やくもあやかし物語・47
土筆と書いて○○○と読む。
知った時には感動した。だって、普通に読んだら『どふで』とか『つちふで』だもんね。
あなたは読めるかしら?
つくしって読むんだよ。
知らなかったでしょ?
そいでもって食べれるんだよ。
ほんとだよ。
そうだ、いちど食べてみよっか!?
だめだめ、食べれるって言っても、そのまま食べれるわけじゃないんだよ。
ちゃんと、処理してお料理しないとね。
以上、わたしの独り言。
図書館で借りた本を開いてみると、窓から差し込む日差しが柔らかくなっているのに気が付いた。
本立ての横に並んだ『俺妹女子キャラ』たちも眠そうに見える。春眠暁を覚えずだよ。
開きかけた本を閉じて庭に出てみた。春の日差しの中で読書してみようって気分になったんだ。
でも―― 春は名のみの風の寒さや~🎵 ――と、歌にもある通り、日差しの割には肌寒い。
いっちょ、からだ動かすか!
梅の花が盛りを過ぎてポタポタと落ちている、椿の赤い花とか何とかいう黄色い花とか。
よく見ると、どこからか飛んできた種が芽を噴き出してもいる。去年取り切れていなかった枯葉とかも残っている。
熊手と塵取りとスコップを持ってきて掃除に掛かる。
全部やるつもりはない、ほっこり体が温まったら十分。
うちは、表こそ立派な塀があるけど、裏は垣根と言うか生け垣と言うかがあるだけで、その生け垣根の向こうは緩い斜面になっている。
その斜面に土筆が生えているのに気が付いた。
そいで、テンションが上がっていたわたしは、つい誰かに話しかけるみたいになっていたんだ。
塵取りじゃあんまりなんで、ざるを持ってきて土筆を摘む。
育ちすぎのは硬かったりするだろうから、五センチくらいに顔を出した柔らかそうなのを摘んでいく。
「フフフ、お料理の仕方とか知ってんのかなあ?」
可愛い声に顔をあげると……えりかちゃんが立っていた。
ほら、駅のホームで慰めてくれた女の子。
なんだか、春の妖精めいていた。
☆ 主な登場人物
- やくも 一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
- お母さん やくもとは血の繋がりは無い
- お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
- お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
- 小出先生 図書部の先生
- 杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
- 小桜さん 図書委員仲間
- あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け