ことの葉散歩道 権力と暴力
作家の陳舜臣(ちん・しゅんしん)が21日死去した。90歳だった。
中国の歴史と文化に対する豊かな学識を生かした歴史小説やエッセーで知られる。
1961年「枯草の根」で江戸川乱歩賞、推理作家としてデビュー。
67年には約3000枚の大作「阿片戦争」で歴史小説にも進出。
69年「青玉獅子香呂(せいぎょくししこうろ)」で直木賞。
朝日新聞は1月22日の天声人語で「縦横無尽の膨大な仕事を残して、
骨太の作家がまたひとり夢を閉じた」と作家の死を悼み、天安門事件のすぐあとに彼が述べた言葉を紹介している。
「中国の権力集団は、銃口によって政権を守ろうとしている。
政権を守るのは、じつは人心であることを知らない。なんという無知であろうか」。
権力にはある種の強権力がつきまとう。
しかしこの強権力が、民意を無視し権力の維持のために行使されるとき、
権力は暴力性をもって別の生き物に変身してしまう。
パスカルは
「力は正義なり、力なきもの正義にあらず」
と言ったが、政治に携わる者、力の使い方を決して間違ってはいけない。