全電源喪失。
1981~82年、米研究機関は、全ての電源が失われた場合のシュミレーションを実施している。計算で得られた燃料の露出、水素の発生、燃料の溶解などのシナリオは今回の事故の経過とよく似ているという。
30年前の報告書である。
原子力安全委員会は、1990年に安全設計審査指針を決定した際、
「長期間にわたる交流動力電源全損失は、送電線の復旧または非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」、と全電源喪失自体を軽視してきた(朝日新聞3/31記事)。
今回の原発事故原因は、全電源喪失だけでなく、地震や津波による建屋を含む原子炉全体に及ぶ損傷が、事故の規模を拡大し、解決へのシナリオを作れなくしている。
シュミレーションによれば、運転停止8時間後には燃料(棒)露出、水素が発生を開始する。10時間後燃料が溶け始め、11時間半後燃料棒が崩壊する、とある。
福島第一原発も、似たような流れで被害が拡散していっている。
運転停止から12時間後にはメルトンダウンの危機が訪れるのに、「長期間にわたる電源喪失はあり得ない」と考えていたところに、科学や技術に対する過信があったのではないか。
100パーセント安全なものなど、この世の中に存在しない。
安全と危険は常に両刃の剣であり、どちらに転ぶかはそれを使う人間の考え方によって決まる。
このことを私たちは戒めなければならない。
(つづく)
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