映画「七つの会議」
友だちの奥さんが、
「とてもいい映画だ。感動のあまり、2度も見てしまった」。
そんなにいい映画なら観てみるか。
正直、あまり期待もしていなかった。
熾烈な出世競争とノルマ達成の重荷が
人間を、組織を狂わしていく。
そのことのみが強調されているようで、過去の作品の「下町ロケット」、
「陸王」、「半沢直樹シリーズ」、
映画も小説も、というよりは表現の世界では、
見る人の感性が作品の良し悪しを決めてしまう。
ある人にとって素晴らしい作品であっても、
ある人にとっては全く心を動かされなかったということもしばしばあります。
この映画は池井戸潤原作の同名小説を映画化されたものだ。池井戸氏の作品を
列挙してみます。映画やドラマよりも登場人物が生き生きと描かれています。
「下町ロケット」:
多くの労働者が直面する難題を乗り越えていく物語は、多くの読者に活力と
勇気を与えました。下町の経営者が四面楚歌の中で、自分の夢に向かって諦
めずに進んで行く姿に共感を持ったのでしょう。
「オレたちバブル入行組」:
半沢直樹シリーズの第一作目。銀行の業務の中で理不尽な目にあい、
上司に叩かれても立ち上がり正義を貫き通す半沢直樹の姿が多くの人を
とりこにしたようです。
特にドラマの中の台詞、
「倍返しだ!!」は2013年の流行語大賞にも選ばれました。
余談ですが、このセリフは原作では、ドラマのように多くは出てきません。
ドラマや映画では、原作の中で描かれたある一定の事件に焦点を合わせ、
その部分を拡大解釈してしまう傾向があり、細やかな人間関係や主人公の内
面まで描くことができなくなるようです。
「七つの会議」:
「会社にとって必要な人間なんていません」
「期待すれば裏切られる。その代わり、
期待しなけりゃ裏切られることもない」
(万年係長・八角のセリフ)
会社という組織の中で働くとは、どいうことなのか。
苛烈な競争社会の中で、人も組織も疲弊しそれでも売り上げと言うノルマは
金科玉条のように輝きつづける。ノルマを達成するための不正、捏造、改ざん、
隠蔽。組織の中で育まれたこれらの不祥事を誰が始末し、健全な方向に舵を切
るのか。現実の社会でも切実な問題です。
池井戸氏の原作の映画やドラマが単純明快な観客や視聴者に受けの良い
勧善懲悪の世界を強調するような傾向にあるのは残念です。
原作の中では登場人物は厚みのある人間に描かれていますが、あらすじに
あまり関係のないこういう部分はカットされてしまうのが残念です。
是非、原作を読むことをお勧めします。
(2019.3.11記) (映画№18)
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