救出作戦はこの映画のハイライト
原発は壊れない″という安全神話に立脚した原子力ムラの立てる対策では、無策のまま何もできない。二重三重の安全装置で設計された原発には、放射能漏れなど起こるはずがない。従って近辺住民の避難勧告など必要ない。避難勧告することは、自らが築いてきた"安全神話"を放棄することになる。打開策のない協議会に一石を投じるのは、高速増殖炉原型炉の設計者・三島の次の言葉だ。日本地図の関東から広島までをペンでぐるりと囲み「もし、放射能漏れが起きれば、日本は数百年ここを捨てることになるかもしれません」
設計者の言葉だけに真実味と重味がある。
原発の安全性をどう守るのか。国民への発表はどのようにするのか。打開策の見出せぬまま時間だけが過ぎていく。
ヘリの墜落まで残り時間4時間。ヘリに閉じ込められた子どもの救出作戦が始まる。圧倒的スケールと迫力で観客を緊張させる映像は、ハリウッド・アクション映画と比べても遜色ない。救出対象が子どもという設定にも感情移入が容易にでき、緊張感は極限に達する。
高度800㍍でホバーリングするヘリから子どもが落ちる。地上に向かって落ちていく子ども。救出作戦失敗か。次の瞬間……。(ここから先、ネタバレになるので、興味のある方は映画をご覧ください)
ヘリの設計士(江本洋介):ヘリ開発に没頭し家庭を犠牲にしたが、今、自分の子どもがヘリの中に取り残され、次第に父の威厳と子どもとの絆をとりもどしていく。
原発の設計士(本木雅弘):過去に子どもを失い、それを契機に離婚をし陰のある人物設定。
錦重工業総務部社員(仲間由紀恵):犯罪者につながりを持つ女。
犯行目的は何か。原子力発電に多くの課題を盛り込んで、クライシス・サスペンスは、最後のクライマックスを迎える。
タイムリミットは3分。ヘリは燃料が尽きて原発の上に墜落してしまうのか……。
原発の安全神話は、犯罪者の前に崩れていく。
電力の供給は地方の犠牲の上に成り立ち、電力の安定を享受し、目の前にある危機を見て見ぬふりをする大衆を「沈黙する群衆」と表現する。
現代社会に警鐘を鳴らす2時間18分の作品。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます