読書案内「OPA! オーパ!」開高健著
② 巨獣の集団墓地のようにみえた
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(朝日新聞2019.9.15付)
この光景を、「森の中に直径50㍍ほどの『黒い穴』が開いたようだった」と、記事は、自然破壊の状況を伝える。乾季には落雷などによる森林火災もあるが、「焼畑農業」による森林破壊もある。農地を広げ、牧場を作り、金の採掘のために開発を続ける。自然の回復力を大幅に上回る。これは、開発ではなく、破壊だ。
(OPA! オーパ! より 高村 昇撮影)
40数年前アマゾンを訪れ、開高健に同行したカメラマン・高橋昇はアマゾンの自然破壊をフイルムに焼き付け、開高健は「巨獣の集団墓地」と書き、アマゾンの危機を訴えた。
しかし、アマゾンの自然危機状況は40数年前よりも、さらに悪化しているようだ。
今年1月から8月までの焼失面積は、九州より広くすでに昨年1年分を超えているという。
密林を切り開き、倒した樹々は密売され、放火で開かれた「巨獣の集団墓場」は、牧場と化していく。
持続可能でない開発はやがて自滅への道をたどっていく。
これは最早一国の問題ではなく、
「地球温暖化」という危機的状況と捉え、
国際的な支援が必要な時期が到来していることを物語っている。
さて、再び「オーパ!」に戻ろう。
開高健は、焼け野原となった森林をみて「巨獣の集団墓地」と表現した。
「広大な面積が火と、焔と、煙にみたされ、誰一人として監視する人もない」ことに驚き、こうした違法な開発が、「自然に対して過剰なのか、調和なのか、(略)災厄の前兆としての業火なのか」、それとも生きるための浄火なのか、私、開高健はわからないと、アマゾンを旅する彼は、異邦人として立場を堅持する。
だが、確かなことは、「とらえようのない不安と憂鬱」に浸された。と、読者に問題を投げかける。
自然破壊を繰り返す。
「業火」なのか、生きていくための「浄火」なのか。
アマゾンに生きる彼らにとって、二者択一を迫るような単純な問題ではない。
まして、部外者の異邦人が結論を急ぐべきではないと開高健は言っているのだと思う。
大真面目でアマゾンの問題を書いたかと思えば、一転して二メートルもあるオオミミズの薀蓄(うんちく)話に花を咲かせ、二〇〇メートルもある巨大アナコンダ(水棲の大蛇)をやっけるのに、機関銃の弾丸五〇〇発を消費したというような与太(ホラ)話などを披露して読者を飽きさせない。
少年の心に火をつける。
「ÔPA! オーパ!」は、少年の心を持った男たちにとっては、釣りはやらなくても
必読の写真と紀行文の楽しめる本だ。
ブックデーター: ①で紹介したように集英社版豪華装丁初版本は2800円だが、
同じ出版社から文庫本も出ている。
今年は開高健没後30年。来年は生誕90年だ。
開高健を改めて読むのもいいですね。
「開高健のパリ」(2000円) 「青い月曜日」(860円)
「オーパ、オーパ!!」は続編としてアラスカ編、モンゴル編など数編がある。
「ベトナム戦記」「輝ける闇」などがお薦めです。
(2019.9.23記) (読書案内№144)
40数年前に発刊された本ですが、初めて読みました。
開高健の本は全く読んだことがありませんでしたが、これを機会に読んでみたいと思います。
今年1月にボルソナーロ大統領が就任。彼は低迷する景気の回復させるためのアマゾン政策を打ち出しました。
アマゾンの自然保護より開発を重視する背景に、違法な森林伐採や焼き畑が進んだという見方があるようです。
「野焼きをしないと私たちは生きていけない」
「都会に出ても仕事はないが、ここには自分の畑が
あり生きていける」
住民の声に耳を傾けながら、地球温暖化の問題考えなければ生きた政策と言えないのでしょうね。
分厚い本で、開高健がアマゾンで釣りをする紀行だったように記憶しています。
アマゾンの自然とも向き合っていたのですね。
地球の肺ともいわれるアマゾンの森林破壊については、
報道され始めてからずいぶん月日がたちます。
向こうの国にはそれなりの理屈があるのでしょうが。