雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書紹介「ガラパゴス」 (1) 偽装殺人の裏に隠されたものは

2016-10-05 21:15:27 | 読書案内

ガラパゴス(上・下)
    相場英雄著 小学館 2016.1刊 第1刷

 
読書紹介「ガラパゴス」(1)

           偽装殺人の裏に隠されたものは
 
  不明者リスト№902にファイルされた人物。
 2013年、東京足立区竹の塚団地で発見された死者は発見当時、身元不明のまま2年間、ファイルの中に放置されていた。
 竹の塚団地は昭和40年頃に建てられた団地だが、高齢化が進み、団地はさびれ、空き部屋が増えている。
  この空き部屋で死者は発見された。この発見場所も物語の伏線となっている。
 「空き部屋に入り込み、練炭自殺した身元不明者」としてファイル。

  殺人事件の時効が廃止され、未解決事件を再捜査する部署に所属する、
 田川という中年の刑事がファイルのふたを開ける。
 「地取りの鬼」の異名のある田川の執拗で地道な捜査が始まる。
 著者は田川刑事の相方にこわもての刑事木幡を登場させ、
 2人の絶妙なコンビネーションが物語の奥行きを深くし、事件解決へと進んでいく。

 自殺に見せかけた殺人の裏には何があるのか

 
地道な捜査が続き、闇のなかから見えてきたものは、底辺労働者の悲惨な現実だった。

 日本の労働者のうちの約三分の一に当たる2000万人が、非正規労働者や派遣労働者だ。
低賃金、雇用の不安定、過酷な労働市場。
 まともな暮らしができないから、将来に夢を持てない。
おそらく労働現場の実態は、私たちが想像する以上に過酷なのだろう。言いたいことも言えず、生活を犠牲にしてまで働かなければ、明日の職場は確保できない。このような社会構造の中で、つぶされていく人も多い。
 

 被害者の足跡をたどるにつれて浮かび上がってくる労働市場の闇。
文字どおり「地取り」の捜査が闇に隠れた謎を探っていく。
単行本上下2冊厚さだが読者を飽きさせず惹きつけるものは、著者の綿密なリサーチと筆力なのだろう。
  (2016.10.05記)                                (つづく)   


 (読書案内№87-1)

  

コメント (2)
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