雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書案内「海は見えるか」 真山仁著 ② 便りがないのは

2018-09-08 08:30:00 | 読書案内

読書案内「海は見えるか」真山 仁著
 ② 便りがないのは

    
   東日本大震災から一年余りが経過し、遠間第一小学校の児童は半数以下に減っていた。
  転居した家庭が増えたからだ。生活の安定や子供の将来を考えれば、移住は致し方ない選択だつた。
  故郷を捨てるのは辛いが、仮住まいで停職につけない状況で、どうやって子どもたちの未来を描くのか。
  地域との絆を断ち切ってでも、新天地を選ぼうとする親の決断を、小野寺は立派だと思った。
                                    「便りがないのは…」より                                                       

   小野寺には、六年生の仲山みなみの作文が気になった。
 「地震は怖かったし、余震も怖いです。たくさんの大切なものがなくなったし、
 元にもどらないのととても悲しいです。
 ……うまくいかないのを地震のせいにするのはやめようと強く思うようになりました。」
 という書き出しで始まる「みなみ」の作文で、最近親切にしてくれた自衛隊員からのメールが途絶え、
 とても心配している。

 「私は自衛隊のみなさんが被災地でしてくださったことを、もっと伝えていかなければと強く思っています」
 遺体を捜し、洗浄し続ける自衛隊員と出会った「みなみ」。
 震災で命を落とした遺体の多くは、ヘドロなどにまみれて泥だらけだ。遺体は丁寧に洗浄され、警察の検視に
 回されるのだが、洗浄には無残に汚れた遺体と再会する遺族への思いやりという意味も込められている。
 百戦錬磨のベテランでも逃げ出したい過酷な仕事だから、
 5日以上は任務に当たらないよう義務づけられており、
 まして宮坂のような経験の浅い若手は配置されないのに、
 宮坂はこの遺体洗浄という過酷な任務に率先して志願した。

 その宮坂が自殺していた。
 津波で兄を亡くした喪失感を埋めるように宮坂を慕っていた「みなみ」に、
 宮坂の自死を伝えるべきか。
 小野寺は逡巡する………………。

 どんな過酷な事実があろうとも、知る権利があり、
 人間はそれを乗り越える力を持っている。

 臨時教員・小野寺徹平頑張れ!!

      (2018.9.7記)     (読書案内№127)
  
   










 

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