ホテルエンパイアの最上階、21階に存在した
回転展望レストランの営業時の姿です(パンフレットより転載)
21階の入り口を見て私は動きを停めた
息を切らしながらゆっくりと登った
そして21階へ到着し
思わず声が出た
「あ・・・・」
年月が起ってしまった今
その時見たその光景を思い出すと
下を走る道路の街灯が照らすオレンジ色の灯りが
不思議な雰囲気を醸し出していたように思える
私は子供の頃に田舎で見た光景を思い出していた
田んぼのあぜ道で向こう側に見える街の明かりだ
自分の立っている所は暗闇なのに真っ暗な
田んぼを挟んだ遠い向こうの場所は生活の光がきらめいていた
エンパイア周辺地は電気があまり点いていないので
そんな事を思い出していた
ここがどこかの観光展望台だったら夜間といえど
薄暗く照明が灯り
音楽が掛かり
周りには私以外の人がいる
その事で自分の立つ場所が生きている超高層ビルの中という事を感じる
しかしここは違う
光も
音も
人も
ないのだ
呆然と立ち尽くす
街の灯を見ていると
自分の身体が夜空に浮かび
周囲に気付かれず眺めている
そんな錯覚に陥った
前に傾斜しているガラスに近づき外を見る
道路を照らす街灯の「オレンジ」と自動車の赤いテールランプ
不思議な事に
ついにここに来た!
という達成感はあまりなかった
横浜方面を見ると遥か遠くにランドマークタワーが見えた
開業当時、日本初の高層建築として注目を浴びたエンパイア
かたや現在の横浜のシンボルタワーとして輝くランドマーク
この瞬間、ランドマークの展望台では多くの人々が
その階下に広がる横浜の夜景を眺めているのだろう
エンパイアは誰も人を寄せ付けず横浜の高台に立つ
今、この高層ホテルにいるのは私だけ
日本のどこの高層ビルに警備員もおらず
非常口誘導灯の灯りすらないのに
独り立ち尽くしているビルがあるだろう
そんな非現実な状況
(あまりにも暗いので画像を加工しました?)
我に返り腕時計に目をやると残り時間が迫っていた
急ぎ足で回転レストランを一周する
時間があればゆっくりと見たいものだがそうもいかない
カウンターのようなパントリーにはビールジョッキやグラスが見える。
トイレは男女各一ずつだった。
私はかねてからもしもエンパイアに行く機会があったら
探したいものがあった
それはすぐに見つかった
時間がなく選んでいる余裕はない
それをヒップポケットに入れて出口を目指した。
階段を降りる前に今一度振り返る
きっと私は二度とここへは来られないだろう
万感の思いを込めて「さようなら」と
口にしていた。
残り時間2分
つづく
しばらくの間休止しておりましたブログを再開致します。
今年初の記事はリクエストの多かった「ホテルエンパイア」です。
ここまで引っ張る予定ではなかったのですが
思い入れのある出来事だったので
時間がかかってしまいました。
15日まで更新は無いとお伝えしたのに毎日のようにチェックしてくださった方々
ありがとうございます。
いつも思うのですが
どんな方々が、このつたないブログを見てくださっているのだろう?
と考える事があります。
遠い旅先の地で
夜汽車の車窓から見える知らない土地でも
もしかしたらこの近所にも私のブログを読んでくださっている方が
いるのかも、と思ったりもします。
そんな時あらためてインターネットってスゴイな、と思います。
遅くなりましたが
本年もよろしくお願い致します。
彩雲4号
>>空気を感じてしまいました
感じてもらえましたか!
嬉しいです。あの雰囲気をどうやって表現しようと思っていたら時間がかかってしまったのでご理解いただけて嬉しいです。
あの「閉園」の日に二人でエンパイアを見上げて「最上階に人がいるんじゃないの?」と話したのが懐かしいです。
debopacerさん
お会いする度に「実はあそこに入った事がある・・・」と言えなかったのが辛かったです(笑)
大感動で言葉もありません。
心を込めた別れの挨拶の気持ち。本当によくわかります。
彩雲さん、私も正月に北斗星で北海道に遊びに行った時に洞爺駅で下車する時に同じ気持ちでお別れしました。
最後になると思うブルートレインの乗車を感謝して。
今回の乗車では不思議とよく寝れました。そしてまた乗車したいと今でも思います
やはりいつ乗車してもいいですね本当に。
長い間お待たせいたしました。
もっと写真を撮れればよかったのですが
暗いうえに時間がなかったので残念です。
ただ、あまり見るべきものはないというのが
正直な感想でした。
三州小僧さん
>>心を込めた別れの挨拶の気持ち~
ご理解ありがとうございます。
ここで書くのはクサイかな、と思ったのですが
正直に書きました(笑
>>やはりいつ乗車してもいいですね~
本当にブルートレインはいいですよね!
また乗りたいです。
っていったい何だろう?
次回がまたまた楽しみです!
しかし、次回までが長いなあ~
おめでとうございます。本年もいろいろ興味深いお話楽しみにしています。
この回転レストラン、何年使われていなかったのですか。
テーブルクロスがかかったままだったりして、閉館後も何かの時に使われていたんでしょうか。
意外に整頓されているようなので感心しました。
栄枯盛衰、どんなものにも始まりがあれば終わりはある。
彩雲さんが21階に足を踏み入れたの時は、そのものが一先ず役割を終えた夢のあとの光景だったことに色々な思いが駆け巡った事でしょうね。
余談ですが、21階レストランのガラスには、その方面に見ることの出来る建造物や地名などが「白ペン」で描かれていましたが、ご覧になりましたか?
エンパイアからは遠望にマリンタワー、江ノ島、富士山などを望む事ができましたが、日中はどんな形をしているか見難い時があるので、来客者への配慮として描いていたんでしょうね。
ガラスの上には方角を示すプレートもありましたね。
私はこのホテルの存在を知らなく、『錆びたナイフ』からさかのぼって見てます。
前は彩雲4号さんと同業だったのでこのホテルネタはすごく興味あります。
ほんと文を追っていくにつれて自分もその光景を見ている感覚に陥ります。
次回がいつになるかわかりませんが(笑)気長に待ってます♪