読書案内「海は見えるか」真山仁著
③ 雨降って地固まる?
|
教室を抜け出し、雨のグランドにずぶぬれで立ち尽くす庄司大樹。
雨。
あの日も、あの日も、あの日も雨だった。
おばあちゃんの遺体が見つかった時、お母さんの遺体が見つかった時も雨だった。
妹の洋子の遺体が見つかった時も、雨が降っていた。
お父さんの車が発見されたときも雨が降っていた。
大樹にとって雨は哀しい過去の出来事に繋がる。
震災から1年過ぎた今でも、悪夢にうなされる。
「時々、家があった場所を見に行きたくなる大樹。でも向かっているうちにどんどん苦しくなって、結局遠回りしちゃって、家にたどり着けない。」
明らかに、PTSDによる回避行動だ。
大樹にとって、過去へさかのぼる思い出は、辛く悲しい出来事に繋がっていく。
そんな大樹に小野寺は、励ますことが無意味なことを知っているから、
ただただ寄り添い、懐(ふところ)深く大樹の寂しさや辛さを受け入れるのみ。
阪神・淡路大震災で妻と幼子を亡くした小野寺にできる「優しさ」の表現なのかもしれない。
元校長の浜登は、時によっては小野寺に寄り添い、大樹にさりげなく寄り添う。
|
大樹に向けた浜登元校長の言葉だが、小野寺もいつの間にかうなづ居ていた。。
(2018.911記) (読書案内№128)