読書案内「海は見えるか」真山 仁著
② 便りがないのは
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小野寺には、六年生の仲山みなみの作文が気になった。
「地震は怖かったし、余震も怖いです。たくさんの大切なものがなくなったし、
元にもどらないのととても悲しいです。
……うまくいかないのを地震のせいにするのはやめようと強く思うようになりました。」
という書き出しで始まる「みなみ」の作文で、最近親切にしてくれた自衛隊員からのメールが途絶え、
とても心配している。
「私は自衛隊のみなさんが被災地でしてくださったことを、もっと伝えていかなければと強く思っています」
遺体を捜し、洗浄し続ける自衛隊員と出会った「みなみ」。
震災で命を落とした遺体の多くは、ヘドロなどにまみれて泥だらけだ。遺体は丁寧に洗浄され、警察の検視に
回されるのだが、洗浄には無残に汚れた遺体と再会する遺族への思いやりという意味も込められている。
百戦錬磨のベテランでも逃げ出したい過酷な仕事だから、
5日以上は任務に当たらないよう義務づけられており、
まして宮坂のような経験の浅い若手は配置されないのに、
宮坂はこの遺体洗浄という過酷な任務に率先して志願した。
その宮坂が自殺していた。
津波で兄を亡くした喪失感を埋めるように宮坂を慕っていた「みなみ」に、
宮坂の自死を伝えるべきか。
小野寺は逡巡する………………。
どんな過酷な事実があろうとも、知る権利があり、
人間はそれを乗り越える力を持っている。
臨時教員・小野寺徹平頑張れ!!
(2018.9.7記) (読書案内№127)