大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・52『兄妹ってバラシたら殺す!』

2022-09-02 06:24:32 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

52『兄妹ってバラシたら殺す!』オメガ 




 俺と小菊がラブホに行ったという噂が流れている。

 行きと帰りは服を替えたみたいで、二人とも大き目の紙袋をぶら下げていた。


 噂というのは間接的に聞こえてくるものなので根絶が難しい。

 それに、二人でラブホに行って、紙袋をぶら下げて出てきたというのは事実なんだからな!

 昨日の花見で、寿屋さんに幔幕を借りに行ったのは知ってるよな? 
大きな紙袋というのは、借りた幔幕が入っていたんだ。

 寿屋さんは、うち同様に置屋をやっていたんだけど、昭和三十年ごろに廃業してラブホに転身したんだ。

 元々が花街で何代も商売をしてきているので、店の雰囲気はとってもいい。

 ケバケバしさが無くって、一見料理屋さんのような落ち着いた雰囲気がある。

 それに、俺と小菊にとってはご近所の寿屋さんだ。子供のころから出入りしていて抵抗はまるで無い。

 でも、地元の歌舞伎町以外から通っている学校関係者には、そうではない。このあたりじゃ珍しい駅裏のラブホにすぎない。

「ほっときゃいいじゃない、噂なんだから」

「おもしれーから、ほっとけよ」

 風信子もノリスケも、盛大にケラケラ笑ったあと、放っておけという。

―― 俺たちが兄妹だってことが分かれば簡単なんじゃないのか ――
―― 兄妹ってバラシタら殺す! ――

 メールでのやり取りは、この二言で終了した。

 噂の出所は、菊乃のクラスメートの増田という子と、わが担任のヨッチャンのようだ。

 ヨッチャンは、俺たちが兄妹だっていうことは知っている。でも、職員室とかで喋っちゃったのを聞いた生徒が誤解したようだ。

 いつものことだけど、先生たちの情報管理は、つまらないところでこだわって、肝心のところでダダ漏れだ。

「笑っちゃいますよね、小菊ちゃんとは兄妹ですのにね……」

 エロゲがインストールされる間に、ついでのようにシグマが言う。

「あー、そうだよ。兄妹だってことを言えば済む話なんだけどな、小菊のやつ……」

 作法教室でエロゲを立ち上げているのは、やっぱ違和感なんだけど、畳の落ち着いた雰囲気には馴染んじゃうだろうなあと思う。

 やがてインストールの終わった画面を見ると、こんなタイトルが現れていた。

『兄妹だって愛さえあれば(*゚▽゚*)♡』

 後ろで、ノリスケと風信子が腹を抱えて笑い出した。

 あーあ、もう勝手に笑ってやがれ、なあ……あ?

 どうしてシグマは笑わないんだ……?



☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田さん           小菊のクラスメート

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