雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書案内「海は見えるか」 真山 仁著 ③ 雨降って地固まる?

2018-09-11 11:13:21 | 読書案内

 読書案内「海は見えるか」真山仁著
 ③ 雨降って地固まる?

   
   心的外傷後ストレス障害ー通称PTSDは、生命や身体が危機にさらされ、恐怖や無力感、
  戦慄を体験したトラウマによって引き起こされる心身の苦痛や障害だ。
  大樹が発災から一年経ったある夜、突然悪夢にうなされた時に、専門医はPTSDだと診断した。
                                       雨降って地固まる?より 

  教室を抜け出し、雨のグランドにずぶぬれで立ち尽くす庄司大樹。
雨。
あの日も、あの日も、あの日も雨だった。
おばあちゃんの遺体が見つかった時、お母さんの遺体が見つかった時も雨だった。
妹の洋子の遺体が見つかった時も、雨が降っていた。
お父さんの車が発見されたときも雨が降っていた。
大樹にとって雨は哀しい過去の出来事に繋がる。

 震災から1年過ぎた今でも、悪夢にうなされる。
「時々、家があった場所を見に行きたくなる大樹。でも向かっているうちにどんどん苦しくなって、結局遠回りしちゃって、家にたどり着けない。」

 明らかに、PTSDによる回避行動だ。
大樹にとって、過去へさかのぼる思い出は、辛く悲しい出来事に繋がっていく。

 そんな大樹に小野寺は、励ますことが無意味なことを知っているから、
ただただ寄り添い、懐(ふところ)深く大樹の寂しさや辛さを受け入れるのみ。
阪神・淡路大震災で妻と幼子を亡くした小野寺にできる「優しさ」の表現なのかもしれない。
元校長の浜登は、時によっては小野寺に寄り添い、大樹にさりげなく寄り添う。

  
 頑張るな! 弱音を堂々と吐ける男の方がかっこいいんですよ。
 ……本当に強い人間は弱音を吐くんです。それができるようになって初めて、
 弱音を吐いてはいけない時がわかるんですよ。
 それが分かるまではしっかり弱音を吐くんです。

 大樹に向けた浜登元校長の言葉だが、小野寺もいつの間にかうなづ居ていた。。
 

                   (2018.911記)          (読書案内№128)


 

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