあるというだけの四人掛けに収まる。

 

「プライベートの奥も時々使わせてもらってるのよ」

「ああ、でも、俺は新参者だし」

「見かけによらず硬いのね。でも、嫌いじゃないわよ、そういうの」

「ただの不器用者だよ、先生」

「じゃあ、不器用者の器用な助太刀に感謝して、ほらほら、グラス持って!」

「あ、ああ(^_^;)」

 かんぱーーーい!!

 店中の酔っ払いが唱和してくれて、気分のいい乾杯。

「みんないい人みたいだね」

「うん、みんな穴掘りだから、見てくれはいかついけど、ちゃんとスリッパに履き替えてるしね。酒の勢いでウザがらみしてくるのも居ないし」

「うん、いいね、こういうのは」

「ん……そのニュアンスは、以前同じようなところに居た?」

「ああ、地球の鉱山に居た」

「漢明? 骨柄は大陸系とお見受けしたんだけど」

「中国だよ」

 中国……という人間は少ない。けど、初対面で深入りしていい話題ではない。

「周温来」

「周恩来?」

「そんな歴史的人物じゃないさ、字はこう書く」

 ハンベをモニターにしてきれいな漢字で書いてくれる。

「……どこかで聞いたような……見たような」

「俺も、先生のことは見たような気がする……」

「おや、二人ともお安くないねえ。はい、どうぞ」

「え、こんないいお酒!」

「ヤマザキの百年物じゃないか、女将さん!」

「ここ一番てとき用にね、まだ何本か残ってるから遠慮なく」

「すみません!」「いただきます!」

 

 あらためて乾杯して、思い出した。

 

「あなた、西之島の周温来!?」

「あ、声大きいよ(^_^;)」

「あ、ごめん。だよね、西之島の周温来って言えば氷室、マヌエリトと並ぶエライさん!」

「今は、ただの流れの坑夫さ」

「いや、でもさ……」

「先生こそ、姉妹とか居ないの?」

「ううん、一人っ子だけど」

「ああ……他人の空似かなあ」

「エヘヘ、周さんのいい人だったの?」

「先生のいい人になら、なってもいいけど」

「プ……もう、噴いちゃうじゃないの!」

「いやあ、申しわけない。島では、いつもこんな感じだったんで」

「お手柔らかにお願いしますよ、まだ、大学出て間が無いんだからあ」

「え、この道十年選手ってオーラがするんだけど」

「そこまで歳じゃありません。まあ、火星の出身なんで、地球の女の人よりはワイルドかもしれませんけど」

 昨日もパスカルの荒くれどもの治療をやって死体検案書まで書いたんだけど、それは言わない。

「よし、じゃあ、俺も挨拶代わりに中華のワイルドやっちゃおうかなあ!」

「え、なに!?」

 立ち上がっただけで120%って感じの周さんに、声がひっくり返ってしまう。

「女将さん、ちょっと舞わせてもらうよ!」

「え、なにが始まんの?」

 ドワアア~~~~~~~ン!!

 すごい銅鑼の音がしたかと思うと、京劇のようなサウンドが店内に満ちた。周さんが自分のハンベを店のコンピューターに同期させて、ワンマンショーのステージを作ってしまう。

「アチョーー!」

 大げさな身振りでハンベをタッチすると、周さんは鐘馗様のような姿になった!

 

 

☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地

 

 

 

 

 

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RE・かの世界この世界:153『カテンの森のトンネル小僧』

2023-07-10 05:57:43 | 時かける少女

RE・

153『カテンの森のトンネル小僧』ポチ 

 

 

 

 横に伸びる穴をトンネルというんだ。

 当たり前のことを思い出したのは二分くらいガスマスクを追いかけた時よ。

 トンネルだとは思えないくらいに地底の穴はグニャグニャなのよ。でも、トンネルと推測するのは間違っていないと思う。

 だって、いっこうに枝分かれというか分岐が無い一本道だから。

 これは、落ち着いてアナライズすれば簡単に分かると思ったよ。

 

 地べたに座り込んで、両方の壁に手を伸ばす。

 グヌヌヌ……体がちっこいので、両方いっぺんにタッチすることができない。

 
 エイ! エイ! エイ!

 
 仕方なく、反復横跳びみたく壁をタッチしながら前に飛ぶ。

 グニャグニャになっている訳が分かった。ここはカテンの森の地下なので、カテンの巨木の根っこが深くまではびこっているんだ。

 トンネルは根っこを避けて掘られているのでグニャグニャなんだ。もし、横穴とかを掘っていたらラビリンスになって、もっと迷ったことだろう。

 地中だから捜索には時間がかかるけど、反復横飛び1000回で分かった。やっぱり分岐も横穴も無い。

 トンネルは、カテンの森の地下一面に及んでいるみたい。みたいなんだけど、出口は意外に近い気がする。

 

 一メートルほど行ったところに縦に下る穴がある。

 

 そうか、横ばかり気にしていたから気づかなかったんだ。

 そこを下りて行った形跡がある。そうなんだ、横穴ばかり気にしていたけど、縦穴というのもあるんだ。ちなみに、そのまま足跡をたどっていくと、ぜんたいの長さは100キロを超えてしまい、大変なロスをするところだったよ。

 縦穴の底は青く光っていた。海かなあ? とりあえず飛び込んでみる。

 
 エイ!

 
 勢いをつけてダイブ、すぐに光が見えて、突き抜けたとたんに引力が逆さまになって、三メートルほど飛んで逆に落ちる。そのまま落ちては、また穴の中に落ちてしまうので、穴の縁を蹴って、ドサリと着地。

 一面の草が生えていて痛くはなかった。

 あ、こいつ!

 目の前に、探検隊みたいなコスで、脇にガスマスクを転がして寝ている男の子がいる。

「おい、起きろ!」

 馬乗りになって、頬っぺたをペシペシ叩いてやると「ギョエ!」っとカエルみたいな悲鳴を上げて目覚めやがった。

「あんたでしょ、デバガメみたくエスケープハッチから覗いていたのは!?」

「な、なんでえ( ゚Д゚)!?」

 目をまん丸にして驚いた顔は意外に可愛い……んなことはどーでもいい!

 はずみで、緩くかぶっていたしょうちゃん帽がポロリと脱げて、立派な耳がピョコンと現れた。

 オオカミサンの耳だ! 

 それが、ひどく似合っていて、自分でも目尻が下がるのが分かった。下がった目尻なんて観られたくないから、両手の人差し指で目尻を上げて起った時のヒルデみたいに問い詰めた!

「お、おまえ、正直に言え! 何者なんだあ!」

「な、なんで、来れたんだ!? あんなグニャグニャのラビリンスに掘ったのに!?」

「ああいうのはラビリンスとは言わん!」

 トンネルの単純さを指摘してやると、ガックリと肩を落とす。

「とりあえず、お腹の上から降りてくれないかなあ、ちょっと苦しいよ」

「あ、あ、ごめん」

 慌てて降りて、びっくりした。

 
 あたしってば、普通の大きさになっていたよ!

 

☆ ステータス

 HP:13500 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
 装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
 憶えたオーバードライブ:シルバーケアル(ケイト) シルバースプラッシュ(テル)
 スプラッシュテール(ブリュンヒルデ) 空蝉(ポチ)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
   ペギー         荒れ地の万屋 
 ユーリア        ヘルム島の少女
   ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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