大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・113『教頭先生に将門の事を聞く』

2021-12-05 15:05:54 | ライトノベルセレクト

やく物語・113

『教頭先生に将門の事を聞く』   

 

 

 びっくりしたけど、よく分かっていない。

 

 なにが分かっていないのかというと、平将門。

 なんとなく、禍々しい感じはする。

 八房が、わたしを騙して背中に張り紙するし。その八房は、将門と戦って車いすに乗ってるし。

 

 だから調べてみた。

 

 最初はパソコンとスマホでググってみたんだけど、なぜか『平将門』って打ち込むとフリーズしてしまう。

「ねえ、教えてよ」

 コタツに向かって言うんだけど、チカコも御息所もコタツの中に潜って出てこない。

「なによ、居候のくせに!」

 頭に来てコタツを持ち上げる……が、いない。

 どこかに逃げたか、ステルスっぽくなって見えなくなったか?

 アノマロカリスに聞いても縫いぐるみのふりして、これもダンマリ。

「そうだ」

 受話器を取って黒電話の交換手さんに聞いてみる。

「教えて、平将門って?」

『……………』

 ちょっと沈黙だったけど、さすがは、豊原の電話局で最後まで任務を遂行した人だ。

 神妙な声で、こう言った。

『みんな恐ろしくて言えないんだと思います。言えば、八雲家や、この町に災いが降りかかります』

「でも、これじゃラチが明かないわ」

『でも…………解決にはならないかもしれませんが、教頭先生にお聞きになれば、あるいは……』

 そうか、教頭先生は見える人だった。

 我が家にも、この町にも関係が無い人なんだ。聞けば教えてくれるかもしれない。

「ありがとう、そうしてみる!」

 

 あくる日、朝一番で学校に行って、教頭先生に聞いてみた。

 教頭先生は、学校で一番早くから仕事をしているんだ。

『教頭先生なら、講堂裏の花壇の水やりをしているわ』

 正門にさしかかると、染井さん(学校で一番古い桜の木)が教えてくれる。

「え、あ、ありがとう」

 助かった、学校は結構広いから、職員室にいなかったらどうしようかと、ちょっと心配になっていたところだった。

『このへんの妖は、みんな、今度のこと知ってるわ。なんの手助けもできないけど、頑張ってね』

「うん、ありがとう」

 

 講堂裏に行くと、北向きで日照時間の少ない草花の手入れをしている教頭先生が見えた。

 

「やれやれ、やっぱり、わたしの所に来たか」

「はい、先生もご存知なんですか?」

「そりゃ、僕は見えるからね……染井さんも心配していただろう?」

「はい、ここも染井さんに教えてもらいました」

「将門のことだね」

「はい」

「将門というのは、平安時代の昔、東国で反乱を起こして、朝廷に楯突いた武将だよ」

「平清盛とかの親類なんですか?」

 平氏の武将って清盛しか知らない。

「うん、繋がっているけど、清盛よりも古い。将門は、東国を支配下に収めると、新皇を名乗って、朝廷の支配から離れようとしたんだ。新皇というのも『新しい天皇』って響きがあるからね」

 ちょっと恐ろしい気がした。天皇を名乗るって、とんでもないことだよ(;'∀')。

「そして、都から差し遣わされた軍勢に負けてさらし首になるんだけどね、首だけが空を飛んで行って、いまの東京の真ん中に落ちるんだ。それが、千代田区にある首塚だし、将門の霊を祀ったのが神田明神なんだよ」

「えと、どっちに行ったらいいんでしょ?」

「首塚は止しなさい。神田明神がいいでしょ、大黒様とか他の神さまも祀られてるから、まだ話が通じると思うよ」

「はい、神田明神ですね」

 忘れないように、手のひらに書いた。

「ハハ、子どもみたいなことを」

「アハハ、てか、まだ子どもですから(^_^;)」

 謙遜のつもりで言ったら、教頭先生の顔が曇った。

「そうだよ、八雲さんは、まだ中学生なんだ……味方なしでは……」

 先生は知ってるんだ、みんなソッポを向いていることを。

「そうだ、君の新しい仲間に六条の御息所がいたよね」

「は、はい……」

 コタツに潜って姿をくらましたとは言いにくい。

「彼女の弱点を教えてあげよう、弱点をちらつかせれば、嫌でも味方になるよ」

「え、なんなんですか、御息所の弱点て?」

「耳を貸しなさい」

「はい」

「…………………」

「え、そうなんですか!?」

「家に帰って直接言うまでは、口にしちゃいけないよ、御息所は聞き耳頭巾だからね」

「はい」

「それと、くれぐれも準備は怠らないで」

「はい」

 先生は、コルト・ガバメントのこともカップ麺のことも知っている様子。

 でも、教頭という立場とか言霊とかがあるから、それ以上は言えないんだ

 わたしは、御息所の弱点を頭の中で繰り返しながら一日の授業が終わるのを待った。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝

 


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